軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

879 地下道の存在

東経由で南門へと急ぐフランだったが、東門へとたどり着く前にウルシと合流できていた。

町の警備兵がそれなりに頑張ったらしく、ウルシたちが加勢すれば楽勝だったらしい。ウルシもかなり本気で頑張ったようだ。

『よくやったな!』

「えらい」

「オン!」

褒めてやると、ウルシは鼻高々である。さらに、ウルシの報告はそれだけではなかった。町とは別の方角を向き、鼻で指し示す。

『ウルシが通ってきた地下道の出入り口だな?』

「オフ!」

「今行く?」

『ウルシ、その入り口は町から離れているか?』

「オフン」

『近いのか……。入り口に入る姿は、都市壁の上から見えると思うか?』

「オン!」

『うーん、正直無理じゃないか?』

未だに都市壁の上には多くの冒険者やアウトローが鈴なりになっており、抗魔の第二波を警戒している。この状況では、どう行動しても目立つだろう。

俺たちが地下道の出入り口を発見したという情報は、できれば知られたくなかった。フィルリア以外に、黒幕的な存在がいるかもしれないのである。

地面の下に消えていけば、どうやったって目立つし、噂にもなるだろう。

こっそりと入り口に向かうと言っても、限度がある。気配を消したところで、相手の肉眼から姿を消せるわけではないのだ。木立も何もない平原を、百人を超える冒険者の目を欺いて移動することは難しかった。

幻像魔術なら自身を透明にする術もあるんだが、俺たちのスキルレベルじゃ使えない。

幻像魔術にポイントを振る? いや、もう1つ姿を隠す方法があったな。

『光魔術を使えばどうにかなるかもしれん』

「なるほど」

魔狼の平原で戦った魔獣、インビジブル・デスのやっていた光学迷彩だ。ただ、周囲の景色に完全に溶け込むレベルの光学迷彩は、俺にはどうしても使いこなせなかった。

それでも周囲の景色を歪ませて、誰なのか判別できなくすることは可能なはずだ。目の前の石に軽く使ってみたが、何とかなりそうだった。

透明な歪みがあるみたいに見えるのだ。フランだとはバレまい。

「……でも、何かいるって分かる」

「オン」

『確かにな』

これはこれでマズいか? 抗魔が襲ってきた後に、町から離れていく歪みのようなものを纏ったナニか。

センディアの人々に、必要以上の不安を与えてしまうかもしれなかった。

『とりあえず町に戻って、夜にでもこっそり向かうか?』

「オフン!」

『ダメか?』

「オン!」

ウルシは今すぐにでも地下道に向かいたいらしい。

そこで、ウルシが闇魔術ブレイン・トリックを使用した。対象の精神に作用して幻覚を見せる魔術だ。

だが、闇無効がある俺たちはその魔術を弾いてしまった。ウルシが再度鳴く。闇無効を外せってことだろう。

望む通りにしてやると、ウルシがもう1度同じ魔術を使った。

ウルシが幻覚で再現したのは、自分が見てきた光景である。

「む。ガズオル」

『ああ、檻に入れられてんな』

なんと、地下道でガズオルと接触していたらしい。ウルシが影転移で部屋に侵入したところから始まり、ガズオルとのやり取りが再生される。

「な、なんだ? 闇の塊?」

「オン」

ウルシは小型化したうえで、闇を纏って自らの姿を誤魔化しているようだ。監視結界対策だろう。

「もしかして、どこぞ誰かの従魔か? それとも、精霊ってやつか?」

「オン」

「言葉が通じてる? なあ、こんなこと言えた義理じゃあねぇんだが、俺の頼みを聞いちゃくれねぇか?」

「オン!」

「待った! 助けなくていい!」

「オフ?」

「やはり、言葉が通じるか。助けるんじゃなくて、できれば人を呼んできてくれねぇか? それもできるだけたくさんだ。さすがに、大勢にここが見つかっちまえば、治療院の奴らも諦めんだろうよ」

「オン!」

「おお、本当にいいのか? 頼んだぜ」

そこで幻覚が終了した。

『あえて逃げないことで、自分自身を治療院の裏切りの証拠とするつもりか……』

「頭いい」

『頭がいいかともかく、かなりの覚悟がなけりゃできない行為だろうな』

「早く、人を連れて助けに行く」

これは、俺たちにとってもいい手かもしれない。

俺たちだけでこそこそ行くのが難しいなら、大勢を巻き込んでしまえばいいのだ。今なら抗魔への追撃や偵察といった大儀名分もあるし、大人数を連れていけるだろう。

こっそり地下道の入り口に誘導できるかが問題だが……。そこは何とかするしかない。

『アウトローたちと冒険者たちに、偵察を提案してみるか』

「ん!」

ということで、俺たちは北門の周辺にいる男たちに声をかけてみることにした。すると、大勢が一緒に行くと言い出す。

俺が俺がの大合唱になったので、とりあえず各組織から1人ずつ偵察要員を出してもらうことにした。

結局、偵察隊は全部で23人だ。多いのか少ないのか、微妙なラインだな。当然のように、ブライネとミランレリュの姿もある。

さらに、俺たちは冒険者にも声をかけることにした。目撃者の勢力が多い方が、証拠能力が上がるからな。

こちらでも大人気だったせいで、人数が膨れ上がってしまった。多分、50名近いだろう。

フランが先導するように見せて、ウルシの向かう方向へと偵察隊を誘導する。

すると、程なくしてウルシが反応した。どうやら、この下に地下道があるらしい。

大地魔術で探ってみると、確かに細い通路のような空間が存在していた。

「む」

「どうした? 黒雷姫の」

「なんか変」

「変? 何がだ?」

「地面」

「あ? 何も感じねぇが……。ちょいと待ちな」

最初は、地面の下が怪しいと言いつつ、地面の下に抗魔が潜んでいたらマズいので調べるとか言おうと思った。

だが、フランの大根演技では疑われてしまうに違いない。そこで、地下に違和感があるとだけ言っておいて、冒険者やアウトローに探ってもらうことにしたのだ。

それで見つからなければ、俺たちの大地魔術で掘り返せばいい。

すると、1分もかからずにブライネが声を上げていた。どうやら、探知能力に優れていたらしい。

直接戦闘にも強く、探知も得意とは……。さすがに血牙隊第一席なだけあって、ハイスペックだな!

「確かに変な空間がありやがるな!」

「はぁん? 抗魔どもがそんな知恵を付けたってことかい?」

「分からねぇ。だが、掘り返してみりゃわかるだろうよ」

「そうだねぇ」

50人もいれば、土魔術を使うものもいるし、ミランレリュたちのような力自慢も多い。彼らが動き出すと、あっという間に地面が掘り進められていく。

これは、予想以上に早く地下道へと到達できそうだった。