作品タイトル不明
880 地下道探索
「なんかあったぞ!」
「昔の遺跡かなんかか?」
フランやブライネといった土魔術が使える者を中心に、冒険者とアウトローが力を合わせて地面を掘り返すこと5分。
あっさりと目的の物を発見できていた。
俺たちにとっては分かっていたものだが、他の者たちにとっては謎の存在だ。警戒するように、距離を取っている。
見えているのは、茶色のレンガ造りの壁のようなものだ。冒険者たちが呟く通り、遺跡っぽくも見える。地下通路の外壁だろう。
深さは、地下5メートルほどだろう。
町の中で地下を調べた時には、10メートルほどの深さだったかな? 町の外の出入り口へと向かって、昇ってきているらしい。
地球であれば、見つかったばかりの遺跡を壊すなんてありえないが、ここは異世界。男たちは早速壁を調べ始め、内部を確認するために穴を開けていた。
光が差し込んで、内部が露になる。
「どう見ても人工物だ。もしや、都市の偉いさんのための脱出経路か? ミランレリュ。おめぇさん、聞いたことは?」
「ないねぇ。あたしらみたいなもんに、そんな情報が下りてくるわけないだろ。冒険者たちはどうなんだい?」
「俺たちも知りません」
結局、この地下通路が何なのか、知っている人間は誰もいなかった。噂話としてそういったものがあるという話を聞いた者はいたが、本当に存在するとは思ってもみなかったそうだ。
「けっ。いざとなったら自分たちだけ逃げようって魂胆かい? 胸糞悪いね」
「権力者なんざそんなもんだろ?」
とりあえず、ガズオルのところまでは誘導せねばならない。この地下通路にもっと興味を持ってもらわねば。
フランに指示を出す。
「……ねぇ。これ、どこに繋がってる?」
「どこってそりゃあ……どこだろうねぇ?」
「俺が知るかよ。組織のデカさで言えば、うちか竜王会か、治療院に冒険者ギルドってとこか?」
「なら、確かめる」
「その必要あるかい? どうせ一般にゃ知られてない脱出路だろ?」
フランの言葉に、ミランレリュが首を傾げた。しかし、彼女の言葉を聞いたブライネが、何かに気づいたらしい。
「なあ。今もこの通路の存在が伝わっていると思うか?」
「どういうことだい?」
「この通路の存在が忘れ去られてた場合、抗魔に侵入経路として利用されやしねーかと思ってよ」
「だが、埃も積もっちゃいないし、掃除されてるっぽいよ? だったら、今も使われてるんじゃないかい?」
「保守するための魔術がかけられている可能性もあるだろうよ」
「ははぁ? なるほどねぇ」
ブライネとミランレリュの会話を聞き、他の者たちも地下道の先が気になりだしたらしい。探索をする流れになってくれた。
「これがどこに繋がってんのか、調べる必要がありそうだな。どう見ても、センディアに通じてるしよ」
「そうだねぇ。もし、忘れられた通路だとすると、抗魔が入ってきたときに何の対策もされてないかもしれないか」
「あとは入り口も見張る必要があるな。ここに抗魔を入り込ませないことも重要だろう」
「じゃあ、まずは入り口を探してみるかい?」
誘導するまでもなく、ブライネが探索の指揮を取り始めてくれた。このままガズオル発見までたどり着けたらいいんだがな。
最初は少人数で地下道に入ることになった。フラン、ブライネ、ミランレリュに加え、ランクC冒険者が3人である。
ウルシを先頭に、地下道を町とは逆へと向かっていく。すると、3分ほどで入口へと辿り着いていた。
いや、入り口というか、突き当たりだ。扉などがあるわけではなく、大量の土砂が行く手を塞いでいた。どうやら、土を大量に被せて入り口を塞いでるらしい。
上の方に空いている穴は、ウルシがここから脱出する際に掘った穴だが、最初は完全に塞がっていたそうだ。
利用者は、いちいち土魔術で土をどかして出入りしているのだろう。
「なんだ? 埋まってるのかい? じゃあ、やっぱり誰も使ってないのかねぇ?」
「いや、明らかに土の質が違うな。ちょっと待ってろ」
ブライネが土魔術で、なにやら土をほじくり返し始めた。そして、何度もうなずいている。
「明らかに土魔術でいじっている土だ。少なくとも、堆積して何年も経っているようなことはない」
「つまり、誰かが土魔術を使ってここを出入りしてるってことかい?」
「おう。そういうこったな」
ブライネが予想以上にできる男だった。
その後、一度土をどかして外に出たフランたちは、その場所を冒険者たちに見張ってもらうように頼んだ。
抗魔の侵入経路になるかもしれないと言われれば、断る者はいなかった。あと、数人にこの場所のことを知らせに行かせた。
知らせる相手? 勿論、門の近くで警戒に当たっている冒険者とアウトローと警備兵たちだ。これで、この地下通路のことは盛大に周知されるだろう。
「じゃあ、いく」
「おう。そうだな」
細かい手配を終えた後、いよいよ地下通路の奥へと出発だ。先頭は、感覚の鋭いフランとブライネ。その後ろに、遠距離攻撃が得意なミランレリュである。
道中の雑談で分かったが、ブライネは土狢族――つまりアナグマ系の獣人だった。感覚が鋭く、土魔術に長けているのはそのおかげなのだろう。
さらに、フランは背後のミランレリュにも話を聞いてみる。ずっと笑顔なのが気になったらしい。歩いていて面白い場所でもないはずなのに、ミランレリュは妙に楽し気だからな。
「ねぇ。楽しいの?」
「へっへっへ。こんな探索じみた真似、久しぶりだからねぇ」
なんでも、ゲフ、ガズオル、ミランレリュは大陸の外で同じ傭兵団に所属していたらしい。しかし、戦いに敗れた責任を負わされそうになり、この大陸へと逃げてきたのだそうだ。
「ここは敵は抗魔だけしかいないし、酒もマズいし、ダンジョンもない。刺激が足りないんだよねぇ」
つまり、こういった変わったイベントは、大歓迎ってことらしかった。
そうして歩き続けると、ついに突き当たりへと辿り着く。ウルシに見せられた幻覚に映っていた、ガズオルのいる部屋へと通じる扉にそっくりだ。
「さて、何が出るか、楽しみだねぇ」
「厄介な場所に繋がってなけりゃいいんだがな」
それは無理だ、ブライネ。この先には特大の厄介事があるのだ。