軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

814 百人隊vs抗魔

そこは、正に戦場だった。

周囲は全て抗魔だ。殺意を持った抗魔たちが、死を恐れずに群がってくる。

人間同士の、狂気を伴った戦ともまた違う。しかし、紛れもなくここは、人と抗魔が命を奪い合う戦場だった。

「はああああぁ!」

「ギシャァァ!」

「ちぇあぁぁ!」

「グルオォッ!」

フランの斬撃が抗魔たちを切り裂き、ヒルトの拳が数体を纏めて砕く。チェルシーやコルベルト、ディギンズも暴れ回っている。

そうして抗魔を倒し続けても、一向に敵の数は減らなかった。無限に湧いて出ているのかと思うほどだ。

魔術で周囲を一掃しても、即座に抗魔が押し寄せて穴を埋めてしまうのだ。

常に抗魔の壁がこちらに押し寄せ続けているような状態である。それでも、フランたちは抗魔の群れを切り裂きながら、少しずつ前に進んでいった。

「道を、あける!」

『フラン、焦るな。まだナディアの気配は元気だ!』

最初、フランは空中跳躍を使い、1人でナディアの救援に向かおうとしたんだが、上手くいかなかった。

空に飛び出した直後、魔砲型を始めとした遠距離攻撃型抗魔の砲撃を浴びたのだ。間断なく撃ち込まれ続ける万を超える弾幕を前に、大怪我を負いながら地上に降りるしかなかった。

100や1000ならともかく、あの数はどうにもならない。いや、本気を出せば何とかなるかもしれないが、ここで全力を使い果たすことなどできないのである。

時空魔術で回避しようにも、なんと時空属性の攻撃まで混じっていた。これは、チェルシーたちから事前に聞いていたが、上位の抗魔は転移を使うらしい。

やはり、時空属性を備えているんだろう。その後、ディメンジョンゲートで一気に先に進めないか考えたが、それも難しかった。

地上は抗魔が邪魔でゲートを作れないし、空中に生み出しても時空属性の攻撃でたちまち破壊されてしまう。

《潜在能力解放、剣神化を使用せず、空中跳躍、時空魔術、次元魔術のみを使用しての単騎突入が成功する確率、13%》

『急がば回れだ。地道に行こう』

(……ん)

ナディアを救うには、何万もの抗魔の壁をかき分けて進まねばならないようだった。

それに、俺たちだけなら無理かもしれないが、今は頼もしい仲間たちがいる。

デミトリス流の門弟や、ディギンズら冒険者の力は見たことがあるが、活躍しているのは彼らだけではない。

「ウォーター・スライサー! うらららぁぁ!」

竜人のチェルシーは、水魔術と両手に持った曲刀を操り、激しい攻撃を連続で繰り出し続けている。

竜人の身体能力と魔術の腕前を生かした、攻撃偏重の魔法剣士スタイルだ。他の竜人たちも似たようなものである。

ただ、それは防御が下手というわけではなかった。やられる前にやる。やられても僅かな回避でカウンター。多少の傷は高い再生能力で即回復。正に、攻撃は最大の防御を地で行く種族なのだ。

今のところ、10人全員がフランやヒルトと変わらない戦果を上げているだろう。

また、意外にもと言っては失礼だが、非常に頼もしいのがセギルーセル王国の騎士たちである。

ヤーギルエール以外の者たちは、ステータスやレベル的にはランクC冒険者クラスなんだが、その守りの力は想像をはるかに超えていた。自身の防御力は勿論、仲間を守るということに長けている。

それぞれが歴戦の盾使いであり、騎士ならではの視野の広さと連携力。そして、絶対に仲間を守るのだという精神力。

挑発スキルなどで敵の攻撃を引き付け、身を張って攻撃を受け止め続けている。彼らがいるおかげで、前衛も後衛も被弾が相当減っているはずだった。

後衛の傭兵団の援護も的確だ。精鋭と豪語するだけあり、全員が複数の魔術を使いこなせるらしい。

時には補助魔術で援護し、時には遠距離攻撃で敵を妨害する。また、半数が回復もこなせるため、まるで高位の魔術師が何十人もいるかのような働きをしてくれるのだ。

彼らの護衛は、ソフィの連れてきた男たちである。やる気がないままこんな戦場に放り込まれたのに、しっかりと仕事はこなしている。

ただ、ソフィは未だその力を発揮してはいない。これは、あえてだった。戦場で、彼女の演奏は格段に抗魔を引き寄せるだろう。

必要になるまでは、演奏を封印してもらっているのだ。それでも、十分に戦力員にはなるけどね。ウルシの背に乗ったまま、抗魔たちを蹴散らしている。

いざ演奏が必要になったときもウルシがいれば護衛としては十分なはずだった。

出会ったばかりとは思えない結束力で、フランたちは抗魔を屠り続けていく。

倒され、消滅する抗魔の肉体が塵となって浮遊し、まるで黒い蛍が周囲を舞っているかのように見えた。

血生臭さも、鉄の匂いもない戦場を漂う、抗魔の残滓。美しさと物悲しさ、両方を感じさせるその中を、抗魔たちが殺到する。

しかも、敵は数が多いだけではなかった。

「イイイイィィィ!」

「むぅ!」

「こいつら……強いわね!」

それが現れたのは、戦い始めてから30分ほど経過した頃だ。

フランとヒルトが揃って攻撃を防がれたのである。

姿形は、今までも散々倒してきた騎士型とほぼ同じだ。頭から突き出した黒い角くらいしか、見た目に違いはない。

だが、放たれる存在感は、全く異質なものであった。黒角騎士の内から放たれる魔力の量も、桁が違う。

「はぁぁぁ! 邪魔っ!」

「双掌破ぁっ!」

フランたちがギアをさらに上げ、新しい騎士型を撃破する。

なるほど、斬りつけた時の感触からして違っていたな。フランは完全に一刀両断するつもりだったのだろうが、肩口から鳩尾の辺りまでしか刃が入らなかった。

核部分を切り裂けたので倒せたが……。

勿論、継戦を優先して、本気の一撃ではなかった。だが、フランが目算を僅かに誤るほどに相手が強いということだ。

脅威度でいえばDクラスだろう。

「雑魚ばかりで飽き飽きだったのよ! 燃えてきたわ!」

「ん!」

それでも、100人の心が折れるようなことはない。ヒルトとフランが気合を入れ直し、強敵を迎え撃つのだった。