軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

596 レイドス王国の内情

「フランさん……?」

「ん?」

目の前で突如行われた戦闘に、ロブレンが唖然としている。いや、戦闘というよりは、一方的な討伐だったが。

『フラン、説明してやらないと』

「中にアンデッドがいたから倒した」

「アンデッド?」

「ん。それに、緋水薬もない」

フランの言葉を聞いたロブレンが、倉庫の中を覗き込む。真っ二つにされたアンデッドと棺の残骸に加え、確かに倉庫の中に薬がないことを確認したのだろう。

未だに腰を抜かしている案内人に視線を投げかける。

「これはどういうことかな?」

「アンデッドがいることは知っていたの?」

ロブレンとフランに同時に質問され、案内人が震えあがった。

「し、知らない! 知りませんでした!」

『嘘だ』

「緋水薬がないことも知ってた?」

「知らない!」

『嘘』

この案内人もある程度の事情を知っているということだろう。

「ロブレン、こいつは色々知ってる」

「へえ?」

フランの言葉に、案内人がビクリと震える。嘘を見抜かれたことが分かったからだろう。その後、少し痛めつければペラペラと情報を喋ってくれた。

彼自身はこの国の人間だが、死んだ父親がレイドス王国の人間であったらしい。あの国は方々に長期潜伏のスパイを送り込んでいる。この男の父もそうだったのだろう。

ただ、生え抜きのレイドス王国人ではないため、忠誠心は低いようだ。こちらの質問には嘘なく答えている。

「レイドス王国は、この湖で何をするつもりなの?」

「わ、分からない! 本当だ! ただ、東征公のお抱え錬金術師っていうやつが、商会長たちに指示を出してるらしい!」

「東征公?」

「し、知らないのか?」

「ロブレン知ってる?」

「名前だけはね。ただ、レイドスの情報はほとんど入ってこないから、レイドス王国にいる四大公爵の一人っていうことしか知らない」

国交がないうえに、冒険者の出入りもない。それ故、ロブレンであってもレイドス王国の内情については詳しくないらしい。

案内人に詳しく説明させると、現在のレイドス王国の情勢はかなり混沌としている。まず、国王が事故死してしまい、不在であるらしい。

そして、死去した前国王の遺児の中で、誰を王にするかが決まっていないという。嫡男は王と共に死亡してしまっており、正式な後継ぎが不在の状況なのだ。

幾つかの派閥がそれぞれの擁立した候補を推しており、泥沼状態に陥っているらしい。最も年長の子供でも13歳であり、最有力と呼べるほどの候補がいないことも問題の長期化に拍車をかけているようだ。

その混乱するレイドス王国を支えているのが、国王に次ぐ地位と領地を持った、四大公爵家である。

遥か昔、レイドス王国は北方に乱立する小国家群の1つでしかなかった。しかし、ある時に軍事的才能に圧倒的に優れた覇王が王位を継ぎ、その王によって周辺国家を併呑して今の国土を築いたのである。

その時に活躍したのが、覇王の腹心であった4人の将軍である。東征将軍、西征将軍、南征将軍、北征将軍によって率いられた4つの軍団は、破竹の勢いで周辺国家を侵略し、レイドス王国は急速に拡大していった。

そして大戦の終結後、それぞれの将軍は併合した土地の有力国家の王族を娶って、公爵に任じられたのである。

ただ、それぞれの公爵家には多少の序列があるらしい。最も有力と言われているのが、北征公爵家、次いで西。東と南はほぼ同格という感じだという。

その差は、過去の戦績によるものだ。北征将軍は、少ない手勢を巧みに操り、目標とされるジルバード大陸北部の完全制覇を成し遂げている。そのことで、現北征公爵家は国民や貴族から尊敬を集めているそうだ。

西征将軍も、フィリアース王国の神剣ディアボロスの入手には失敗したものの、西部をほぼ手中に収めている。さらに奴隷の売買などを行うことで経済的に最も潤っており、西征公爵家も北征公爵家に負けない威勢を誇っているらしい。

逆に、東と南の公爵家は力を弱めている。没落とまでは行かないものの、北、西に比べたら半分以下の力しか持たないだろう。

それもまた、過去の戦が影響している。東にはウィーナレーンが、南にはクランゼル王国が立ちはだかり、両公爵家の進撃を止めたのだ。そのせいで2家は領地がやや狭いうえ、発言力も北と西に比べ低かった。

その現状をよしとしない2家は、公爵に封じられた後も戦いを継続し続けたらしい。そして負け続け、膨れ上がる戦費が経済を圧迫するという悪循環に陥ったのだ。

ここ最近は正面から戦を仕掛けることはしなくなった代わりに、水面下で様々な陰謀を進めているらしかった。

今回のことも、大元には東征公爵家がいるらしい。

「でも、俺みたいな下っ端には詳しいことは分からないんだ! グレゴリーさんが、そんなことを呟いてたのを聞いただけで!」

案内人の男が知っていたことは、メッサー商会がレイドス王国の隠れ蓑になっているということと、そのトップが東征公爵であるということ。それと、現在は公爵によって派遣されてきた錬金術師が指示を出しているということだけだった。

「その錬金術師は何者?」

「わ、分からないです……。でも、今は緋水薬作りの工房に出入りしているって……」

情報をある程度聞き出した俺たちは、とりあえず案内人をぶん殴って気絶させてから、手足を縛って転がす。

「この後どうする?」

「君はどうするんだい?」

「幹部を捕まえる。ウルシが見張ってるからすぐに済む」

「じゃあ、そっちは任せていいかな? 私はギルドに報告に戻って、そのまま工房に向かおうと思う」

「わかった」

確かに、二手に分かれた方が逃げられる可能性も低いのだ。ロブレンは案内人を抱え上げると、そのまま冒険者ギルドに向かうらしい。

レイドス王国が背後にいるとなれば、個人の問題ではないということなんだろう。

『俺たちはグレゴリーの捕縛だ』

「ん!」