軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

605 魔石の匠

シエラとの激しい攻防を続けながら、ゼライセが心底楽しそうな笑みを浮かべた。

普通なら爽やかなイケメンスマイルに見えるはずなんだが、不吉さしか感じない。内面がにじみ出ているんだろう。

「あは! すごい! 凄いねその剣!」

「……」

「いやー、あの小さな子供が、こんなに育つなんてねぇ!」

「っ! お前が! 今のお前が俺を知っているわけがない!」

ゼライセの言葉に、シエラが顔をしかめた。やはり知り合いか? だが、シエラが不思議な言葉でそれを否定している。

今のお前が? どういうことだろうか? もう、忘れたはずってことか?

シエラとゼライセがどういう関係なのか、見えないな。昔、ゼライセに人体実験されて、捨てられた的なことか?

「ふっふーん。果たしてそうかな?」

「……戯言を! こちらを惑わせるつもりか!」

「いやいや、本当に知ってるってばー。ねえ? ロミオくん?」

「俺は、シエラだ」

「そう名乗ってるのかい? でも、僕は君たちをよーく知ってるよ? ロミオ君と、ゼロスリードさん?」

「なぜ、それを……」

どういうことだ? ロミオ? あと、ゼロスリードって……。あの少年の本名がロミオで、どこかにゼロスリードが隠れている? どういうことだ?

「俺たちを……監視していたのか? いや、しかしそれでも……」

「さて、どうでしょう?」

「……どうでもいい。ここで元凶であるお前を殺せば、全て終わりだ」

「君に僕が殺せるかい?」

「殺せるさ!」

そろそろ、俺たちも参戦するか。完全に2人の世界だが、ゼライセに怒りを抱いているのは俺たちも同じなのだ。

名前や、ゼライセとのことは後で聞けばいいさ。

『フラン!』

(ん!)

ゼライセが何故か透過能力を使わない今がチャンスなのだ。シエラに再び打ち消されることを警戒しているのか、頻繁に使えるものではないのか。

ともかく、今は確実に実体がある。

「本気で行くよ?」

『おう! ここで仕留めるぞ!』

できればシエラを巻き込みたくはない。聞きたいこともあるし、一応は味方だからな。

それ故、彼ごとまとめて攻撃してしまうような範囲攻撃や、大規模攻撃は使えない。ならば、持てる力を全て込めた、全力の一撃しかないだろう。

「覚醒――閃華迅雷。剣神化っ!」

『きたきたぁ!』

剣神化特有の、刃を覆う破滅的な魔力と、自分の思考が最適化される不思議な感覚が俺とフランを包み込む。

「黒雷転動――!」

剣神化による最適化は、剣術だけに及ばない。その場において、俺たちが持てる能力を最大に引き出してくれていた。

フランの身に宿る黒天虎の力と、神に連なる剣術。さらに、俺の所持するスキルたち。

それが融合した時、それは誰にも躱すことができない必殺の一撃となる。黒雷の速さと、最高の斬撃と、研ぎ澄まされた隠密能力がその一撃に詰め込まれているのだ。

この攻撃ならば、過去に苦戦した強敵たち相手でも通用する自信があった。それこそ、リッチやアマンダ相手でも、発動さえすれば倒せるという確信がある。

まあ、その前の段階で、こちらが倒される可能性は高いんだけどね。

黒雷転動で突如出現したフランに対し、シエラは全く反応できていない。視線も意識も、真横に出現したフランへ一切向いてはいなかった。

それに対して、ゼライセは反応できている。

シエラの剣を左手を犠牲にして受け止めつつ、引いた水晶の剣で俺を防ごうと動いていた。反射神経と剣術レベルが俺たちと互角でなければこの動きは無理だ。

剣聖術級のスキルを得ているかと思っていたが、どうやらさらに上位であるらしい。しかも、魔石兵器によって超反応に類するスキルを身に付けていることも間違いなかった。

以前、エクストラスキル盗神の寵愛を使われたこともある。それを考えれば、どんなスキルを使えても不思議ではなかった。

だが、ゼライセが俺たちの放った斬撃を防ぐことは叶わない。

「えっ?」

目の前で起きた不可思議な現象に驚き、ゼライセが目を瞬かせた。

俺と接触した瞬間、ゼライセの手に握られていた剣が、綺麗さっぱりと消滅してしまったのだ。

その直後、腹が満たされるような感覚とともに、俺の中に魔力が流れ込んでくる。

『ごちそうさん!』

水晶に見えていたゼライセの剣は、実は魔石でできていた。近づいてそれが分かったので、そのまま斬りかかったのである。

魔石のスキルを一定時間使用可能にする魔石兵器。魔石でできたゴーレム、魔石兵。さらに、魔石を人間に埋め込む魔人研究など、ゼライセは魔石のエキスパートと言ってもいい。

そのゼライセが使っていた、魔石製の剣。多分、何らかの特殊能力がある、危険な魔剣だったのだろう。

だが、俺の前ではただのご馳走でしかなかった。

「ちょっ……!」

ゼライセの野郎の本気の驚き顔を見ると、嬉しくなっちゃうね!

「たぁぁ!」

「ぎいぃがぁぁっ!」

直後、俺の刃が無防備なゼライセに叩き込まれた。確実に肉を斬った感触があった。間違いなく、実体がある。

しかも、神属性による攻撃は、予想外に効いたらしい。シエラに斬られた時には顔色ひとつ変えなかったゼライセが、みっともなく悲鳴を上げていた。

もしかしたら、ありとあらゆる属性に対して優位であるという神属性は、痛覚鈍化系スキルなどを無効化するような効果があるのかもしれない。

「神属性……なんて、ずるい……よ……」