軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

713 ビスコット戦決着

フランは勝負を決めるつもりで、ギアを上げてビスコットを攻め立てる。まだ閃華迅雷は使っていないものの、覚醒、肉体操作法、各魔術を使って、凄まじい速度を実現していた。

命を削る奥の手を使わずに、これだけ動けるようになっていたんだな。

しかし、先程よりも格段に速いフランの攻撃に、ビスコットは反応し始めていた。

「ガードシフト!」

「ぐむ!」

フランが必殺を狙って放つ攻撃だけは盾で受け、それ以外の牽制は体で受ける。離れ際に放つ雷鳴魔術なども、ビスコットは耐えてみせた。麻痺などにもならないようだ。

「スイングッ!」

「おそい!」

「そっちが速過ぎんだよ! 次は当てる!」

「むり」

「無理かどうか、試してやるさ! ほら、こいよ!」

フランから受けるダメージの頻度も、量も、序盤とは比べものにならないはずなんだが、ビスコットの威勢は試合開始時と変わらない。

その巨体に似合わぬスピードで、鋭いカウンターを放ってくる。

シビュラといい、ビスコットといい、タフ過ぎだろう。戦闘勘の良さも似ているし、レイドス王国の戦士はこんな奴ばかりなのか?

タイプは全然違うが、総合力ではモルドレッドやコルベルトと同等だろう。場合によっては、彼らよりも厄介に違いなかった。

それでも、フランが有利であることに変わりはない。何せ、ビスコットの攻撃は未だにフランに当たっていないのだ。

高い盾の技術に、人外レベルのタフネス。その強気な性格で自身と仲間を鼓舞する。魔獣相手の盾役としては、完璧なのだろう。

そんな防御面に対し、攻撃は数段劣っていた。いや、十分に強力だし、技術も高い。

相手が魔獣であれば、問題ないはずだ。その完璧な防御で攻撃を受け止め、カウンターでダメージを与える。高い腕力から繰り出されるメイスの一撃は、どんな相手であっても当たればただでは済まない。

対人戦でも、ビスコットの強烈なカウンターは脅威になる。何せ、フランであっても気合を入れなければ回避できない鋭さだ。

しかし、結局はそこ止まりであった。

フランより速く動く魔獣はいる。だが、フラン並に動けて、フラン級の技術を持ち、フランと同じレベルで駆け引きが可能な魔獣など、そこらに居るものではない。

ビスコットも、戦った経験はないのだろう。どれだけ完璧なタイミングでカウンターを狙ったとしても、フランには当たらなかった。

「ちぃ! そこだぁ!」

「あぶな」

「もらった!」

「くぅ!」

もう少しで当たりそうなのに、当たらない。だが、次第に、フランが武器で受け流す場面が増えてきた。回避が間に合っていない。

ビスコットは攻め時だと考えたのだろう。

「スパイラル・バッシュゥ!」

今まで温存していた、盾での攻撃を放った。普通であれば、これに対応するのは難しい。初見で、最速。考えているな。

そんなビスコット渾身の攻撃は、フランを直撃――しなかった。

「なにぃ!」

「それは、見たことがある」

フランは盾を使う攻撃を最初から念頭に置いていたのだ。デュラハンや邪人など、盾を使う攻撃をしてくる相手と戦った経験が、フランにその予感を与えてくれていた。

それに、王都では天壁のゼフィルドという、盾を使うランクA冒険者と共闘したこともある。

皮肉にも、ビスコットが使った盾技はゼフィルドが使っていた技と同じだったのだ。一度見た技は、フランには余計に避け易かっただろう。

「してやられた!」

「ふふん」

ビスコットも、自分がフランの術中に陥っていたことにようやく気付いたようだ。

フランはわざと攻撃を受けていた。フランはビスコットの大技を誘発するため、あえて攻撃をギリギリで受けて見せ、追い込まれていると勘違いさせたのだ。

正直、俺は通用するかどうか疑問だった。相手がモルドレッドやコルベルトであれば、見破られていたと思う。

だが、ビスコットは見破れなかった。良くも悪くも魔獣特化。それが今回は不利に働いたのである。

「すきあり」

「こいよぉ!」

盾で相手を吹き飛ばす攻撃、スパイラル・バッシュを完全に回避され、体勢が崩れているビスコット。それでもまだ余裕なのは、防御力への自信故だろう。

フランが放つであろう必殺の一撃に耐えて反撃。そう思ったに違いない。俺も、閃華迅雷を発動しての天断や、空気抜刀術だと思っていた。しかし、違っていた。

ビスコットに対し、フランはニヤリと笑いかける。フランが選択したのはビスコットの防御すら貫く全力攻撃ではなかった。

「はあぁぁ! なんちゃって」

「おおぉぃ? あ、足元を……!」

フランの大地魔術により、舞台が大きく変形する。フランからビスコットに向かって、下り坂が生み出されたのだ。氷雪魔術により、ビスコットの足下が凍りつくおまけ付きで。

攻撃を受けるために踏ん張っていたビスコットに、その突然の変化は最悪である。

そこにフランが突っ込んだ。魔力放出で急加速し、大上段からの一撃を見舞う。

ビスコットはフランの攻撃をなんとか盾で受けたが、それもフランの掌の上であった。

「ちっくしょー!」

「ばいばい」

フランに押し出され、氷の坂を下っていく。ダメ押しで風魔術を連続で叩きつけられ、もうどうしようもない。

『き、決まったぁぁ! なんと呆気ない幕切れだ! この人の試合で、このような決着があるとは思いませんでした! 黒雷姫フランの、頭脳勝ちです!』

俺でさえ、フランがこんな方法を選択するとは思っていなかった。ビスコットならなおさらだろう。

『フラン、よくあんな方法を思い付いたな』

(私も、色々やってみたくなった)

どうやらモルドレッドの真似をして、搦め手を使う戦い方を試してみたくなったらしい。まあ、力押し以外にも選択が生まれるのは、いいことだよな。

結果としては、フランの完勝に近かった。奥の手も大技も温存し、大した消耗もしておらず、試合時間も短かったのだ。ビスコットにとっては、相性が最悪過ぎたね。