軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章二 海中ダンジョン 05

目的地へ向かう途中の雑談で、貴重な情報を教えてもらってしまったな。これは、マジでダンジョン攻略を頑張らねば。

「む。見えてきたぞ」

静かなる海の視線の先には、小さな洞穴があった。日の光がギリギリ届く程度の海底に、人一人がようやっと通れる程度の狭い穴が開いているのだ。

「もう?」

静かなる海の遊泳速度は相当なものだったが、それでも早い。30分かかってないんじゃないか?

「ああ。だからこそ、お主らを見つけたのだからな」

どうやら、ダンジョンの近くで使えそうな人材を探した結果、神の気配を纏うフランとウルシを発見したらしい。それが神剣使いだったわけだから、引き強いよね。

「では、いくぞ! 掴まっていろ!」

「ん?」

『どういう――』

静かなる海の言葉の意味を問いただす前に、その巨体が一気に加速した。

水が凄まじい速度で押し寄せてくるが、フランはなんとか静かなる海の背中にしがみ付く。フランは身体強化を全開にして、俺は水魔術で水圧を弱めて耐えた。

チュインチュインという、高い音はなんだ? 魔力の流れからして、何かが静かなる海の周辺を高速で飛んでいっているようだが……。

周辺をよく観察すると、ダンジョンの入り口周辺に大きなシャコ貝が無数に張り付いていた。そいつらが、水を飛ばして攻撃してきているのだ。静かなる海は海流を操作してその攻撃を逸らしているらしい。

ダンジョンの入り口が、グングンと近づいてくる。

そして、フランがしがみ付いていた静かなる海の巨体が一瞬で消え去った。消滅したわけではなく、なんと水に姿を変えたのだ。

静かなる海が変転した水がフランを包み込むと、ダンジョンへと誘導するように一気に流れ込んでいった。

水中を転がる様にして、入り口を通り抜けるフラン。そのフランを、水から魔獣の姿へと戻った静かなる海がソッと受け止めた。

「大丈夫か?」

「ん。へいき」

首を振って水を飛ばすフランは、すぐに立ち上がって周囲を見回す。

ダンジョンの内部――エントランスのような部分はそれなりに広く、静かなる海が元の姿に戻っても大丈夫だ。

「穴の外もダンジョンとなっていてな。守護している魔獣共の攻撃が面倒なので、一気に内部に入り込んだのだ。少し荒くなった。許せ」

「あの貝がいっぱいいたところも、ダンジョン?」

「そうだ」

水魔術を使用可能な貝を大量設置して、砲台のように使っていたらしい。

「空気、ある?」

フランが驚きの顔をしている。

当然ながら、海中のダンジョンには海水が満ちている。海の中にあるのだから当然だ。ダンジョンマスターが海水が入らない設定にしない限り、そこは変わらないだろう。

そして、海の中のダンジョンのマスターは、高確率で海洋生物だ。自分自身が生きていけないような環境にはしない。

俺たちも、当たり前のように水没したダンジョンを攻略するつもりだった。だが、ここは数少ない、空気のある海中ダンジョンだったらしい。

収納の中に空気を大量に入れてきたけど、無駄になったな。

「この空気。これが我ら海神龍の眷属による攻略を難しくしている。眷属の半数以上が、鰓呼吸なのでな!」

地上のダンジョンの中に、水が満ちているようなものなのだろう。攻略はかなり骨が折れるはずだ。

普通に呼吸可能な者を連れてきた方が、簡単なのかもしれない。神獣の眷属たちなら魔術でどうにかできるのだろうが、ずっと使い続けていればすぐに魔力が枯渇するだろうしな。

因みに、静かなる海は変身系のスキルを持っており、鰓呼吸も肺呼吸も可能であるそうだ。

「では、早速攻略にとりかかろう! 罠が大量にあるので、慎重にな」

「ん!」

ダンジョンの内部は、石造りの遺跡のような見た目をしている。得てしてこういうタイプのダンジョンは、自然系のダンジョンに比べて罠がえげつないことが多いのだ。

『罠の除去は任せておけ! ウルシは、魔獣を警戒だ!』

「オン!」

ガシャコン!

「オン?」

『いきなりやりやがったね! ウルシ!』

「くる」

通路の奥から飛んできた矢を、フランがあっさりと叩き落した。数は少ないものの、かなりの速度だったな。

しかも、鏃には毒が塗ってある、かなり殺意マシマシな罠だったと言えよう。

『ウルシ! 気を付けろと言ったそばから!』

「クゥン……」

まあ、入り口から一歩踏み出しただけで罠があるとは普通思わんよな。さすが、神獣の眷属をして、罠が厄介と言わしめるだけはあるのだ。

怒られるウルシを見て、静かなる海が高笑いを上げる。

「ふははは! 神狼の眷属よ! それでは主の名が泣くぞ!」

「クゥン」

「馬鹿者! そこで負けん気を見せずしてどうする!」

「キャイン」

「軟弱者め!」

なんだろう。静かなる海さんにめっちゃ怒られているな。同じ神獣の眷属同士、仲間意識もあるのだろう。

だからこそ、ウルシの情けない姿が、我慢ならないらしい。まあ、うちのウルシはやる時はやるけど、普段はちょっと野性を失ってる瞬間があるからねぇ。

野生の眷属さんからすると、軟弱に見えるのかもしれない。

これ、何百年も生きている超先輩である静かなる海さんの指導を受けてたら、ウルシが少しは野性を取り戻すだろうか?

「オ、オン!」

「うむ。それでいい! 我らが情けない姿を見せるということは、主の評判を下げることにもつながると心得よ」

「オン!」