軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

877 戦力不足

属性剣を使って抗魔を斬り捨てていくと、次第に抗魔の数が減ってきた。減ってきたと言っても、まだ抗魔に囲まれた状態だけどね。

ただ、押し寄せる圧力が明らかに減り、フランに崩された陣形の修復が遅くなってきたのだ。

この状態で強力な上位個体が出てこないということは、下級抗魔のみで構成されているんだろう。やはり先遣隊だったらしい。

こちらの戦力を測るために、倒されることが仕事だったわけだ。

さすがにフランたちだけでは完全に防ぎきることはできず、それなりの数の抗魔が都市壁へと達してしまっている。

ただ、そこには冒険者たちが待ち構えているのだ。壁の上からの遠距離攻撃により、都市に被害を出すことなく殲滅されていった。

冒険者たちの士気は高く、フランたちへの声援も大きい。

「うおー! さすが黒雷姫!」

「がんばれー!」

「かっちょいいー!」

「惚れたぞー!」

最後の奴どこのどいつだ! 俺は許さんからな!

「師匠?」

『……なんでもない。冒険者の応援が耳に入っただけだ』

「ん。頑張る」

冒険者たちの声援を受け、フランもやる気が急上昇だ。ストレス発散のための後ろ向きなやる気ではなく、町を守りたいという前向きなやる気である。

フランは再び剣を振るい、今まで以上の速度で抗魔を撃破していった。左右の冒険者たちも、まだまだ元気である。

抗魔は数千体以上残っているが、フランたちならさほど時間もかからずに掃討できるだろう。

そんな戦場に、新たな集団が出現するのが分かった。敵ではなく、冒険者の一団だ。

多分、反対側にある東門から出て、都市壁を迂回してきたのだろう。

俺たちが町を出る前に、冒険者の部隊は200名以上って話だったが……。

『どう見ても30人くらいしかないぞ?』

「ん」

それに、戦いにきたという雰囲気じゃない。かなり慌てているように見えた。キョロキョロしているが、誰かを探しているのか? もしかしてフラン?

俺の勘は当たっていたらしい。フランの姿を見つけると、抗魔の流れに抗いながら向かってきたのだ。敵意は感じないので、周囲の抗魔を吹き飛ばして、道を作ってやった。

冒険者たちがその隙間をこじ開けながら、なんとかフランの下へとやってくる。この程度の抗魔に手こずるだけあって、全員がランクEくらいに見えた。

先頭のやつでも、Dってところだろう。

「ラ、ランクB冒険者か?」

「ん」

フランの実力を見抜くことができず、子供が戦っているのを見て驚いているらしい。それでも、広範囲の魔術を放った姿を見てランクが正しいと理解できたのだろう。

他の冒険者たちが周囲の抗魔を押しとどめるために散り、先頭の男が焦った様子で口を開いた。

「た、頼みがある!」

「なに?」

「実は南門と北門が、かなり苦戦している!」

「冒険者が少ないの?」

他の門にも抗魔が向かっていたらしい。ただ、こっちにフラン以外のランクB冒険者を回す余裕があるのだ。南北の門にも同じように救援が向かったはずなんだが……。

だが、この都市の防衛事情は、俺たちの想像とは全く違っていた。

抗魔に襲われた際、基本的には東西を冒険者ギルドが。北をアウトローたちが。南を町の警備兵と治療院が担当するらしい。

抗魔の季節などには上層部の話し合いで戦力を融通し合うが、今日のところは元来の縄張り通りに出撃したそうだ。

しかし、肝心の戦力が全く足りていないという。

「北門では、組織同士の抗争に備えて、無法者たちが戦力を出し渋っているようでして」

なんと、獣人会と竜王会の幹部たちがお互いを疑うせいで、組員を抗魔戦に送り込むことを躊躇しているそうだ。

治療院も同様で、聖女が暗殺者に狙われているという情報があるから、護衛を減らせないという回答だったらしい。

フランを嵌めることは失敗しても、その嘘情報をさらに利用しやがった。

裏組織も治療院も、自分たち以外同じことをしている勢力がいるなんて思ってもいないのだろう。

「ここを片付けたらすぐ向かう」

「頼む!」

フランは気合を入れ直し、抗魔へと向かった。さすがに属性剣の検証は終わりにして、魔術をばら撒いて殲滅速度優先に切り替える。

他のBランクにも説明が済んだのか、彼らの攻撃も激しさを増したな。

しかも、新たな戦力が登場する。

「オンオン!」

「ウルシ! どこからきた?」

「オフ!」

抗魔を蹴散らしながら現れたのは、地下道の探索を頼んでいたウルシだった。

ただ、現れた方向が不思議である。なんと、都市とは別方向。抗魔たちの背後から現れたのだ。

地下道が、離れた場所まで続いていたってことか?

『詳しいことは後で聞こう。今は抗魔を片付けるぞ』

「わかった」

「ガル!」

ウルシがいてくれれば、南北両方に救援に行けるだろう。いい時に戻ってきてくれたのだ。

「てやああぁぁ!」

「ガルウゥゥ!」

ほどなくして、俺たちは西門前の抗魔を全滅させることに成功したのだった。