軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

794 肉と言えば酒。それが冒険者。

大量の魔獣の解体が終わった後。

「わはははは! こいつは美味ぇ!」

「これで綺麗なねーちゃんがいれば最高なんだがな!」

「ちげーねぇ!」

まだ血の臭いの残る訓練場では、冒険者たちによる酒盛りが行われていた。こんな場所でも問題なく楽しめるのは、さすがである。

冒険者ギルドが、肉を振る舞った訳ではない。勿論、ギルドに渡した肉を勝手に食べているわけでもない。

フランが、冒険者たちのために提供した魔獣肉である。

この大陸で活動する以上、冒険者に顔と恩を売っておいても損はない。

そこで、すでに解体済みだった肉を取り出し、その場でバーベキューをして振る舞うことにしたのだ。

まあ、冒険者たちが肉を見る目が熱狂的過ぎて、暴動が起こりやしないかと心配になったからっていうのもあるけどさ。

実際、土魔術で作った竈の上に大きな鉄板を置き、火魔術で焼いた肉を冒険者に振る舞い始めたフランを見ても、サブマスは何も言わなかった。

むしろホッとしていただろう。彼も、冒険者たちの状態を見て、暴れ出さないか心配していたに違いない。

100人を超える冒険者が満腹になるほどの量はないが、全員の酒の肴になる程度の量はある。

冒険者たちがどこからともなく酒を持ってきてからは、完全に宴会状態だった。

「嬢ちゃん! 飲んでるかぁ!」

「のんでない」

「がははは! まだ早いか! じゃあ、そっちの狼はどうだ?」

「オフ」

「なんだなんだ? 俺の酒が飲めねぇってのかぁ!」

「ガ、ガボボ」

あのウルシが無理やり酒を飲まされている。本気で嫌なら振り解けるだろうが、今の雰囲気を壊すことを躊躇したんだろう。空気の読める狼である。

それとも、実は酒が飲みたかっただけか?

零さずに飲んでいるし。

そもそも、ウルシに酒を飲ませたことってあったっけ? 俺たちと一緒にいると、酒なんか飲まんし……。

いや、今までの宴会で飲んだことはあるはずだ。

「ゲフッ」

「ぐははは! いい飲みっぷりだぁ! もっと飲め飲め!」

「オン!」

あれで意外といけるクチらしい。今後、ねだられたりせんよな?

すると、誰ともなく、冒険者たちが歌い始めた。

「俺たちゃ冒険者~♪ 黄金の冒険者~♪」

「どんな敵にも怯みはしない!」

「ドラゴン、デーモンどんとこい!」

「抗魔の群れもなんのその!」

「酒と仲間と金のため! 戦う冒険者~♪」

調子外れの酷い歌だが、全員で歌うと妙に名曲っぽく聞こえるから不思議だ。

「ははは! うるさくて済まんな! これはこの大陸の冒険者に伝わる歌なんだよ」

「昔の歌なの?」

「おう! そうだぜ」

上機嫌に教えてくれたのは、まとめ役のコゾンだった。

嘘か真か、この大陸が結界に覆われた直後、いち早く上陸して拠点を作り上げた大昔の冒険者たちが作った歌らしい。

今の冒険者以上の訳ありな荒くれ者たちが、酒の勢いで適当に歌ったものだ。粗野で野蛮で無教養。それでいて誰もが覚えやすい。そんな歌になるのは仕方がなかった。

また、そんな歌でなくては、長い年月残ることはなかっただろう。

「負けるなー♪ 進めー♪ 意地見せろー♪」

「立ち上がれ! さあ、ここからが見せ場だ!」

「お前の全力見せてみろ!」

「俺たちが付いてるぞ!」

一応、一番は何でもやってやるぞという無謀さをたたえる歌。二番は、厳しくても仲間と一緒に戦おうという励ましの歌であるようだ。

「俺たちゃ冒険者~♪」

「「「黄金の冒険者~♪」」」

全員での大合唱である。いつの間にか、フランも一緒に歌っていた。「冒険者~♪」の部分さえ覚えれば、男たちの輪に入れるからな。

フランはいつも通りの無表情でありながら、楽しそうだ。こういういかにも冒険者というノリが、実は大好きだからな。

一時間後。

さすがに長時間の酒盛りは許されなかったのでお開きとなる。

だが、フランも冒険者たちも楽しそうだった。

煙と肉の焼けるにおいが充満した訓練場は、冒険者たちが協力して綺麗にしてくれる。

水魔術に風魔術。あとは浄化や消臭の魔術を分担して使って、あっと言う間に元の土臭い訓練場に戻していった。

肉を食って連帯感が生まれたおかげかは分からないが、驚くほど息の合った掃除だったな。

『もう夕方か』

「オン」

ギルドのカウンター前から外を覗くと、空が赤と黒のコントラストに彩られていた。

もう1時間もしないで、完全に夜の帳が降りるだろう。

『今日はノクタで一泊した方がよさそうだな』

「……ん」

早く出発したい気持ちはあるんだろうが、この大陸でしっかりと睡眠がとれることの重要性は理解できているらしい。

多少躊躇いつつも、フランが頷く。

ギルドでおすすめの宿を尋ねると、町の中心付近にある高級宿を薦めてもらった。多少値は張るが、静かで料理も美味しいらしい。

騎士や貴族向けの宿であるそうだ。

『ギルドはどうだった?』

「騒がしい」

そう言いつつも、フランは「冒険者~」と歌っている。ウルシは「オオン~」と伴奏担当だ。余程楽しかったんだろう。

次も、楽しい宴会に交ざれるといいな。