軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

893 赤鱗撃破

俺の魔術により、隣の建物の壁に同じように穴が開き、そちらの住人が動揺している姿が見えた。

すまん! だが、緊急事態なのだ。あとで冒険者ギルドから補償してもらってくれ。

ただ、これで冒険者たちの脱出路ができた。

『フラン!』

「ん。みんな、そこから逃げる!」

冒険者たちはフランの声に素早く反応していた。一斉に、それでいて騒がず、速やかに脱出していく。

元々、ピンチには即座に逃げ出すような負け犬根性が染みついているんだろう。フランを心配するような素振りもない。

まあ、フランが自分たちよりも圧倒的に強いと、理解しているというのもあるだろうが。

何をしても足手まといにしかならないのであれば、速やかに脱出することが一番の援護であると分かっているのだ。

ある意味、潔い奴らだった。

さらにフランは、ソフィに彼らの援護をお願いする。

「ソフィ。外にも竜人がいるかも。冒険者を逃がして」

「分かったわ!」

ソフィはフランの言葉にすぐに頷くと、穴を通って冒険者の後を追っていった。これで、向こうはどうにかなるだろう。

「くそっ! 小娘も竜人も、好き勝手しやがって! とりあえず、その竜人を捕まえるぞ!」

「お前が指図するな。先に殺すぞ?」

「俺はギルドマスターだぞ! 指図するわ!」

「つーん」

「クソガキ!」

言い争うフランとプレアールだったが、その視線は赤鱗の竜人から離さない。こいつ相手に油断することの危険さを、しっかりと理解しているのだ。

「ぐはははは! 思い切りがいいなっ!」

ギルドの壁に穴を開けて冒険者たちを逃したフランを見て、赤鱗が豪快に笑っている。

冒険者たちを追う様子はなかった。こいつもまた、フランたちの危険さを分かっているからだ。

フランとプレアールは険悪な雰囲気ながらも、当面の敵は竜人たちであると見定めている。

対する赤鱗は、仲間の援護を受けられずに1人だ。そんな、断然不利な状況になったはずなのに、笑っていた。

戦闘狂のこの男にとって、仕事とやらよりも戦闘そのものが重要なのだろう。

それにしてもこいつ、テンション高いな。今なら、うっかり重要なことを喋ったりせんかな?

「お前たちの目的はなに?」

「げははは! いくら俺が馬鹿でも、さすがにそれは言わんさ! というか言えんけどな!」

言えない? そこで鑑定してみると、赤鱗の状態に支配という項目が表示されていた。奴隷に近い状態だ。

どうやら、誰かに支配され、行動の一部を制限されているらしい。やはり、捕まえたうえでなんとか支配を解除せねば、情報は引き出せそうもなかった。

「ま、言えたとしても、言わんがなぁ! ベラベラと情報を喋っちまうような奴らは、三流以下よ!」

つまり、フィルリアやプレアールは三流以下ってことね。

「いくぜぇぇ!」

赤鱗がフランに向かって斬りかかってくる。高い身体能力に高度な歩法を組み合わせた、トリッキーな動きだ。

冒険者ならばランクB以下ってことはないだろう。

だが、周囲に邪魔者がいなくなれば、多少無茶な手も使えるのだ。

「スタンボルト!」

『スタンボルトッ!』

「ぐがぁぁぁぁ!」

「ぎぇぇぇ! こ、こむす……!」

回避不能な広範囲に、魔術をばら撒く。プレアールの悲鳴も聞こえた気がするが、赤鱗を倒すことが先決なのだ。

それに、どう見ても大して効いてないしね。ローブが魔術耐性を持っているらしい。

赤鱗にも状態異常耐性があるせいで、麻痺はしないだろう。だが、連続で雷鳴魔術を叩き込まれたせいで、その動きが一瞬止まる。

そこに、フランが連撃を叩き込んだ。俺は刃を潰し、棒状に変化している。そんな打撃武器化した俺で攻撃された赤鱗は、手足の骨を折られて、完全に動きを止めた。

痛みはなくとも、足が動かなければ逃げることはできない。

そこに、ウルシがとどめの一撃を加えていた。

「ガアアアアアア!」

「ぐぼぉっ!」

小細工なしの、正面突破だ。ウルシが、赤鱗の影から飛び出し、顎に思い切り頭突きをかましたのである。

その凄まじい威力の頭突きによって、赤鱗は真上にぶっ飛んでいった。

天井を連続でぶち抜く音が響き渡る。

「またやりやがって……! 今度は天井かっ!」

プレアールの苦々しい声が聞こえるが、無視だ無視。勝利のための尊い犠牲だったのだ。

「ウルシ、見事」

「オッフー!」

確かにいい一撃だったけど……殺してないよな?

俺たちはプレアールにこの場を任せ、赤鱗の確保に向かう。逃げたら殺すと脅しておいたし、変な動きをしたら転移で追えばいいだろう。気配は常に捉えているのだ。

ウルシによって真上へと吹き飛ばされた赤鱗の竜人は、天井を4枚ぶち抜き、5階の天井に頭が刺さった状態で意識を失っていた。

かろうじて死んではいなかったが、結構ギリギリだったぞ?

「オフ……」

「どんまい」

『とりあえず、こいつを拘束しよう。火に耐性のある魔糸でぐるぐる巻きにするぞ』

「ん」

赤鱗の竜人を拘束していると、1階で変化が起きているのが分かった。

急に、凄まじく強大な魔力が膨れ上がったのだ。破壊的で、攻撃的な魔力である。

直後、冒険者の気配がかなり減っていた。減ったというか、ほぼ全滅だ。いくら残っていたのが下級冒険者ばかりとは言え、一撃で?

しかも、振動や爆音などは一切なかった。何をした?

赤鱗がリーダーだと思っていたが、もっと強い奴がいたらしい。そいつが、何らかの攻撃を放ったのだろう。

ていうか、感心してる場合じゃねぇ!

プレアールの生命力が、急激に弱まっていくのが感じられた。

『フラン! 戻るぞ!』

「ん!」