軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

792 リプレア

青猫族の2人は、意識と尻尾を刈り取った状態で袋に詰めて、冒険者ギルドに引き渡しておいた。

奴らの身分が冒険者だったからである。ご丁寧に冒険者カードを持っていた。身分証を持ったまま犯行に及ぶとは、余程フランを舐めていたんだろうな。

しかも、それなりに有名なコンビであったそうだ。まあ、悪い意味でだが。

それを1人で叩きのめしたフランは、ギルドマスターに大いに気に入られてしまった。

青猫族の処理はサブマスターに任せて、執務室に連れ込まれてしまったのだ。

「私は、ノクタのギルドマスターのリプレアよぅ? よろしく。ふふふ」

「フラン」

「黒雷姫ちゃんよねぇ? 会えて嬉しいわ!」

というか、この女の人あれだろ?

強い人間が大好きな変態って言われてた人のはずだ。

見た目は、色っぽい美女魔術師である。装備を見れば、後衛だと分かった。

頭には黒いトンガリ魔女帽子をかぶり、黒マントを羽織っている。その下には白いブラウスと黒いタイトスカートを着込んでいるのだが、妙に薄手で体のラインが強調されていた。

なんだろう。狙ってやっているのか?

巨乳が売りのグラビアアイドルのような体型に、グロスで潤った唇。妙に熱っぽい垂れ目と、泣き黒子。俺に人の体があったら、組んだ足とタイトスカートの隙間が気になって仕方がなかっただろう。

この豊満さで母性を全く感じさせず、色っぽさとか艶っぽさしか感じさせないあたりが、この人が変態って言われる原因なのかもしれない。

「あの二人は、あれでランクC冒険者の中でも暗殺能力に優れたコンビだったのよぉ? それを恐怖で泣き叫ぶくらいボッコボコにしちゃうなんてぇ。すごいわ!」

「ん……」

「うふふふ。ちゃぁんと、あの二人とそのお仲間には厳しいお仕置きしておくから、安心してねぇ?」

その熱い視線を受けて、フランが据わりが悪そうな表情で身じろぎした。

「どうしたのぉ?」

「な、なんでもない」

「そぉ?」

「ん……」

どうも、フランはリプレアが苦手であるようだ。その舐め回すような視線を前にして、居心地が悪そうにしている。

こんな反応、初めてなんじゃないか?

初対面で悪意を向けてきたものや、敵意のある対応をしてくる者を相手にして、喧嘩腰であったり無視することはあった。

だが、ねっとりした視線を投げかけられ、戸惑うというのは今までにない経験なのだろう。

軽く眉をしかめて、リプレアと視線を合わせないようにしていた。

「あはん」

「!」

リプレアがわざとらしく漏らした吐息に反応して、ビクリと体を震わせるフラン。

これは、早く話を聞いて、ギルドから脱出した方が良さそうだ。

「き、聞きたいことがある」

「いいわよぉ。何でも聞いてね?」

リプレアのその言葉は、偽りではなかった。こちらの質問に対し、マジでなんでも答えてくれるのだ。

違法町センディアの場所や、その町に存在する犯罪組織の情報。それどころか、怪しい人物の名前まで教えてくれた。

それ以外にも、最近の大陸の動静なども教えてくれる。

妙にサービスがいいので少々不安になったが、本気でフランを気に入っているだけなようだった。

あと、腕のいい冒険者にできるだけサービスをして、この大陸で気持ち良く活動してもらおうという目的もあるようだ。

「最近、目立つのは、やっぱりドワーフねぇ」

ドワーフたちが破竹の勢いで進軍しているという話や、魔族の軍勢が活躍している話など、興味深い情報も多い。

その中でも特に俺たちが興味を引かれたのは、神剣の使い手が北の港に到着したという話であった。

「神剣!」

「北の大陸からね。それも2振りもよぉ?」

「神剣が2つ?」

「ええ」

北の大陸を二分するという二つの大国。その国から、騎士団がそれぞれゴルディシア大陸へとやってきたらしい。

この2ヶ国の仲は険悪だが、互いに戦争を避けたがっている。両国が神剣を保有しているせいで、全面戦争になれば凄まじい被害が出るからだろう。

ブローディン大陸の東半分を支配するのが、聖国シラード。神剣アルファを所持し、正義と慈愛を標榜する軍事大国だ。

シラードと長年争う西の大国が、ハガネ将国。神剣ベルセルクを所持する、謎に包まれた排他的な国である。

どちらも世界有数の国土を誇り、軍事力でも上位に入るそうだ。それ故、両国ともに衰退を恐れ、神剣の不使用を暗黙の了解としているという。

神剣を使わない小競り合いは時折あるし、互いに罵り合うことはある。しかし、戦場に神剣を持ち出すことは、どちらの国も禁止にしているらしかった。

地球で言う、核みたいな扱いなのだろう。

「その国から、神剣が持ち出されたの?」

「10年に1度くらいあることよぉ?」

ゴルディシアの責務のために神剣を使うというのは、両国が世界中から求められていることだ。

無視することも許される国力はあるが、それをしては「神剣を所持しているくせに、独占して使おうともしないケチで狭量な国」と言われてしまうだろう。

誇りと実利。両面から考えても、他の国々からの要請には応えたい。特にシラードは体面を気にするため、積極的であるそうだ。

そこで問題になるのが、同じ大陸にあるもう一方の国の存在だった。自分たちが神剣をゴルディシアに持ち出せば、相手が攻めてくるに決まっている。

両者ともにそう考え、ゴルディシアの責務に神剣を使うことは長い間無理であった。しかし、ある時に両国は協定を結び、同時に神剣を持ち出すことに合意する。

どちらも神剣がなければ、一方的に攻められることもない。ゴルディシア大陸では政治的な諍いを持ち込むことは禁忌とされているので、そこで相手に襲われる心配も低い。

結果として10年に1度、ブローディン大陸の神剣2振りが同時にゴルディシア大陸に持ち込まれるようになったという。

「じゃあ、アルファとベルセルクがこの大陸にある?」

「そうよぉ」

「おお……」

機会があれば見てみたいところだ。無関係ではないしな。

それにしても、さすがゴルディシア大陸。

俺たちが聞いただけでも、大地剣・ガイア、煌炎剣・イグニス、始神剣・アルファ、狂神剣・ベルセルクの4振りが集まっている。

しかも、ドワーフの女王オーファルヴに、アルファ、ベルセルクの所持者と、7賢者の内3人がやってきているのだ。

これにランクS冒険者が2人とトリスメギストスも加われば、人外魔境と呼ばれるに相応しい豪華すぎる面子であった。