軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

878 第一席と犬鳴き

『見えた! 門の前に抗魔がうじゃうじゃいるぞ!』

「蹴散らす」

『おう!』

俺とフランが北門に到着した時、抗魔が既に群がっていた。

情報通り、アウトローたちの数が少ないようだ。都市壁の上からの弓攻撃も散発的だし、門外に出ている部隊の数も少ない。

彼らはなんとか北門の目の前に陣取り、門を抜かれることは阻止しているようだ。

抗魔の数は全部で5000くらいだろう。本来であれば、アウトローたちが全戦力を傾ければ圧勝できる数なんだがな……。

先頭に1人だけ強い獣人がいる。こいつのお陰で、まだ壊滅していないようだ。だが、このままでは時間の問題だろう。

フランは駆ける速度を上げ、抗魔の只中に突っ込んだ。

「援護する!」

「おお? 助かるぜ!」

先頭の獣人が、突如現れたフランに対して礼を言ってくる。フランの実力があれば、形勢が逆転すると瞬時に理解したのだろう。

「俺は血牙隊第一席ブライネだ!」

「私はフラン」

「黒雷姫か! 大物じゃねーか! 頼りにさせてもらうぜぇ!」

「ん!」

ブライネは高身長でありながら、細身の男だった。美形なんだが、細い目と白すぎる肌のせいで妙に病的に見える。

「てめぇら! あと一息だ! きばりやがれ!」

「「「おおお!」」」

それから30分後。

「たぁぁ!」

「ギシィィィ!」

フランが俺を振り下ろし、最後の抗魔が崩れ落ちる。これで、北門前の防衛は完了だろう。

すぐに周囲のアウトローたちが駆け寄ってくる。

「す、スゲーぜあんたっ!」

「姐さん! やりやしたねぇ!」

「かっこよかったわ!」

「黒猫族すげー!」

危機的な状況を救われたからだろう。全員が興奮した様子で、フランを褒め称えている。

「黒雷姫の。助かったぜぃ?」

「ブライネ、メアたちはきてないの?」

「姐さんは組長の護衛みたいなもんだからよ。出るって言い張ったんだが、契約を盾に許されなかった」

メアがこんな時に出撃しないのはおかしいと思ったら、獣人会の組長に引き止められてしまったらしい。彼女の目的を果たすためには獣人会と敵対するわけにもいかず、泣く泣く出撃を諦めたという。

その代わり幹部会を説得し、ブライネの出撃を認めさせたそうだ。

幹部たちも、全く戦力を出さない訳にはいかないと分かっていたらしく、メアの提案を受け入れたらしい。

「なんで、戦力を出したくない?」

「竜王会がシマを狙っているとかいうタレコミがあったらしいぜ」

「タレコミ? 誰から?」

「それは知らん。ただ、幹部どもが信じてるってことは、よっぽど確かな筋なんだろうぜ? だからって、ここが抗魔に落とされちまったら意味ないだろうによ」

その後、アウトローたちが獣人会、竜王会について愚痴り始める。収拾がつかなくなりそうなので、フランがいくつか気になっていることを尋ねてみた。

フランの実力を見た後なので、全員が従順だ。全員を回復もしてやったしな。下手したら、上役の秘密くらい暴露してくれちゃうんじゃなかろうか? それくらい、あっさりと情報が集まっていた。

そこで分かったのは、ここにいるアウトローたちは竜王会でも獣人会でもなく、他の弱小組織に所属している者たちであるということだった。

竜王会と獣人会の下部組織も人を出し渋っており、そのせいで300人程度しか人が集まらなかったらしい。

所属する組織は違っていても、抗魔相手には団結する。その暗黙のルールに従っているのだろう。

「おいおい! あんた凄いじゃないかい!」

「誰?」

話を聞いているうちに、都市壁の上にいた冒険者たちが下りてきた。真っ先にフランに話しかけてきたのは、赤髪を短く切った、勝気そうな女性だ。

「あたしは竜王会のミランレリュってもんだ! よろしくな!」

「ん」

フランが軽く顔をしかめる。ミランレリュの大声のせいだ。嫌がらせをしているのではなく、これが素なのだろう。

デカい声に、隠す気のない気配。そりゃあ、こいつに隠密行動は無理である。暗殺者に最も向かないタイプだ。

都市壁の上から聞こえていたボンボンという妙な音は、ミランレリュの放つ矢の音だったらしい。

ミランレリュからも話を聞いたが、やはり獣人会を警戒しているせいで、ゲフや幹部の護衛は本部に留め置かれたそうだ。その中にベルメリアたちも含まれているのだろう。

ミランレリュは、命令を無視してここまでやってきてしまったらしい。

「うちの幹部連中がどこから情報を仕入れたかって?」

「ん」

「さあ?」

それなりの地位にいるはずのブライネやミランレリュでさえ知らない情報源? もしかして、フィルリアの仕業か? あの女なら、可能なのだ。動機は分からないが、前科もあるしな。

それにしても、ブライネとミランレリュがいがみ合うような感じがなかった。どうも、両者ともに大雑把というか、細かいことは気にしない性格らしい。

ここで共闘したんだから、とりあえず仲間枠なんだろう。今はそれがありがたかった。

「私は南門に行く」

ウルシと他の冒険者を向かわせたから大丈夫だと思うが、一応確認しに行った方がいい。

「この辺の警戒は任せる」

「おうよ!」

「任せておきなさい!」

そこはかとなく不安だが、実力は問題ないのだ。ブライネたちに任せておけばいいだろう。

「喧嘩はダメだから」

「お、おう」

「わ、分かったわ!」

フランが威圧しながら釘を刺すと、その場にいた全員が背筋を正した。完全にフランの舎弟じゃね?