軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

912 ゼフメートの成長

メアたちの参戦により、戦線がグッと安定した。抗魔たちをガンガン削りながらも、ソフィの回復のおかげで消耗は少ない。

敵が、上位種である漆黒タイプばかりになっても、危なげなく戦い続けることができていた。

フランとメアの黒白コンビが高度な連携で抗魔を叩き潰し、戦線を維持する。その左右を守るのが、ベルメリアとゼフメートだ。

ベルメリアは空中を高速で飛び回りながら、水魔術や槍で抗魔を攻撃している。

その速度は、残像が生まれるほどだ。しかも、翼から魔力を放出することで、一瞬で最高速に達することが可能なのだ。翼を開いて急制動をかけることも可能で、緩急自在なその動きは感心するほどだった。

また、防御面でも優秀で、全身に鱗を生やすことで抗魔の攻撃を弾いている。やはり、竜化をしている様子はないのだが、肉体を一部だけ竜化させるような真似ができるようだった。

以前、模擬戦でフランが圧勝していたが、今はもう簡単には勝てそうもない。

ゼフメートもまた、驚くべき進化を遂げていた。ああ、獣人としての進化って意味じゃないよ。まあ、その固有スキルの使い方は以前とは全く違っていて、本当にもう1度進化して、違う固有スキルを覚えたんじゃないかってレベルではあるが。

青猫族の進化種である青豹。その固有スキルは豹足というスキルだ。速度上昇と、空中跳躍を併せたようなスキルだったはずである。

実際、以前戦ったゼフメートは、豹足スキルを使って超高速で動き回る高機動戦闘を得意としていた。

勿論、今も同じように三次元で高速移動し続けている。ただ、手数が以前とは比べ物にならなかった。

『あの速度で双剣ってだけでも、凶悪なんだがな』

(あれは、蹴ってるの?)

『ああ。豹足を攻撃に使ってやがる』

以前は双剣で戦っていたゼフメートは、さらに体術まで使うようになっている。

どうやら蹴りに豹足を乗せているらしく、抗魔がスパスパと両断されていた。ハイキックで首が飛び。踵落としで体が縦に割ける。青い魔力を纏った足刀が閃く度に、抗魔が屠られていった。

しかも、その動きは以前のような直線的な物ではない。体を上下左右にクルクルと回転させ、非常にトリッキーだった。スケートのスピンのような動きだけではなく、側転や、カポエイラのような動きも多用している。

その回転を利用して、両足と双剣をひたすらに繰り出し続けるのだ。

単純計算、手数は以前の倍だった。しかも、回転により破壊力が、トリッキーさにより命中率が段違いに上がっている。

もはや武闘大会で戦った時のゼフメートとは別人と言えるほどに、その戦闘スタイルは変化していた。

前に、青豹の豹足スキルは、黒天虎の閃華迅雷の下位互換だと考えたことがある。だからこそ、青猫族は黒猫族を憎むのだろうと。

だが、今のゼフメートを見れば、俺の考えは間違っていたことが分かる。豹足は攻防一体のスキルであり、むしろ攻撃が主目的のスキルなのだろう。

蹴りの威力を増すスキルが、移動用にも使えた。そういうことだったらしい。

それなのに、以前のゼフメートが使いこなせていなかったことは疑問だが……。青猫族には豹足を使いこなすためのノウハウがないのだろうか?

「ゼフメート、すごい強い」

フランがワクワクした表情で、ゼフメートを見ている。その強さを目の当たりにして、戦闘狂の血が疼いたのだろう。

つまり、フランが思わず模擬戦をしたくなってしまうほどに、強くなったということだ。多分、コルベルトといい勝負をできるんじゃなかろうか?

成長し、強くなったベルメリアとゼフメートは、メアと同じくらい頼もしかった。

フランたちの後ろには獣人会の部隊が防衛線を敷いているが、そっちに流れる抗魔がほとんどいないほどだ。

仲間が救援に来てくれたことでフランとウルシの士気も高まり、もう負ける気がしない。

そうして戦い続けていると、ついに敵の大将が姿を現していた。

カステルで指揮官個体を護衛していた親衛隊タイプが4体に、その中心に立つ通常よりも体が大きな赤角騎士だ。

「我が指揮官個体をやろう。お主らは黒いのを頼む」

「ん!」

フランが素直にメアの言葉に従い、親衛隊型へと剣を向けた。自分が本調子ではないと理解しているだけではなく、メアがどれだけ成長したかも見たいのだろう。

ただ、その後の戦闘はこちらの想像とはかなり違う結果になっていた。

カステルで戦った抗魔に比べるとその力は1段落ちており、強敵と呼べるほどの相手ではなかったのだ。

フランたちが本気でかかれば、親衛隊型は瞬殺である。そして、大型赤角騎士も、カステルのボスであった特殊個体に比べるとかなり劣っていた。

覚醒し、金炎と白火を纏ったメアの前に、1分と持たずに灰へと変えられて消滅している。肩透かしもいいところだろう。

「ふむ、肩慣らし程度にはなったな」

「メア、かっこよかった」

「ふははは! であろう!」

「オン!」

「ウルシも頑張った」

「うむ! 強くなったな! 我も驚いたぞウルシよ!」

「オンオン!」

まだ抗魔は残っており、フランたちは戦い続けている。だが、お喋りをしながらで足りてしまうほどに、その圧力は減っていた。

残りを掃討して終わりだろう。

一時はどうなるかと思ったが、結果的には被害も出さず――。

『っ! 新手か!』

「凄い速度」

安堵しかけたその時、俺たちは新手の出現を捉えていた。驚くほど速い。今までの抗魔の進軍速度と比べ、10倍近いのではないか?

このままではあと5分もせずにこの都市に到着するだろう。

しかも、この気配の厚み。その数は非常に多そうだった。もしや、今まで俺たちが激闘を繰り広げていた抗魔たちでさえ、先遣隊だったのか?

メアたちも、厳しい顔で抗魔の気配が漂う東を睨んでいる。

新たな絶望が、押し寄せようとしていた。