軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

766 抗魔カード

管理委員会支部を後にした俺たちは、その足で冒険者ギルドにやってきていた。

場所は港の端にある巨大な建物である。宿泊施設も併設されているらしいので、これだけの大きさが必要なのだろう。冒険者の管理を一手に引き受けているのだ。

ウィリアム曰く「兵士の多い港中央部と違って、荒くれ者が揃っている。気を付けろよ」とのことだった。

特にこの大陸にいる冒険者は、強さを求める戦闘狂だったり、騒ぎを起こして他に居づらくなったりと、冒険者の中でも訳ありの者が多い。

そんな者が集まる場所が、お上品なわけがなかった。

「ぎゃはははは!」

「かんぱーい!」

「うんだおらぁ!」

「やんのかごらぁ!」

併設された酒場からの喧騒で、ギルド内がうるさくて仕方がない。しかし、カステルのことを考えてずっと難しい顔をしていたフランの顔に、微かに笑みが浮かんでいた。

フランもすっかり冒険者だ。綺麗で清潔な港よりも、猥雑で荒々しいギルドの方が落ち着くらしい。

「ああ? なんでこんなところにガキがいるんだ?」

「おい。どういうことだ? 俺、酔っ払いすぎたかな?」

ギルドカウンターの前にいた冒険者たちが、フランの姿を見て戸惑った表情をしている。目を擦っている者もいた。

絡んでくるというよりは、ゴルディシア大陸の冒険者ギルドにどうしてこんな子供がいるのか、理解できないといった顔だ。

他の大陸なら、近所の冒険者志望の子供が入り込むことはあり得る。だが、一般人がほとんど住んでいないこの大陸では、そんなことあるはずがなかった。

それに、フランの格好は明らかに冒険者だ。少なくとも、お遊びではないと理解できるのだろう。

未だに困惑した様子の冒険者たちの前を通り抜けたフランは、カウンターに向かった。

「ねぇ」

「え? あ、いらっしゃいませ!」

受付嬢が、慌てて対応してくれる。だが、冒険者たちと同じように困惑顔だ。

「ぼ、冒険者さん、ですよね?」

「ん」

やはり、フランくらいの子供は珍しいんだろう。

「そうですか。では、抗魔狩りに? お1人でこの大陸にきたのですか?」

「国の依頼を受けてきたけど、最初に手伝う以外は自由にしてていいって言われてるから」

「え? そんな好条件の国、あったかしら?」

確かに、冒険者に対して都合が良すぎる契約だろう。ベリオス王国以外では珍しいらしい。

「それで、ここで依頼を受けられるって聞いた」

「はい。そうです。村や砦への救援依頼が基本となりますね。あとは、各国の作戦行動への参加や、王侯貴族の依頼なども多いです」

「国が、ここの冒険者を雇うの?」

「結構多いですよ。長期の活動のせいで兵力が低下したり、雇っていた冒険者と喧嘩別れしてしまったり」

「なるほど。でも、国に雇われるのはゴメン」

国に雇われたくないという言葉を聞いても、受付嬢さんに驚きはない。冒険者の中にはそういったやつも多いんだろう。

「だとすると、抗魔を狩りつつ、村などの救援が主な仕事になりますね」

薬草などは抗魔が食いつくしてしまう為、採取依頼などはほぼないようだ。ただ、納品依頼がないわけではない。

魔獣ではなく、普通の動物を狩って食料を入手すれば高額で買い取ってくれるらしい。

勿論、抗魔も動物を食らうが、人間がいる場合はそちらを狙う。大陸内、特に結界に近い場所では普通に動物が生息しているそうだ。

「依頼を受けられない場合でも、抗魔カードをお作りしておくことをお勧めします」

「抗魔カード? 冒険者カードみたいな物?」

「そうですね。それを作っておけば、倒した抗魔を検知して、どれだけ抗魔狩りに貢献したのか自動で集計してくれるんです」

「おー、それはすごい。ぜひほしい」

「分かりました。お作り――」

「ぎゃはははは! そんなガキに抗魔カードなんざ必要ねーだろ!」

「どうせすぐにおっ死んじまうよ!」

「む」

フランはカードの申請をしようとしていたら、酔っ払い冒険者が絡んできた。かなり泥酔しているようだ。足取りが怪しい。

わざわざ酒場からカウンター前まで歩いてきた泥酔冒険者たちが、赤ら顔をニヤニヤとさせながらフランを見下ろす。

今にもフランに手を伸ばしてきそうな様子だ。受付の女の子は、それをハラハラした様子で見ている。

当のフランといえば……。どう見ても喜んでいた。少しイライラしていたところに、丁度いいストレス発散相手がきてくれたわけだしな。

「ああ? なにわらってやがるっ!」

勝手に怒り出す冒険者の様子を見て、フランの口がさらに綻ぶ。

仕方ない。ここまで来れば喧嘩になるのは避けられんだろうし、ここはフランのストレス解消に付き合ってもらいましょう。大丈夫、後遺症は残さないから。

「ちょっと、やめてください! 新人さんが怖がっちゃうでしょう!」

「ひゃははは! そんなガキ――」

「何してやがるんだテメェらぁぁぁ!」

「ぶげら!」

「ぶぎゃ!」

フランが一歩踏み出そうとした、その時であった。酔っ払いたちが派手に吹き飛んだ。やったのは、ギルドの奥から飛び出してきた1人のドワーフだ。

「はぁはぁ……この馬鹿どもがぁ! 相手の実力を見て喧嘩売れや!」

息を荒げたドワーフが悲壮な顔で叫んでいる。

「機嫌損ねた責任を取りもしねーくせによ! 愚図の能無しがっ!」

スゲー暴言吐くな。

「……」

「え? な、何でそんなに睨んでるんだよ?」

「別に」

「えー、だって、一応助けたのに……。な、何かよく分からんが、すまん? 俺は、ここのギルドマスターのダルホってもんだ」

関係者だとは思っていたが、なんとギルドマスターだった!