軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

894 プレアール

多少もたつきながら赤鱗を縛り上げると、フランは床の穴に飛び込んだ。

最初はこいつを担いでいくつもりだったんだが、穴が狭くてうまく通れなかったのだ。

赤鱗の突き抜けてきた跡を抜け、あっという間に1階へと到達する。

空中跳躍で勢いを殺し、着地するフラン。その目の前に広がっていたのは、凄惨な光景であった。

「プレアール!」

「こむ、すめ……」

切り刻まれた冒険者たちの残骸が、酒場の中に散乱していた。

20人以上が死んでいるだろう。あまりにもバラバラにされ過ぎて、どのパーツが誰の物なのか分からないような状態だった。

『ウルシは生存者を探せ!』

「オン!」

血だまりの中に、プレアールが倒れている。腹の下から先がなく、上半身もズタボロだ。

慌てて駆け寄って、グレーターヒールを掛けたんだが……。

「なおんない!」

『回復阻害だ!』

傷が遅々として治らなかった。回復阻害状態にしてもかなり強力だ。グレーターヒールでも、ほんの僅かにしか回復しない。

正直助ける義理なんかないとも思う。だが、こいつには情報を喋ってもらわねばならないのだ。

フランが回復魔術を使い続けていると、プレアールがゆっくりと口を開いた。

「ざまぁ、ねぇなぁ。俺は、ここまでかよ……」

「喋らない方がいい」

「くは……、もう、無理だよ」

口から血を吐きながら、プレアールは言葉を止めない。

「俺の、机に、闇奴隷商の情報……まとめた、紙が……」

「……仲間じゃないの?」

「……取引相手、なだけだ……。お前さんから、すりゃあ、仲間かも、しれんがなぁ……。かはは、お前が、きたときに、もう無理だと思ったんでな……。手切れ時だった、のさ……」

プレアールの目から次第に光が失われていく。

「こう、まの季節が、終わったら、本当に情報を渡すつもり……」

「……」

「言えた義理じゃ、ねえのは……。こ、この町を……頼むっ……」

「言われなくても」

「は、は……けっきょく、ここでも、しっぱいか……」

プレアールはそう呟き、目を閉じた。

「……死んだ」

『ああ』

フランが現れた時点で、自分が詰みかけていることを察したのだろう。黒猫族の冒険者が、闇奴隷商人を許すはずもない。

そして、いつかプレアールと闇奴隷商人との繋がりにも気づくはずだ。

そこで、できるだけその事実の発覚を遅らせ、抗魔の季節の最中は防衛戦力としてフランを利用できるように立ち回っていたのだろう。

そして、抗魔の季節が終わった後は、情報をすべて提供して命乞いをしようとしていたのだ。

復讐心をぶつけるはずの相手があっさりと死んでしまい、フランは憮然とした表情をしている。だが、事態はまだ終わりではない。

ゴガアオォォオォォン!

『なんだっ!』

プレアールが息を引き取った直後、轟音と振動が冒険者ギルドを揺らしていた。

同時に、酒場の入り口から見える大通りが、一瞬真っ赤に染まるのが見える。まるで、一足早く夕暮れが訪れたのかと思ってしまうほどの、濃い赤だ。

さらに、天井の穴から真っ赤な炎が噴き出した。まるで火炎放射器のような勢いである。

咄嗟に俺たちと生存者の周りに障壁を張ったが、椅子や調度品が炎の舌に舐められて燃えていた。

慌てて水魔術で消火を試みる。しかし、上の階から噴き出してくる火の粉を見るに、1階だけを消火してもダメそうだった。

どうやら、ギルドの上層階で大爆発が発生したらしい。

『赤鱗か?』

「戻る!」

フランは大急ぎで5階に戻ったのだが――いや、もう5階は存在していなかった。上層部が吹き飛び、4階建ての建物になってしまっていたのだ。

しかも、4階の天井も消失しているので、実質3階建てだろう。

赤鱗の竜人が生きているかの確認をするまでもない。

巻き込まれたのであれば死んでいるだろう。生きているのなら、何らかの方法ですでに脱出済みのはずだ。

『気配はもう感じないな……』

「ん……」

気配を探ろうとしたが、周囲の炎が邪魔をしている。

仲間が口封じをしに来たか? いや、奴自身の自爆も考えられた。情報を渡さないため、自身で命を絶ったのかもしれない。

ヌメラエエの時といい、この町はこんなんばかりだな!

「ウルシ?」

「オン」

1階にはまだ逃げた竜人たちの臭いが残っているだろう。その臭いを追えば、追えるかもしれない。だが、ウルシも自信があるとは言えないようだった。

それに、追う前にやらなくてはならないこともある。

『プレアールの言ってた情報の確保をしないと』

「む」

『あと、消火もだ。このまま放っておいたら、周辺に大きな被害が出かねないぞ』

この町の建物は、石や土、粘土のレンガなどで作られている。それなのに、燃えていた。

赤鱗の竜血炎と同じで、魔力を帯びた特殊な炎であるらしい。さすがに木造の家屋よりはましだが、炎は一向に消える気配がない。

『急ごう』

「わかった」