軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

667 お別れパーティー

精霊魔術を得た翌日。フランは最後の制服姿で、学院で特別授業を受けていた。

「――という感じになりますね。分かりましたか?」

「ん」

「それにしても、これだけ短時間で精霊魔術に目覚めるとは……。さすが黒雷姫殿ですなぁ」

講義してもらったのは、精霊魔術についてである。まだ今日までは生徒でもあるということで、ウィーナが気を利かせてくれたのだ。

おかげで一通りは習うことができた。まあ、結局は、相性のいい精霊を見つけなさいってことだったが。

フランが古木の精霊と契約を結べなかったのは、あの精霊がエルフの老婆と深い絆で結ばれており、他の契約者を欲しがっていないからだと思われた。精霊の中には複数の契約者を持つものもいれば、一人の人間の側に寄り添うことを好む精霊もいるらしい。

そして、授業の後はフランのお別れパーティーである。生徒たちが開いてくれたのだ。フランが指導したことで驚くほど味が改善した学生食堂で、皆と食事をしながら別れの挨拶をかわす。

「ありがとうございました。勉強になりました」

「助けてくれてありがとう」

「また、来てください」

最初はビビらせてしまったけど、今ではすっかり受け入れてくれている。特に湖から学院に戻っての数日は、本当にクラスの一員のように過ごせていた。

「もう行ってしまうのですね。残念です」

「本当ですよ! 同じ獣人仲間ができたと思ったのに……」

イネスやホリアルなどの、教師陣も別れを惜しんでくれている。

「あなたの指導を受けたクラスは、目に見えて実力が向上しておりました。このまま指導し続けていただければ、生徒たちも喜ぶのですが……。いえ、違いますね。私が同じように、鍛え上げてみせましょう!」

「ん。頑張って」

「は!」

イネスと話すフランはとても嬉しそうだ。ただ自分との別れを惜しんでくれているだけでなく、教師としても評価してくれているからだろう。

フランは教師役が意外と嫌いじゃない。まあ、偉ぶるのが楽しいという子供っぽい面もあるだろうが、自分の経験が他人の役に立つという部分にやりがいも感じているのだ。

その部分を本職の教官であるイネスに褒めてもらえて、自信が付いたのだろう。

「フラン」

「キャローナ」

「お世話になりましたわ」

次にやってきたのは、金髪デコドリルことキャローナだ。その目が微かに赤いが、気丈に微笑んでいる。

最初は冒険者ギルドでの微妙な出会いだったのだが、いつの間にか懐かれたものだ。

キャローナにとってフランは、戦技教官として彼女らを扱き、課外授業の引率をした上位者という印象が強いのだろう。

礼を言いながら頭を下げる彼女からは、深い感謝の想いとともに、格上に対する尊敬の念が感じられる。

だが、懐いているのはフランも同じだった。彼女に感謝し、尊敬している。

彼女がいなければ、フランの学生生活はもっと違うものになっていただろう。

他の生徒たちに馴染むのだって時間がかかっただろうし、こんな風にワイワイと騒ぐことなどできなかったかもしれない。

フランもそれを理解していた。確かに、戦士としてはフランが格上だ。だが、人としての経験ではキャローナの方が上である。フランはそう感じたらしい。

「こちらこそ、ありがとう」

キャローナに対し、頭を下げ返していた。

「キャローナのおかげで楽しかった」

「まあ、そんな……」

キャローナが目を丸くしている。フランのことを少なからず知ったことで、そんなことを言うタイプではないと理解しているからだ。だって、あのフランだよ?

俺も驚いた。

その気配が伝わったのだろう。フランが軽く首を傾げている。

(どうしたの?)

『いや、今日のフランは、いつもよりたくさん喋るなーと思っただけだ』

(そう?)

『ああ』

どうやらフラン自身も、気づいていなかったらしい。

『でも、自分の気持ちを素直に口に出すのは、いいことだと思うぞ?』

なんでもかんでも言えばいいってもんじゃないが、感謝の言葉くらいはね。

すると、フランが何かに納得したような表情で、コクリと頷いた。

(確かに)

『お、分かってくれるか?』

(ん。あっちの私と師匠。もっとちゃんと話してたら、ああなってなかったかも)

『ああ、なるほどな』

あっちの自分たちとの邂逅は本当に僅かな時間だったが、フランの中に残る何かがあったらしい。濃密な時間だったからな。

「フラン……」

キャローナが感極まったように、口元に手を当てる。

「……また、来てくださいまし……」

「ん」

「ち、ちょっとだけ席をはずしますわ!」

泣き顔を見られたくないのか、キャローナが席を立つ。そんなプライドの高さも含め、最後までお嬢だったな。俺は嫌いじゃないよ?

「フランさん、ご無事で何よりです」

「情報助かった。ありがとう」

最後にやってきたのは、カーナである。メッサー商会の情報は本当に助かったのだ。

「いえ、こちらこそありがとうございました」

「?」

「あ、そのレイドス王国からこの国を守ってくださって」

「自分のためだから」

「それでも、多くの人が助かったのは確かですから。あのまま大規模な戦争に発展していたら、両方の国でとてもたくさんの人が不幸になっていたはずです」

カーナがそう言って、再び頭を下げる。なんというか、その様子はとても痛々しく見えた。キャローナたちのように嬉しさや安堵だけではなく、どこか悲しみや寂しさが籠っているのだ。

どういうことなんだろうな? 深い事情があるのだろうが……。だが、何かを聞く前に、カーナはその場から立ち去ってしまった。何か用事があるらしく、引き留めることもできない。

『まあ、戻ってきたら、その時に聞けばいいか』

「ん」

その後は楽しく、パーティーは続いた。フランにしては珍しく、夜遅くまで起きていただろう。多くの同年代の少年少女とワイワイ騒ぐのは、フランにとっても楽しかったらしい。

『フラン』

「?」

『楽しいな』

「ん! 楽しい」

色々と面倒ごとも多かったが、フランのその笑顔が見られただけで、この学院に来た甲斐があったというものだろう。