軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

913 牙獣型の群れ

迫る抗魔の気配を前に、フランたちはこの後どうするかを相談していた。まあ、取れる手は少ない。

このまま戦う。都市を見捨てて逃げる。都市内の戦力を糾合して戦う。

そのくらいである。

センディア中の人間を全員避難させる暇などないし、そもそも人が大量に逃げれば、抗魔はそっちを追うだろう。

結局、フランたちはこのまま抗魔を足止めし、最も顔の広いソフィが援軍を求めに各所を回るという形になったのだった。

「ウルシ、ソフィを背中に乗せてあげて」

「オン……」

「だいじょぶ。援軍が来るまで、耐える。だから、お願い」

『ウルシにしか頼めないんだ』

「オン」

一瞬ためらう様子を見せたウルシだが、援軍を連れてくる仕事が重要であると理解したのだろう。心配そうな目で、渋々頷いた。

「ウルシとソフィの穴は、我の相棒が埋めよう。出でよ、リンド!」

「クオオオォォォ!」

メアが呼び出したのは、彼女の剣に宿る竜、リンドであった。最初から呼び出していなかったのは、召喚に制限時間があるからだろう。

「リンド! 久しぶり!」

「クオッ!」

フランがリンドを撫でると、嬉しそうに鳴く。その可愛くすら見える姿からは、神剣に宿った超存在だとは思えんな。

そう、メアの持つ竜剣リンドは、神剣だ。本来の名前は暴竜剣・リンドヴルム。超巨大なドラゴンを召喚できるという神剣だった。

ただ、メアはリンドヴルムを使いこなせてはおらず、小型の飛竜であるリンドを召喚するのが精いっぱいだった。

ただ、以前と比べて少し大きくなったか?

