軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

779 騎士型撃破

フランたちは速度を落とすことなく、抗魔の群れをかき分けて進み続けていた。

指揮官個体である騎士型まではもうすぐだ。剣士型に対して倍近い身長があるので、多少離れた場所からでもその姿が確認できた。

それに、気配も違う。魔力も強いし、邪気も感じられる。邪神の欠片を素材に生み出された深淵喰らいは、当然ながら邪気を発している。

この大陸の結界内に踏み込んだ時から、常に微量の邪気が感じられるのだ。

そんな深淵喰らいから生み出される抗魔も、当然ながら邪気を保持していた。騎士型にもなると、ミノタウロスや上位オークに匹敵するレベルの邪気を纏っている。

「もうちょっとで指揮官個体」

「へい!」

このままでは、フランたちが奴を倒せるかどうかは微妙なところだ。実力が不足しているわけではない。フランなら瞬殺だろう。

そうではなく、反対側からヒルトたちが迫っていたのだ。

向こうもこちらに気付いているらしく、騎士型へと突き進む速度が僅かに上がったのが分かる。

『このままだと、ヒルトたちに持ってかれそうだな。どうする? 俺かフランが一気に仕留めちまうか?』

周辺の魔力を探ってみたが、生きている人間はいない。だろうとは思っていたが、バシャールの部隊は既に全滅したのだろう。

『バシャールの奴らはいない』

(そう……)

心底残念に思っているフランとは裏腹に、俺は安堵の思いが強かった。バシャールの人間と対面したって、ろくなことにならなかったのは確かだろうしな。

ただ、この状況だったら大技を放っても許されるはずだ。俺のカンナカムイで、ここから騎士型を消滅させたっていい。

しかし、フランはその行動を選択しなかった。この部隊で勝つ。そう考えたのだろう。

「ディギンズ!」

「へい!」

「私が道を作るから、騎士型はお前がやる」

「うす! 任せてくだせぇ!」

敵のボスに1人で突っ込めと言われているのに、ディギンズは即座に頷いた。

何も考えずに舎弟感を出しているわけではなく、フランを信頼しているのが分かった。短い間に、ディギンズの信頼を勝ち取ったようだ。

「みんなは道を作る!」

「「「はい!」」」

「ソード・ソニック!」

『ゲイル・ハザード!』

フランによって放たれた衝撃波が、途上にいた30体ほどの抗魔を薙ぎ倒しながら飛んでいく。

次いで俺が放った風魔術が抗魔たちを吹き飛ばし、フランがこじ開けた隙間をさらに広げた。

さらに冒険者たちの遠距離攻撃が放たれ、騎士型まで30メートルほどの細い道ができ上がる。

それを見たディギンズが咆えた。

「うるあぁぁ! 覚醒!」

ここでとっておきを発動だ。

ディギンズの種族が黄熊から、黄玉熊に変化した。

外見として最も大きい変化は、その毛の色だろう。元々は、派手な黄色だったんだが、そこに硬質的な輝きが加わった。

その種族名通り、トパーズのような美しい体毛である。

体の大きさなどは、ほとんど変化はない。多少パンプアップされた程度だろう。

しかし、確実にパワーアップしている。

「ぐらぁぁぁ!」

強化された筋力を推進力に変え、凄まじい速度で突き進んでいくディギンズ。あっと言う間に騎士型との距離が詰まっていった。

道中で邪魔する抗魔は、目にも留まらぬ速さで振られた金棒によって粉砕されていく。

腕力の強化も相当だろう。棍棒が唸るたびに、数体の抗魔が吹き飛んでいた。

さらに驚くのはその防御力だろう。抗魔の武器が何度も当たっているはずなんだが、一切傷ついた様子がない。

どうやら、あの毛が見た目以上に硬いらしかった。

騎士型はもうすぐそこだ。

ただ、騎士型の真後ろから、フォボス君が迫ってきているのが見えた。

向こうもヒルトが全てを片付けるのではなく、弟子に見せ場を作ったのだろう。

さすがその才能を見込まれている、デミトリス流のホープ。超前傾姿勢のまま、抗魔の間を縫うように駆けてくる。地を這う蛇のように、滑らかな動きであった。

ディギンズもフォボス君の気配に気付いたようだ。互いに、残りは10メートル程度。どちらが先に辿り着くかは、微妙なタイミングである。

それを悟ったのだろう。ディギンズは決意の表情で、左手を大きく振りかぶった。

「ごああぁぁぁぁ!」

ディギンズの咆哮が轟き、その左腕が大地目がけて振り下ろされる。

ドゴォォォン!

突き立てられた爪が大地を穿ち、衝撃が土を舞い上がらせた。

当然ながら、それがこの攻撃の目的ではない。一見すると、地面を無駄に攻撃しただけに見える。

だが、魔力を感知できる者ならば、理解できるはずだ。大地の下を走る、強烈な魔力の波に。

ディギンズの拳が振り下ろされた場所を起点にして、騎士型に向かって濃密な魔力が放たれていたのである。

そして、騎士型の足下が大きく陥没した。

「リイィォオォ?」

歪な鈴を強く鳴らしたかのような不協和音が、騎士型から発せられる。あれが奴の鳴き声なのか? 生物の鳴き声とは全く違った、不可思議な声であった。

悲鳴のような音を上げる騎士型が、その穴に腹まで呑み込まれる。

騎士型は咄嗟に手を突っ張って落下を阻止するが、ディギンズの攻撃はまだ続いていた。

穴の左右の大地が壁のように屹立すると、そのまま騎士型を押し潰すように挟み込んだのである。

この壁は、ただの土壁ではない。ディギンズの魔力が大量に練り込まれているのだ。それ故、騎士型の外殻に負けることもなかった。

獲物に食らい付くトラバサミのように、大地が騎士型に襲い掛かる。

ギリィイン!

壁に勢いよく挟まれた騎士型は、金属同士がぶつかったような甲高い音とともに砕け散っていった。

周囲に騎士型の破片がばら撒かれ、溶けるように消えていく。

「よっしゃぁぁ! やりましたぜ黒雷姫さん!」

「あーっ! 先越されたぁ! ヒルト様に怒られるぅぅ!」