軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

873 結界屋

嘘95パーセントのフィルリアの言葉に対し、ソフィは再び同じ言葉を口にする。

「私は、ここにいます」

「聖女様のお気持ちを無視するわけにはいきませんね。やはり、本日はお帰り願うしかないようです。ねぇ、セリアドット?」

「そうじゃなぁ。頭に血が上った状態では交渉などできんじゃろう」

その声の持ち主は、フィルリアの言葉に応えて奥から姿を現した。

隠れて話を聞いていたのだろう。

「一度塒に戻って、気持ちを落ち着かせるといい。よい方法を教えてやろう。ひたすらに金を数えるんじゃ。すると、あっという間に気分が落ち着くぞ?」

あれがセリアドット? 結界屋の異名を持つ、ランクA冒険者?

俺はフィルリアの隣で笑うその女性を見て、驚愕してしまっていた。

勝手に大人だと思っていたが、子供じゃないか! プラチナブロンドを長めのハーフツインにした、ややぷにっとした感じの美少女だ。フランよりも年下に見える。

いや、こいつはエルフだな。外見年齢に騙されちゃいけない。つまり、合法ロリ。しかも、のじゃロリだ。

敵側の人間じゃなかったら、いいキャラがキターと喜べたのに!

それにしても、隠れていることに気づけなかった。多分、結界魔石を使っていたのだろう。フランが過剰に警戒していたのは、セリアドットが潜んでいることに、無意識のうちに気づいていたからに違いなかった。

やはり、結界魔石が厄介だな。ただ、それだけで相性が悪い相手であるとは言い切れない。何せ、結界魔石も監視結界も、素材が魔石なのである。

そう、発見さえしてしまえば、排除は一撃であった。既に、これまで発見した結界魔石で試している。

加工されているせいか魔石値は1しかもらえなかったが、吸収自体はできたのだ。

ただ、セリアドットは結界だけの一芸特化型の冒険者ではない。

その実力の高さは、見ているだけで分かった。近接戦闘も相当やるだろう。事前に結界屋であると知らなければ、戦士系の職業であると勘違いしていたかもしれなかった。

結界術を併用した接近戦とか、強そうである。

聖騎士の顔色が変わる。馬鹿とはいえ、聖騎士。見ただけでセリアドットの力を十分理解したらしい。

「あ、明日、またくる!」

「次も乱暴な真似をするのであれば、こちらとしても考えがありますので」

「……首を洗って待っているがいい」

聖騎士はチラリとセリアドットを見ると、悔し気に踵を返す。捨て台詞を残して去っていく姿なんて、完全に負け犬だった。

聖騎士たちが出ていくと、フロアにホッとした雰囲気が流れる。その中にあって、フランだけは全く安心することができないでいた。

フィルリアの鋭い視線と、セリアドットの値踏みするような視線。その双方に晒されていたのだ。

フィルリアが、あたかもフランを知らないと言った表情で首を傾げた。

「……その黒猫族の少女は初めて見るけど、どちら様なのかしら?」

そう、嘘を吐く。やはり、フランのことを知っているらしい。

「その娘、なかなか強いのう。名は何と申すのじゃ?」

「フラン」

「おお! もしや黒雷姫か! なるほど、強いわけじゃのう! 聖女様にお主のような護衛がいるとなれば、あの小童どももそうそう手は出せぬじゃろうて。これは僥倖僥倖。のう、医長殿?」

「そうね」

おや? 結界師は本当にフランを知らないようだ。しかも、ソフィを心配するその言葉は、本当である。

フィルリアの裏の顔は知られていないのだろうか? 本当に、ただの護衛?

フランに軽く質問させてみる。

「そっちの名前は?」

「これは失礼したのう。セリアドットと申す。これでも冒険者じゃぞ?」

「結界屋?」

「その通り!」

その人懐っこそうな笑顔を見ていると、とても冒険者とは思えない。そこらの道端で、友達と遊んでいる姿が似合いそうだ。

「医長の護衛をやってる?」

「うむ」

「じゃあ、医長の命令なら何でも聞く? 悪いこととか?」

「はぁ? 変な質問するのう。護衛は護衛じゃ。それ以外のことはせんよ。そこな医長殿に護衛に関係する以外の仕事を頼まれても、それは拒否するじゃろう」

「本人の前で、随分と失礼な質問をするじゃない? セリアドットも、無駄なおしゃべりはそこまでにしておきなさい」

「分かったのじゃ」

マズいと感じたのか、フィルリアに会話を遮られてしまった。仕方ないな。

ただ、セリアドットは嘘を言っていなかった。本当に、護衛だけしかしていないようだ。

結界魔石や監視結界に関しては、護衛や警備にも有用である。その目的でフィルリアに渡しているだけなのかもしれない。

「それにしても……黒猫族ね?」

「……ん」

フィルリアが、不意に笑みを消してフランを見る。

「聖女様を暗殺しようとしている黒猫族の少女がいるという話を聞いたのだけれど……」

フィルリアがそう告げた瞬間、フロア中の視線がフランに集まった。元々、どこの誰か分からないフランには、不審の目が向けられていたのだ。

そこにきて、この塔でソフィと同じくらい信頼されている、フィルリアの言葉である。人々の視線が厳しくなるのも無理はなかった。

警備兵などは、再び槍を構えだしている。

だが、すぐにソフィが前に出た。

「彼女は私の友人です。暗殺だなんて、絶対にありえません」

「ん」

「いつの間に友人なんて?」

「つい最近ですけど、一緒に抗魔と戦った仲ですから。問題はありません」

さすが聖女。ソフィの言葉で、一触即発の雰囲気が瞬時に落ち着いていた。

「ふうん。そうですか」

「聖女様に同年代の友人とは、良きかな良きかな!」

セリアドットはからからと笑っているが、フィルリアはつまらなさそうに鼻を鳴らしている。フランとソフィを仲違いさせるつもりだったのか?

やはり、こいつは油断ならなそうだ。