前に見た時は、赤い下位飛竜って感じの姿だった。それが、今ならちゃんと火竜と言えるだろう。全体的に2回りほど大きくなり、鱗や角の存在感も増している。

メアの成長によって、リンドも成長したってことらしい。

「オン!」

「クォッ!」

リンドを見つめながら、ウルシが一吠えする。すると、それに応えるように、リンドも短く鳴いた。

まるで、「任せたぞ」「任せろ」と言い合っているようだ。実際、それに近い感じだろう。

「では、行きますね」

「ん。ソフィ、お願い」

「絶対に、援軍を連れて戻ってきます」

ソフィは悲壮な表情でウルシの背に乗ると、町の中へと戻っていった。後は、ソフィが各組織から兵力を派遣させるまで、この場を死守するだけだ。

待ち構えていると、抗魔の第二波が押し寄せてくるのが見えた。

「牙獣型の群れか!」

「大きいのも見えますね」

メアとベルメリアの言葉通り、新たな抗魔たちは四足歩行の牙獣型が主力であった。先ほどまでよりも数倍の規模なのに、移動が速かった理由が分かったな。

突っ込んでくる抗魔たちに対し、俺とフランが魔術を発動した。

大地魔術により、岩の槍を無数に生み出す。相手に向かって斜めに生えた岩槍は、馬防柵のようなイメージだ。

突如出現した数百の槍を避けきることはできず、抗魔の先頭が岩の馬防柵目がけて突っ込んでいた。

抜けてくる者も多いが、勢いを殺すことには成功しただろう。

後ろが僅かに詰まり、先頭集団の密度が上がる。そこに、皆の放った攻撃が降り注いだ。

ベルメリアの水魔術に、メアの白銀の炎。リンドの深紅の火炎に、ゼフメートの衝撃波。そして、俺たちの雷撃。

多少の消耗は気にせずに連続で放った遠距離攻撃の雨は、たった数分で万を超える抗魔を消滅させることに成功していた。

それでも全体の1割にも満たないが、敵の注意を集めることはできただろう。できるだけばらけさせずに、ここで引きつけておきたいからな。

土煙の壁を突き抜けて進軍してきた抗魔たちに、フランやメアが自分から突っ込んだ。

その戦いは、今までとは激しさが違う。狼や虎、熊など、様々なタイプの牙獣型が、陣形もなしに襲い掛かってくるのだ。

連携しない分楽かと思いきや、そんなことはない。タイミングも掴みづらいし、同士討ちお構いなしの全方位攻撃は回避も難しかった。

フランたちはそれぞれが温存していた奥の手を使い、遮二無二抗魔を撃破し続ける。もっとも暴れているのは、メアだろう。

獣王も使っていた、金炎による自動防御。あの能力が、乱戦では凶悪過ぎるのだ。何せ、敵が突っ込んできては、勝手に炎に焼かれて倒されていくのだ。

魔力に惹かれているせいで、抗魔がメアを警戒する様子もない。このままいけば、まだまだ抗魔の自滅は続くだろう。

また、ベルメリアも想像以上に強かった。

ついに竜化を使ったのだが、全身が水色の鱗に包まれ、膨大な魔力がその身に渦巻いている。どうやら、水を鎧のように纏うことで、防御力を飛躍的に高めているようだ。

業物の装備に、竜の鱗。そこに水の鎧が加われば、並の攻撃では毛ほどの傷もつかない。抗魔たちの攻撃を防御する様子もなく、ひたすらカウンターで抗魔を攻撃している。

一番厳しいのは、ゼフメートかね? 強くなったとはいえ、まだランクAクラスではない。次第に傷が増えていった。

これは庇わねばならないか? そう思った直後、ゼフメートが叫んだ。

「豹脚!」

青豹のスキルは、豹足だけではなかったらしい。黒天虎も複数のスキルを利用できるし、他の獣人たちも同じなんだろう。

そのスキル『豹脚』は、足を強化するタイプのスキルだった。今まで以上に速度が増す。最高速はメア以上だろう。

これでしばらくは安定して抗魔を足止めできそうだった。まあ、全員が死闘を演じている状態を、安定してと言っていいかどうかは分からんが。

だが、誰もが後先を考えない。というか、考える余裕がない。一騎当千の戦士たちが、死力を尽くして抗魔を撃滅し続ける。

そうやって抗魔を押し止めていたのだが、抗魔の群れに新たな動きがあった。

「後方に巨大な抗魔が!」

「クオッ!」

宙にいるベルメリアとリンドが、警告の声を発する。抗魔との激戦のせいで気づけなかったが、超巨大な抗魔が遠目にも確認できた。

魔砲型だろう。

移動速度が遅いため、牙獣型からだいぶ遅れて到着したのだ。抗魔が計算してやったかは分からないが、牙獣型が目眩ましになったことで、俺たちも見落としてしまっていた。

『あんなデカブツを見逃すとは!』

今回現れた魔砲型だが、前に見たものと比べて圧倒的に大きい。倍どころか、5倍以上あるだろう。

以前倒した魔砲型が戦車くらいのサイズだったのに対し、こちらは大型戦車砲くらい? いや、もっと大きいな。大型砲搭載の要塞とかのレベルになるかもしれない。

それが30以上。横一列になって進んでくるのが分かる。

「あいつ、ちょっと変」

『何? どいつだ?』

「あれ」

フランが指さした砲撃型を見る。すると、フランが言う通り、妙なオーラのようなものを纏う魔砲型がいた。

観察すると、そのオーラが濃くなると、魔砲型の姿が消える。透明化かと思ったが、そこまでの精度ではない。多分、鏡のようになって、ある程度姿を隠す役割があるらしい。

今回、俺たちが見落としてしまったことを考えると、なかなか厄介だ。

「あいつらの魔力、ちょっとずつ増えてる」

『砲撃の準備をしてやがるんだ!』

連発するのではなく、砲撃を溜めて強力な一発を打つタイプであるようだった。あれだけの巨大抗魔が放つ威力重視の攻撃など、どれほどの破壊力があるかも分からない。

高まる魔力の膨大さから考えれば、極大魔術並みであってもおかしくはなかった。

しかもあの数だ。砲撃を阻止せねばならなかった。

そう考えたのは、メアやベルメリアも同じであったらしい。

「フラン! ベルメリア! リンドとともに奴らを潰すのだ! ここは、我とゼフメートが引き受ける!」

「ん!」

「分かったわ!」

「クオォォォ!」

今は、誰が残るかの議論をしている時間も惜しい。フランたちは即座に頷き、その場を飛び出した。

その間にも、魔砲型の魔力はさらなる高まりを見せる。

『あれは、マズいぞ!』

「ん!」