軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

595 またワイト・キング

商会の人間に案内されながらも、俺たちは着々と準備を整えていた。フランは戦闘に備えて身体強化などのスキルを発動しつつ、俺はいくつかの魔術を発動直前で準備する。

その物騒な様子が理解できたのだろう。ロブレンが盛大に顔を引きつらせた。だが、これで理解したはずだ。これから向かう先に敵が待ち構えていると。

ロブレンも密かに体内で魔力を練り始めた。よしよし。

案内の男性は戦闘能力が全くないせいで、俺たちが何をしているのか理解できていないようだ。しかし、何も感じていないわけではないのだろう。

時おり俺たちの方を振り返り、何もわからずに首をひねるということを繰り返している。

そのまま数分歩くと、船の底に近いジメッとした区画に案内された。その一角にある、一見普通の扉の前で案内人が立ち止まる。

「こ、ここです」

「ふーん」

扉の向こうからアンデッドの魔力や気配は感じ取れない。壁などに結界が張られているのだろう。

まあ、一応確認しておくか。

俺は再び飾り紐を鋼糸化すると、扉の隙間から部屋の中に侵入させた。ロブレンたちからは、フランが糸使いのスキルを持っているように見えるだろう。

「え?」

「入る前に、少し調べることがある。どうせこの後中をみせるんだから、いいでしょ?」

「そ、それは……」

案内人の男性がどうするべきか悩んでいるが、その後ろにロブレンがそっと移動した。こちらの邪魔をしようとしたら、止めてくれるつもりなのだろう。

部屋の中に入れば、さすがにアンデッドの気配がする。ただ、本当に微かだ。あまり強力なアンデッドではないのか?

どこにいるかと軽く探ってみたら、部屋の中央に置かれた棺から死霊の魔力が立ち上っている。

鑑定してみると、棺そのものが魔道具であるらしかった。アンデッドの気配を抑えつつ、魔力消費を抑えて眠っていられるようだ。

隠蔽の魔道具を使ってなお気配が漏れているということは、強力な上級アンデッドが隠れているのかもしれない。

しかし、狙い過ぎじゃね? アンデッドの寝床に棺型の魔道具って……。隠れているつもりなのだろうが、自己主張が強すぎるだろう。怪しさが凄まじい。

『まあいいや。とりあえずこっそりと先制攻撃を仕掛けさせてもらおう』

俺は鋼糸をスキルで操作して、棺の周辺に張り巡らせる。そして、魔力強奪スキルを多重起動させた。

アンデッドは魔力で動いているため、魔力を吸収されると弱体化するし、魔力切れを起こせば消滅するのだ。

周辺の魔力が急激に減り始めるのが分かる。棺だけではなく、アンデッドにも影響があるだろう。

さて、どうする? 未だに姿も分からないアンデッドよ?

自らに降りかかる異変には気付いているだろうが、ここで動けばフランたちに自分の存在がばれるだろう。

未だに奇襲ができると思っているアンデッドにしてみれば、ここで動くことに躊躇があるようだった。

そもそも、奴からはフランたちによる攻撃かどうかもわからないはずだ。

そのまま十数秒ほど経過したころ、ついに棺に動きがあった。バーンと内側から勢いよく蓋が跳ね上がり、次いで干からびた死体が体を起こす。

『ワイト・キングじゃねーか!』

それは、脅威度B魔獣であるワイト・キングであった。間違いない。魔狼の平原で戦った相手だからな。威圧感も、魔力の大きさも、あのワイト・キングと同等だ。

姿形もよく似ている。着込んでいるローブもほぼ一緒だろう。

いや、おかしくないか? いくら同じ種類の魔獣とはいえ、装備が一緒っていうのはあり得ない。もしかしてあのワイト・キングは、こいつらと所属が同じだった? つまり、レイドス王国に使役されていたのかもしれない。

「な、なんだこれは……。糸……?」

まだ状況がつかめてはいないか。しかし、すぐに周囲に張り巡らされた糸が、魔力を吸い上げていると理解したのだろう。

その手の平に魔力が集まり始めた。一気に吹き飛ばすつもりであるらしい。

させんがな。

『おらぁ!』

「ぬおお! こ、これは浄化の……!」

俺は糸をワイト・キングの体に巻き付かせつつ、浄化魔術を発動する。まだスキルレベルが低いのでワイト・キングレベルの相手を倒せるほど威力はないが、大分弱らせることはできているはずだ。

扉の外にもワイト・キングの叫びは聞こえている。しかも、何やら苦しんでいるようにも聞こえるだろう。

案内人はオロオロとするばかりだ。

『後は頼む! フラン!』

「ん!」

「なぜ、俺様のことが――ぐおおぉぉ!」

奇襲するつもりが奇襲され、全く対応が間に合っていない。

扉を蹴破って飛び込んできたフランの攻撃に対し、障壁を張って対応しようとしたようだ。だが、魔力強奪と浄化魔術によって発動が妨害されていた。

「があっ――」

糸で縛り上げられていることで身を捩ることさえ敵わず、無防備にフランの攻撃を受けるしかない。ワイト・キングはお得意の死霊魔術を使う間もなく、フランに棺ごと真っ二つにされたのであった。

『よし、よくやったぞフラン』

「ん……」

難敵であるワイト・キングを、周囲に被害を出さずに瞬殺したはずなのに、フランの顔は浮かない。

『どうした?』

(また魔石なかった)

『ああ、そういえばそうだな』

このワイト・キングも、魔狼の平原で倒したワイト・キングと同じで、体内に魔石を持っていなかった。もしかして、ワイト・キングって魔石を持たない種族なのか?

まあ、今は唖然としているロブレンに説明をするのが先決だ。