軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

795 尾行おかわり

冒険者ギルドで教えてもらった宿へと向かう途中。

フランは足を止めていた。

『この町じゃ、子供を尾行するのが流行ってるのか?』

(三人。けっこう大きい?)

『多分、竜人だ。明らかに悪意があるぞ』

(どうする?)

『宿まで付いてこられても面倒だし、いつも通り釣り上げてみるか』

(わかった)

フランが急に道を逸れ、路地裏に入り込む。これを不審に思って尾行を止めるなら、ウルシによる逆尾行でとりあえずは済ませてやるんだが――。

『追ってきたな』

(足音おっきい。素人?)

『まあ、斥候系の技能はなさそうだ』

町のチンピラ程度でも、気配を殺すスキルの1つや2つは持ってるもんだが、こいつらにはその手のスキルを使う気配が全くなかった。

『まあ、迎え撃ってみれば分かるか』

「ん」

数秒後。

「おい! そこの小娘!」

「なに?」

「お前、肉を持ってるな!」

「し、知ってるんだ! それを俺たちに渡せ!」

「……お金は払えるの?」

一応聞いてみる。交渉下手ってだけの可能性もゼロじゃないからね。

「金? そんなもんあるか!」

「いいから肉を出せよ! あんな量の肉……。冒険者ごときには勿体ない!」

「そうだ! あれは俺たち竜人にこそ与えられるべきだ! 肉もそう言っているに違いない!」

「うむ! あれを竜人王様に献上すれば、我らもきっと近衛にしてもらえるぞ!」

「だからとっとと肉を出せ! 小娘!」

只の馬鹿でした。しかし、竜人王? 竜人の国なんてもうないから、王なんかいないはずだが?

「竜人王? トリスメギストスのこと?」

「馬鹿を言うな! あんな愚物、王でも何でもないわ!」

「そうだそうだ!」

違っていた。つまり、竜人の中に王を名乗る奴がいて、そいつの配下?

『とりあえずボコってから話を聞くか』

「ん」

この竜人たち、メッチャ弱いしな。種の特性として、ステータスはそれなりだ。だが、スキルがほとんどない。

能力に胡坐をかいて、修練をしていないんだろう。パワーレベリングをした、貴族のボンボンと同じような鑑定結果である。

見た感じ根性もなさそうだから、地道な努力なんてできそうもないしね。

それでいて、自分たちがフランに負けるなんて微塵も考えていないんだから、程度が知れるな。

『手加減しろよ』

「だいじょぶ、殺しはしない」

フランも少し苛立っているようだ。

ギルドの宴会で楽しい気分だったのに、水を差されたからだろう。

『死ななければ、俺が治すから』

「ん」

三分後。

「す、すいませんでしたぁ!」

「ちょっと粋がってただけなんですぅ!」

「ゆ、許して下さい……」

フランは俺を抜くどころか、まともな攻撃さえしていない。ただ睨んで、殺気をぶつけただけである。

それだけで竜人たちは尻尾を足の間に挟んで、プルプルと震えて命乞いを始めていた。

「お前らは竜人王の部下?」

「えーっと、部下というか……」

「はっきり言う」

「はい! 部下にしてもらいたいなーって思ってるだけで、全然部下じゃありません!」

「会ったこともないです!」

詳しく話を聞いてみると、こいつらはタダのチンピラでしかなかった。

このゴルディシア大陸で、竜人というのは特別に扱われる。

騎士や兵士の場合、竜人に敬意を払うように言われているので、多少の横柄な態度であれば見逃すことが多いらしい。

冒険者の場合、竜人とイザコザを起こすと色々と面倒なので、やはり多少のヤンチャ程度であれば目を瞑るのだろう。

その結果、種族全体への敬意や畏怖を個人へのものと勘違いしてしまう者も多いようだった。

「竜人は、東西南北の居留地に住んで、抗魔を狩ってるんじゃないの?」

「いやー、大昔の奴らの罪を償えって言われてもねぇ……」

「そうそう。戦士になるためとか言って、頭のおかしい量の訓練させられるし」

「面白おかしく暮らして何が悪いんだっつーの!」

このチンピラ竜人たちは戦士の訓練に嫌気がさして、下級抗魔さえ狩っていればギリギリ生活できるノクタに逃げてきたらしい。

先祖の罪を、子孫が償う必要はないという点では、同感である。ある意味、こいつらも被害者だろう。

犯罪に手を染めていなければな。

「竜人王の居場所は?」

「さ、さあ?」

「お、俺たちも噂話を聞いただけなんで……」

竜人王を名乗る者がどこかにいることは確かだが、こいつらは全く関係ないらしい。

ただ、そいつに取り入って部下になれば、美味しい思いができるに違いないと短絡的に考えていただけな様だった。

その手土産が、フランから奪った肉というわけだ。

こいつら馬鹿過ぎだろう。フランもさすがに殺す気が失せたらしい。殺気が消え去り、代わりに呆れたような雰囲気が漂っている。

(師匠、どうしよう)

『うーん、冒険者ギルドに丸投げしちまうのがいいんじゃないか? 肉を売ったおかげで、今なら多少の無理は聞いてもらえるだろうし』

(わかった。そうする)

しかし、竜人王か。どう考えても、きな臭い。できるだけ関わり合いになりたくはないもんだな。