軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

780 東への救援の前に

騎士型を失ったことで、抗魔たちは組織的な動きができなくなり、バラバラに戦い始めていた。

剣士型数体で連携することはあっても、それ以上で力を合わせる様子はない。

『烏合の衆だな』

(ん。でも、ちょっと面倒かも)

『まあな』

ドワーフたちにとっては援護になっただろう。しかし、この場の冒険者たちにとっては少々微妙であった。

今までは戦術的に攻めてきていた抗魔が、統制を失ったことでメチャクチャに襲い掛かってくるようになってしまったのだ。

戦術もなく、サッカーボールに群がる小学校低学年の子供たちのように、フランたちに向かってひたすらに群がってくる。

攻撃の激しさや密度に関しては、今まで以上であった。

フランであれば問題ないんだが、他の冒険者たちにとっては少々厄介な状況だ。怪我をしている者もいる。騎士型を守るために守勢で居てくれた方が、戦い易かったかもしれない。

『騎士型を倒したのは失敗だったかもしれんな』

(ん……)

俺たちとしてもいい勉強になった。指揮をしている場合は、自分以外の者のことも考えて決断せねばならないってことだろう。

「フラン。そちらに欠員はない?」

「ヒルト。こっちはだいじょぶ」

ヒルトたち北組も合流してくる。

「この後どうする? 一度、オーファルヴたちのとこに戻る?」

「私はこのまま東へ抜けるのがいいと思うわ。西のドワーフたちは私たちの助力がなくても問題ないでしょうし。東がどうなっているか気になるもの」

「なるほど」

ということで、俺たちは抗魔の群れを突っ切って東へと向かうことにした。東で戦っている部隊の救援が目的だ。

ただ、その前に、抗魔の数を少し削っておきたいのも確かである。もう生き残りはいないことが分かったし、ここで少々暴れても構わないだろう。

「ちょっと広めの攻撃するから、集まって」

「ああ、それがいいかもしれないわね。皆、フランの周りに集まりなさい!」

「ディギンズたちも」

「へい!」

ディギンズはすでに覚醒状態ではない。騎士型を倒した技は、フランにとっての黒雷招来のような技だったらしい。

騎士型を倒した直後には、元の姿に戻ってしまっていた。まあ、雑魚相手にはそれでも問題ないけどね。

「エカト・ケラウノス!」

『サンダー・ゾーンからの、エカト・ケラウノス多重発動!』

周囲に雷鳴魔術を防ぐ結界を展開した後、広範囲雷鳴魔術を連続で発動させる。

周囲に数百条もの雷が降り注ぎ、抗魔たちを砕いていった。直撃せずとも、大地を走る雷撃が抗魔にダメージを与えるのだ。

「うぇぇぇ?!」

「す、すげぇ!」

「ひゃー!」

冒険者たちだけではなく、フォボス君も悲鳴を上げている。というか、ヒルトとコルベルト以外は、声を上げてしまっていた。

雷の雨が大地を穿ち、抗魔たちを滅ぼしていく地獄のような光景は、相当な衝撃があったらしい。

腹にまで響く轟音と、網膜を焼く閃光も合わさり、半ばパニック状態だ。ディギンズが怯える姿は、全く可愛くないな。

それでも、フランが作り出した光景だということは覚えているらしく、錯乱する者はさすがに現れなかった。

「さすが黒雷姫ね」

「千匹くらいはやったはず」

「……はぁ。これでランクBは詐欺よね」

「そうですね。フランは強すぎる」

「あ、あなたもそう思う?」

「少なくとも、フランの前で同ランク面はできませんよ」

ヒルトとコルベルトが頷き合っている。まあ、ランク詐欺であることは認めよう。

だが、フランをだしに見つめ合うんじゃない! ヒルト、ここは戦場だぞ! その頬の赤みはなんだ! 絶対に、戦闘の興奮とか恐怖のせいじゃないよね?

いや、待てよ。ヒルトに恩を売りたいなら、むしろコルベルトとの仲が進展するように協力してやった方がいいだろう。ならばこれでよし! もっとイチャイチャするがいい!

く、悔しくなんかねーし!

(師匠?)

『……すまん。ちょっと興奮した』

(ん。久々に敵をたくさん倒した。私もちょっと楽しかった)

『あー、そうだね』

フランはこのままでいいぞ。色恋に興味を持つのはもっと大人になってからでいい。

「じゃあ、東に向かう。また、ディギンズが先頭」

「うす!」

「フォボス、あなたも前に出なさい」

「は、はい!」

フォボス君が妙にやる気だ。さっきディギンズに後れを取ったから、挽回したいのかもしれない。

ディギンズとヒルトを、チラチラと横目で見ている。ディギンズに負けたくない気持ち半分、ヒルトに怒られたくない気持ち半分といったところだろう。

ただ、そんな精神状態でディギンズに勝てるかな? 相手はゴルディシアで長年戦っているランクB冒険者だぞ?

そう思っていたら、案の定フォボス君はヒルトに叱られていた。

道中、動きが悪いフォボス君を、ヒルトが叱咤する。

「フォボス! 集中しなさい! あなたが失敗すれば、仲間に負担がかかるのですよ!」

「は、はいぃ!」

「それに、格上の相手に張り合ってどうするのです。ディギンズ殿は、ランクB冒険者なのですよ?」

「ひゃいっ!」

空回りするフォボス君と、フランにいいところを見せようと奮起するディギンズを先頭に、東へと進む冒険者たち。

すると、抗魔との激しい戦闘を行う軍勢が見えてきた。その数は500はいないだろう。200~300くらいかな? しかし、その軍勢には一つの特徴があった。

(あれ、全員竜人?)

『たぶんそうだ。1人1人が強いし、外見もそれっぽい』

竜のような瞳に、耳の上辺りから後ろへ延びる鋭い角。腕などを覆う鱗。その姿は、以前出会った半邪竜人のフレデリックにそっくりであった。

いや、それよりもさらに竜っぽい。あれが竜人の姿なのだろう。

前衛として戦っている者たちは、ここから見る限り全員が竜人であった。