軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

668 レディ・ブルー出発

「フラン。待っていた」

「シエラ?」

レディブルーを出立しようと大門を潜った俺たちの前に、一人の少年が現れた。ここ数日姿を消していた、シエラだ。

彼らからは今後もシエラと呼ぶように頼まれていたので、フランも俺もロミオとは呼ばない。

「どうしたの?」

「改めて礼を言っておこうと思った。俺たちを見逃してくれたこと、感謝する」

シエラがそう言って頭を下げた。

魔剣ゼロスリードの正体が判明した際、シエラは全てが終わったら相手をすると約束をしていたのだ。つまり、フランの復讐心を受け入れ、戦いの場を設けるということだった。

だが、フランはシエラたちを見逃している。

ゼロスリードへの恨みはまだ残っているが、それはこっちのゼロスリードに対するものだ。

魔剣の姿になってしまったあっちのゼロスリードに対しては、そこまでマイナスの印象は持っていない。

むしろシエラに対してはシンパシーを感じているし、今さら戦いたいとは思っていない。フランはシエラに対し、ゼライセが逃げたからまだ全部が終わったわけではないと告げ、戦いを回避していた。

『もしかして、礼を言うために待っていたのか?』

「違う。いや、勿論礼を言うためでもあるが、思い出したことがあったんだ。それを伝えようと思って」

『思い出したこと?』

「ああ、あっちで得た情報だ」

あっち。つまり、こことは違う時間軸で手に入れた情報ということだ。

「どんな情報?」

「あっちのフランが、師匠のことを神剣だと語っていたらしい。おじちゃんがまだ剣になる前に、そんな会話を聞いたと言っている」

『はぁ? 神剣って、俺がか?』

「ああ。その通りだ」

どういうことだ? あっちの俺が神剣だった?

『廃棄神剣ってことじゃなく?』

「いや。おじちゃん相手には神剣開放するまでもないと、言い放ったらしい」

それは確かに、廃棄神剣じゃ有り得ない言葉だ。明らかに、現役の神剣である。

「じゃあ、師匠が神剣に進化するかも?」

『フランの言う通りだが……。そんなこと、ありえるか?』

《是。有り得ます。個体名・師匠の誕生には神が関わっており、フェンリルやケルビムなど、その器も十分に揃っています。なんらかの方法で、神剣としての銘を得る可能性有り。ただし、詳細な情報が不足しており、その方法が不明》

『アナウンスさん、むこうのアナウンスさんと情報の共有をしたって言ってたよな? その時に何か教えてもらってないのか?』

《是。師匠の神剣化に関して、一切の情報がありません》

それも謎だな。スキルの情報なんてものをやり取りできたんなら、簡単な情報くらい教えてくれてもいいんじゃないか? こっちの師匠、神剣になってますよーくらいなら、一瞬だろう。

『そんな余裕さえなかったのかね?』

《否。情報共有をする余裕は十分にありました》

じゃあ、なんで教えてくれなかった? 神剣になれるかもしれないだなんて、結構重要な情報だと思うが? あっちとこっちで違えど、アナウンスさんが意地悪や出し惜しみをするとも思えない。

『となると――あえて神剣に関わる情報を教えなかった?』

《その可能性が高いと思われます》

『つまり、神剣にならない方がいいと、あっちのアナウンスさんが判断したってことか』

《個体名・師匠が神剣としての力を得るにあたり、何かしらの代償がある可能性が大》

『その代償がヤバいってことかもな……』

あっちのアナウンスさんなら、俺たちが大魔獣と戦っていると知っていたはずだ。そこでも神剣の情報を渡さないとなると、本当にその代償が酷いものなのだろう。

それこそ、名前が変わることで俺が俺じゃなくなるとか? むこうの俺は剣に成り下がっていたし、神剣となったことがその原因ということも十分考えられる。

神剣にはかなり憧れるが、これは慎重になった方がよさそうだった。

『その情報感謝する』

「いや、少しでも役に立てたなら嬉しい」

『十分、役に立った』

神剣に至れる可能性があるということもそうだし、それが危険かもしれないという情報もゲットできたのだ。

「シエラはこの後、どうする?」

「俺は魔剣ゼライセを追う。奴こそが、俺の真の敵だ」

「そう」

「そっちは、どうするんだ?」

「私はウィーナから受けた依頼」

フランとシエラが、互いの今後の行動について、情報を交換し合う。

シエラの場合は、とりあえずレイドス王国に合法的に入国する方法がないか調べるそうだ。それと同時に、周辺でのアンデッド被害の情報を集めるらしい。

現在の魔剣ゼライセの所有者であるデミリッチのネームレスは、レイドス王国に所属する黒骸兵団の団長と名乗っていた。

つまり、アンデッド軍団を率いて、各地で暗躍している可能性も高いのだ。

フランの場合、直近の目的地はベリオス王国の王都である。そのままゴルディシア大陸に渡る可能性が高いだろう。

そこでウィーナの依頼をこなしつつ、トリスメギストスに会いにいく。

あと、長期的な目的としては、黒猫族全体の呪いを解くことが挙げられる。まあ、これは本当に長い時間がかかるだろうが。

「黒猫族にかかった呪い?」

「うん」

どうやらシエラはその情報を知らないらしい。まあ、興味なければそんなものなのだろう。フランが、簡単に説明をしてやる。

「つまり、黒猫族のみで、脅威度S以上の邪人を倒さなきゃいけないってことか?」

「邪神の眷属でもいい」

「どちらにせよ、厳しい戦いになるだろうな」

「でも、絶対に呪いを解く」

「そうか……。目標を達成できるといいな。俺も応援している。どこかで強い黒猫族を見付けたら、知らせることにするよ」

「お願い。私も、ゼライセ探す」

「頼む」

最後に握手を交わすと、シエラが連れていた馬に飛び乗った。どうやら、召喚獣であるらしい。下級ではあるが、馬タイプだ。その足はかなり速そうである。

「シエラ。またね」

「ああ。またな!」

そうして、シエラが去っていくのをキッチリ見送ったフランが、ウルシの背に飛び乗った。その顔はやる気に満ち溢れている。

「私たちも、行こう」

「オン!」

『ああ、そうだな』

「シエラにまけてられない」

『俺も、他のインテリジェンス・ウェポンに負けんぞ!』

「ん!」