軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

983 抗魔竜人

レザルヴァを倒した後、統制を失った他の竜人たちを倒して回る俺たちだったが、戦場に再び異変が訪れていた。

『フラン! 抗魔だ! しかも、一緒に竜人たちがいやがる!』

「ん!」

竜人と抗魔の気配が一緒の部隊に混在している。

やはり、抗魔を操れたのか!

そう思ったのだが、違っていた。現れた奴らは、抗魔でも竜人でもなかったのだ。いや、どちらでもあったという方が正しいか。

なんと、基本は竜人に見えるんだが、その体の一部が抗魔と化していた。両者が入り混じった存在だったのである。

しかも、内包する魔力が桁違いだった。それこそ、巨人型並である。脅威度は最低でもB。そんな抗魔竜人とも呼べる存在が20体以上、トリスメギストスの居城がある方角からこちらに押し寄せていた。

前を走る10体は均整の取れた体つきで、シルエットだけなら人に近いだろう。その後ろを転がってくる、家屋ほどもありそうなボール状の存在もまた抗魔竜人であるようだ。

放つ魔力の質が、どちらも全く同じなのだ。能力やスキルによって、体の形状が変わるのかもしれない。そこは抗魔の性質も併せ持っているのだろう。

「イザリオ殿!」

「分かってる! シキミさんよぉ! ここは任せるぜ!」

この戦場で暴れ回る理性を失った竜人たちよりも、抗魔竜人の方がはるかに強い。イザリオは、アレと第二部隊が接敵するのは危険だと考えたのだろう。竜人の一部を引き連れたまま、抗魔竜人へと向かって動き出した。

今度は俺たちも遠距離攻撃を加えるべきだろう。さっきは、イザリオ以外がヘイトを稼いでしまうことを恐れ、遠距離攻撃を放たなかったからな。

だが、乱戦状態に突入しているため、新たな敵に対して魔術を放てる者は多くなかった。俺とフランだけが頑張ったとしても、弾幕には程遠い。

結局、碌なダメージを与えることもできないまま、抗魔竜人の接近を許していた。いや、まだ300メートル以上はあるんだが、奴らにとっては射程圏内だったらしい。

なんと、人型の抗魔竜人が球型の仲間を頭上に持ち上げると、こちらに向かって投擲してきたのである。

なんという膂力だ!

「狙いはおじさんとハガネ将国かよ! 嫌になるねぇ!」

内側から溢れ出す魔力と、その圧力に耐えきれず僅かに裂け始める肉体。自爆攻撃をするとしか考えられない球型抗魔竜人は、半数がイザリオ、残り半分がハガネ将国の馬車目がけて投げられていた。

敵の狙いは、神剣であることは間違いないだろう。

『フランはハガネの方を! 俺がイザリオの方を手助けする!』

「わかった!」

『ウルシ! 人型の接近を少しでも妨害しろ!』

「ガル!」

あの球型抗魔竜人の魔力は、寒気がするほど凶悪だ。1発で極大魔術数発分の威力があるだろう。それが5発ずつ。

いくらイザリオでも、神剣を使わなければ完全相殺は無理だ。そして、冒険者たちを守るためなら、イザリオは躊躇なく神剣を開放するだろう。

『倒すのは無理でも、叩き落とすくらいなら!』

俺は次元魔術と、フルパワーの念動を同時に起動した。念動はともかく、次元魔術は他の事をしながら操れるほど簡単ではない。だが、やるしかなかった。

俺だって、気の良いダメおやじが嫌いじゃないからな!

『ターン・シールド!』

あの巨体を移動させるほどのディメンジョンゲートは作れない。ならば、その軌道を変える。

空間を歪曲させて、飛び道具の軌道をズラすための術だが、魔力を大きく籠めればもっと大きな物にも作用するのだ。

球型抗魔竜人の1つがターン・シールドに接触し、その軌道を大きく変えていった。プロ野球選手の投げる変化球のように、急激に右へと曲がっていく。

同時に、念動でコースを変えられたもう1つが、左へとスライドしていた。

抗魔竜人同士が宙で激しくぶつかり合い、その衝撃で大きく弾かれる。

飛んでいく先は、第二部隊のいる戦場から大きく外れているだろう。余波はあるかもしれないが、直撃するよりはマシだった。

さらに俺は風魔術を連続使用し、その軌道を大きく逸らすことを試みる。だが、障壁に阻まれ、上手くはいかなかった。

それでも1つに全魔術を集中させ、なんとか撃ち落とすことに成功する。第二部隊と人型の丁度中間あたりに落下させたのだ。

だが、無理に魔術を使い過ぎた。

『連続発動の限界が……! あと2つ、どうする……!』

俺が焦っている間にも、フランはハガネ将国側に飛んでくる球型抗魔竜人に対処しようとしている。

「カンナカムイッ! てやぁぁ!」

念動も次元魔術も持たないフランは、正攻法だ。とにかく強力な遠距離攻撃をぶつけ、叩き落とすつもりなのだろう。

カンナカムイに加え、ソニックウェイブを連続で放つ。無理な連続攻撃によって高負荷がかかり、フランの両腕が悲鳴を上げるのが分かった。

皮膚が裂け、血が溢れ出す。筋と骨も痛んでいるだろう。それでもフランは手を休めず、ひたすら攻撃し続けた。

そして、なんとか2つを叩き落とすことに成功する。

だが、フランが阻止できたのはそこまでであった。限界を超えたせいで、動きを止めてしまう。

フランに代わるように他の魔術師たちも攻撃を始めたが、強力な障壁のせいで弱い魔術ではほとんど効果が上がらない。

攻撃は諦めて、防御に全てを回すか? せめて、マツユキたちだけでも――。

「十分よ。後は任せなさい」

「マツユキ」

いつの間にか、マツユキが前線まで駆けつけていた。

『ベルセルクの能力は強力だが、どこまでやれるんだ?』

飛んでくる球型竜人を睨みつけながら、ベルセルクを構えて祈りのポーズをとるマツユキ。巨人型を攻撃した時と同じだ。

「死んで」

彼女の呟きがトリガーとなって、球型抗魔竜人の体が急速に萎み、魔力も衰えていく。その形状のせいで、本当に空気が抜けたボールのようであった。

だが、マツユキが倒せたのは2体までである。さらに力を行使しようとしたようだが、その前にマツユキは倒れ込んでしまっていた。

「く……」

それを見たイザリオは、想像以上に相手が強いと理解したんだろう。

ついに決断を下していた。

「神剣開放!」

神剣から、爆発的に魔力が吹き上がる。

『結局使わせちまったか!』

だが、これで向こうは問題ない。神剣開放したイザリオが失敗することはあり得ないだろう。

後は、ハガネ将国側の1発をどうにかすればいい。しかし、そこに人型から魔術の斉射が降り注いだ。

どうやらこちらの陣容を見て、フランさえ妨害できればどうにかなると踏んだらしい。暴走状態なのかと思ったら、状況判断が的確だな!

俺もフランも障壁を張ることが精いっぱいで、攻撃など放つ余裕はない。

「マツユキたちがっ!」

『フラン! 障壁をもっと厚くしろぉぉぉ!』

ゴオオオオオォォォオォォォンンン!