軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

778 南組吶喊

フランたち南組の冒険者たちが自らを鼓舞する雄叫びを上げながら、抗魔の群れに突入する。

彼らの先頭はフラン、殿はウルシだ。

「はぁぁ! インパクト・スラッシュ!」

フランが剣聖技を放って、先頭にいた抗魔たちを盛大に蹴散らす。

以前は、技後硬直によって大きな隙のできる技であった。数秒は身動きが取れなかっただろう。戦場では致命的と言える隙だ。

その隙をなくすために、念動で無理やり体を動かす方法も考案したんだが、フランの体に大きな負担がかかるという欠点があった。

筋を痛める程度ならまだましで、骨折や肉離れも当たり前だったのだ。その痛みをヒールで癒しながら、無理やり使っている感じだった。

しかし、今のフランは違う。

俺の助けなどなくとも、ほとんど隙が無い。

技の動きに逆らわずに衝撃を受け流しつつ、負荷のかかっていない部分から体を動かし始めることで、フォロースルー中に次の行動に移っているのだ。

これは、フランが剣聖技を使いこなせている証拠であった。

浮遊島で骸骨騎士と戦った時もこの技を使ったが、技後硬直をキャンセルするために俺の力が必要だったうえ、腕の骨が折れていた。

与えられた剣聖技を使いこなせておらず、まだ技に振り回されていたのだ。

しかし、今のフランは独力で使いこなしてみせた。

『はっはぁ! いいぞフラン!』

「ん!」

自ら空けた穴に飛び込んだフランはそのまま軽快に飛び回りながら、当たるを幸いに抗魔たちを斬り捨てていく。

ただ、侵攻速度はさほどではない。後続の冒険者たちを置き去りにしないように、調整しながら戦っているからだ。

その冒険者たちも、しっかりと抗魔と戦えている。正面をフランが受け持つことで、左右だけに集中できているからだろう。

「どるあぁぁぁぁ! 黒雷姫さんにつづけぇ!」

「右を頼む!」

「了解! ウィンド・バレット!」

ディギンズは全く問題ない。フランと同じように覚醒前だが、危なげなく抗魔たちをぶっ飛ばしている。

武器は巨大な鉄の棍棒と拳だ。普通なら両手で持たなくてはいけないはずの鉄塊を、片手で振り回しつつ、空いている左手でも抗魔を倒している。

冒険者たちもしっかり連携しながら、堅実に戦っていた。

そんな彼らの背後を守るのはウルシだ。攻撃よりも、冒険者の支援をメインに考えて動いているのだろう。彼らの死角に入ろうとする抗魔を倒しながら、闇魔術で援護を続けている。

最初はウルシに背中を預けることに不安げな様子の冒険者たちだったが、抗魔と戦う内にその実力が理解できたらしい。

すぐに背後を気にせずに戦うようになっていた。

前にだけ集中できるのであれば、ランクC冒険者が下級抗魔に後れを取ることはない。

この一団が周りを抗魔に囲まれながら脱落者も出さずに戦い続けられているのは、ウルシの働きが大きかった。

『まだ先は長いな』

「ん」

冒険者たちの足に合わせているので、一気に突っ走ることはできない。そのせいで、倒しても倒しても周囲から抗魔が寄ってきてしまっていた。

フランにとっては苦ではないんだが、冒険者たちにとってはそれなりにキツイだろう。フランの強さを見せつけられて士気は高いが、それで無理をすれば、冒険者たちに被害が出るかもしれなかった。

(師匠、順番を入れ替えようと思う)

『どうするつもりだ?』

(一番前はディギンズ。あれなら任せられる。私はウルシと一緒に左右の援護)

『悪くないんじゃないか?』

先頭を走るのがフランだろうがディギンズだろうが、一行の速度はそれほど変わりはしないだろう。

だったら、左右の援護をより強化する方が、冒険者たちの消耗が抑えられる。

「ディギンズ!」

「へい! なんでやしょう!」

「先頭交代。私は後ろからみんなを助ける」

「わかりやした! その大役! 見事こなしてみせやしょう!」

「お願い」

「どりゃあああ!」

さすがランクB冒険者。一気にフランと場所を入れ替わると、同じように抗魔たちを薙ぎ倒し始めた。

これでまだ覚醒が残っているわけだし、先頭はこの熊男で全く問題なさそうだ。

「ウルシは右の援護。私が左を見る」

「オン!」

突き進む速度は変わらないが、安定性は抜群に増した。何せ回復はバンバン飛ぶし、強化魔術も途切れない。それでいて、背後の守りは鉄壁だ。

「ありがとうございます!」

「っていうか、回復まで……!」

「さすが、ディギンズさんが舎弟化するだけある!」

軽口を叩く余裕も出てきたらしい。

『この先に大きな魔力反応がある。多分、指揮官個体だ』

「この先に指揮官個体。でも、反対側から、ヒルトたちがきてる」

「まじっすか?」

「ん。北の奴らに後れはとれない」

「当然ですな!」

「このままだと、いいところ持ってかれるかもしれない。みんな、気合入れる」

「「「おおおお!」」」

フランがそう告げると、冒険者たちの顔色が変わった。

やはり、手柄を求める気持ちはあるのだろう。あと、ポイントにも反映されるだろうしね。

ただ、ヒルトたち北組も、もう少しで指揮官個体に迫る位置だ。俺たちとほとんど同じ距離だろう。

さて、どっちが先に手柄を上げるかな?