軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

875 迫る抗魔の群れ

冒険者ギルドに到着すると、大勢の人間が慌ただしく動いていた。ギルドから冒険者たちに、様々な指示が出ているらしい。

受付で情報を求める者。あたふたする者。大量の物資を担いで飛び出していく者。その行動は様々だ。

それと、今日の受付はプレアールではなく、若い女性たちである。臨時で作られた受付に、数人の女性が立っている。

フランも臨時受付に近づくと、自らの冒険者カードを提示した。

「あ! フランさんですね! お待ちしておりました!」

相手もすでにフランの情報を頭に入れているらしく、すぐに対応してくれる。プレアールが指示を出していたのだろう。

そのプレアールの姿が見えないが……。

「プレアールはどこ?」

「ギルドマスターは、他の組織の責任者と会談中です」

「そう……」

さすがに、この状況下でプレアールを問い詰めるような真似はできそうもない。戻ってきてからだろう。

その後、女性からフランの役割を詳しく聞いていく。

「抗魔が近づいているって聞いた」

「はい。それでフランさんには遊撃をお願いしたいということです」

「遊撃?」

「多くの冒険者さんには、特定の区画を守ってもらうように指示を出しています。ただ、ランクB以上の方々には、自由に動いてもらうようにと」

足手まといの面倒を見るよりも、個人で好きに戦えってことらしい。ランクB以上になると我も強いだろうし、手の内を明かしたくない者もいるだろうしな。

「ただ、都市壁の上の冒険者たちの邪魔はしないようにお願いします」

「他の冒険者は、壁の上で戦うの?」

「はい。スキルや魔術、矢で抗魔を削ります。それと戦士系の職業をまとめた部隊で門の防衛も行いますが、メインは遠距離攻撃になりますね。都市壁に近いところで戦いますと、誤射される恐れがあります」

「わかった。他に注意することは?」

「冒険者以外にも戦闘に出てくる者たちがいると思いますが、そちらともできるだけ揉めないでください」

アウトローや治療院の部隊、町の衛兵なども、それぞれ防衛に当たるんだろう。上では話が付いているようだが、現場では混乱しそうだ。

「こちらからの注意は以上となります」

「わかった」

「では、よろしくお願いいたします」

受付の女性がフランに深々と頭を下げた。この人も、この町の生まれなのかもしれない。故郷の防衛戦に参加する高ランクの冒険者は、彼女らにとってはただの戦力以上の思い入れがあるのだろう。

「ん」

フランは力強くうなずくと、大手門へと向かった。

『フラン。雑魚相手なら問題ないが、上級の抗魔相手はまだ厳しいぞ?』

「わかってる。でも、やらないといけない」

『場合によっては、他の冒険者との共闘も視野に入れるぞ?』

「ん」

相談しながら駆けていると、あっという間に門まで到着する。そこでは、何百人という冒険者が列を作っていた。

弓矢を受け取ってから、そこかしこにある階段で上に登っていく。彼らは外に出ず、遠距離攻撃で牽制をする役割なのだろう。

俺たちはその列を無視して、門へと急いだ。すでに閉じられているが、外には出れるかな?

「ねぇ」

「なんだ?」

「今は忙しいんだ! 後にしてくれねぇか?」

「外に出たいんだけど」

「はぁ? 今の状況が分かってんのか?」

「出れる訳ねぇだろう!」

門番の男たちは、いきなりやってきて外に出せというフランに、苛立った様子だ。しかし、フランは物怖じすることなく、懐から冒険者カードを取り出して掲げた。

「これ」

「え? まじか? お嬢ちゃんが、ランクBの冒険者?」

「は? 見間違い?」

「いやいや! ほら! お前も見てみろよ!」

「うお! マジだ!」

門を見張っている男性たちは、冒険者ではなくこの町の兵士だ。フランのことは知らないのだろう。

だが、冒険者カードが偽造されたものではないと理解したのか、すぐに状況を教えてくれた。

「すまん。もう西門は開けられん。すぐ外にまで抗魔が迫っているからな」

「外に出るなら、反対側の東門を使ってくれ」

抗魔が押し寄せた側の門は、全て閉じてしまったようだ。だが、俺たちであれば問題ない。

『フラン、転移で門を通り抜けよう』

「ん。じゃあ、ここから出る」

「いや、それは――」

俺が短距離転移を発動させた直後、門番たちの声は途切れ、代わりに抗魔の咆哮が耳に入ってくる。まるで都市の人間を脅すかのような、甲高い不快な音だ。

同時に、目の前の景色が切り替わっている。

見えるのは、平原を埋め尽くす抗魔。その大群が、こちらに押し寄せる光景であった。

見渡す限りに抗魔がいる光景は、地獄そのものだ。

だが、フランに怯む様子はなかった。

『下級抗魔ばかりだし、カステルよりは楽そうだな』

「ん!」

俺を抜き放ったフランが、不敵に笑う。すると、そこに大勢の声が降り注いだ。

「おーい! 何やってる!」

「そこは危ないわ!」

「抗魔がくるぞ! 壁沿いに逃げろー!」

壁の上で待機している冒険者たちが、フランのことを発見したのだ。

口々に心配の言葉を投げかけてくれる。

そんな冒険者たちに、フランは軽く手を振って背を向けた。「ちがーう!」とか「なんでそっちに行く!」みたいな悲鳴が聞こえるが、フランは振り返らない。

『いっちょやってやるか!』

「ん! 師匠、おねがい」

『おう!』

念動エアライドで一気に平原を飛び越したフランは、あっという間に抗魔の群れの上空へと到達していた。

そのまま俺から飛び降り、抗魔の群れへと躍り込んだ。無論、すでに俺はフランの手の中である。

『周りに他の冒険者はいない。派手にやっていいぞ』

「はああぁぁ!」

フランは楽しげにさえ見える表情で、攻撃を繰り出していった。いや、実際に楽しいのだろう。抗魔を薙ぎ払いながら、満面の笑みを浮かべていた。

多分、壁の中で溜まったストレスを、抗魔相手に発散しているんだろう。誰が敵で誰が味方か分からないのは、フランにとっては非常にイライラするだろうからな。

「てやあああぁぁ!」

町にとっては不幸でも、フランにとってはいいタイミングで攻めてきてくれたのかもしれん。3万の抗魔を倒しきることは無理だろうが、フランのストレスがなくなるまでは暴れさせてもらうとしよう。