軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章二 海中ダンジョン 06

ダンジョンは事前情報通りに非常に狭かった。道幅は2メートル弱。天井は2メートルをやや超える程度。人類種であっても、背が高い冒険者では苦労するだろう。

剣を振り上げることもできないし、下手に魔術を使えば仲間を巻き込みかねない。

歩く分には問題ないが、戦闘をするには空間が足りない感じである。

そんなダンジョンを、俺たちは少しずつ進んでいた。先頭はフラン――じゃなくて、ウルシだ。

闇魔術と鼻で罠と敵を探しつつ、いざという時にはフランの盾にもなれる。罠の解除をするのは俺だが、念動を使えばウルシの背後からでも可能だからね。

「ほう? 今のを発見するか。やるではないか」

「オン」

「む? 今のは我でも分かったぞ! なぜ発見できぬ!」

「クゥン」

「なにぃ! そこに罠があったか! よく気づけたな!」

「オンオン!」

ウルシの背後には、小型犬サイズまで縮んだ静かなる海が続いている。ウルシの行動を一々褒めたり怒ったり、忙しそうである。

それを聞くウルシも、一喜一憂して百面相をしていた。ウルシ的にも、神獣の眷属の大先輩に指導してもらえるのは嬉しいようだ。

俺とフランに対する全面服従的な態度ではないものの、静かなる海を格上として扱っていた。明らかに舎弟モードに入っているし。

「オン!」

「うむ。魔獣の処理も的確で、今のは素晴らしかったぞ」

今のも「へへ? いまのどうっすか? 静かなる海さん!」みたいな感じだろう。静かなる海も褒めるところはちゃんと褒めてくれるから、ウルシのやる気もドンドン高まっている。

静かなる海は、ウルシのやる気スイッチポチポチ名人なのだ。

「オンオン!」

「うむ。あれが二階層への階段だ」

『そういえば、ここって全何階なんだ?』

「我らが知っているのは、地下三階までであるな。そこで、眷属だけでの攻略を諦めて引き返したのだ」

その時は眷属6体での攻略に挑んだらしいが、罠の解除に時間を取られ過ぎて、これ以上進むのは無理だと考えたらしい。

進めば進むほど罠の難易度と魔獣の数が増えるとは聞いているが、地下二階からは一階の比ではないそうだ。

眷属の中でも罠の解除を担当していたクラーケンタイプの荒ぶる海によると、罠解除の専門家がいなければ進めなくなるレベルであろうという。

その話を聞いて、全員気合を入れていたんだが――。

「キャイン!」

『ウ、ウルシ! 大丈夫か!』

「クゥン……」

「だから注意せよといったであろう! 一階と同じ轍を踏みよってからに! 体を張って我を笑わそうとしているのではなかろうな?」

「オ、オンオン!」

「最初の小部屋に罠があるのは卑怯? 相手はダンジョンぞ! 卑怯もくそもあるか!」

「キャイン!」

ウルシがまた罠を起動させてしまっていた。しかも、天井と床、双方から槍が無数に突き出す、殺意強めのやつだ。

電撃を帯びている槍が超高速で迫って来る罠とか、ウルシは影転移でなんとか逃げたが、普通なら回避がかなり難しいだろう。

まあ、ウルシの気持ちもわかるんだよ? 階段を下りた第一歩目に罠があるとか、地上のダンジョンでは考えられないし。

そう決まっているわけじゃないけど、最初の部屋は準備部屋というか、スタート地点的に何の仕掛けもないのが暗黙のルールみたいに思われていたのだ。

ただ、この海中ダンジョンは違っているらしい。もしかしたら、水中と地上ではダンジョンの構造やルールが違うのかもな。

やらかしたことでちょっとションボリしてしまったウルシが、トボトボと歩き出す。そんな姿を見て焦った様子なのが、静かなる海さんである。

「ま、まて! 今のは我も言い過ぎた。誰でも最初というものはあるし、失敗もするものだ。次、気を付ければいい」

「オン?」

「そうだ。失敗を糧にし、成長できるかどうかが重要である」

「オン!」

「その意気だ。頑張れ」

面倒見がいいね! 偉そうだけど、ちゃんと目下の者にも気を配ってくれている感じ? ツンデレ貴族様みたいな性格なのかもしれない。

そのままダンジョンを進んでいると、少し気になっていたことを尋ねてみた。

『なあ。静かなる海は、何て魔物なんだ?』

さっき、クラーケンタイプの眷属云々という話があった。どうやらリヴァイアサンは、海の魔獣たちを眷属化して従えているようだ。

ただ、静かなる海に似た魔獣を見たことがなかったのだ。

「うん? 我か? 我はいくつかの形態を使いこなせるように作られている故、特定の種族名は持たぬな。鑑定では、海神龍の眷属と出るのだ」

『作られた? リヴァイアサンに?』

「そうだ。海という広大な場所を守護する職務上、配下を生み出せなければなかなか難しいからな」

海は広いし、環境も様々だ。そこを全てカバーするには、性質に合った特別な眷属が必要になってくるのだろう。そのためリヴァイアサンは、ホムンクルスやキメラ的な、特殊な魔獣を生み出す能力を神から与えられているらしい。

「この姿の時は、海狼形態と呼ばれるな」

『ああ、海狼って魔獣がいたな。でも、あいつらとは姿が結構違うよな?』

海狼は文字通り、狼に似た魔物だ。泳ぎが得意で、水上を走ることも可能である。

静かなる海の尾や背ビレは確かに海狼に似ているが、海狼は体にも毛が生えていたはずだし、目がもっと大きくて魚のようにギョロってしていたはずだった。

「アレをベースに、我が主の力を注ぎこまれたというだけだからな。まあ、半海狼半海蛇というのが正しいかもしれん」

「なるほど」

「我の場合は、他にもいくつか形態があるので、どれが真の姿というわけでもないが、この姿が一番落ち着くのは確かだ」

リヴァイアサンの眷属は、多くがベースになる元の生物に、他の生物やリヴァイアサンの因子を融合させて生み出されているらしい。

男の子としては、他にどんな姿の眷属がいるか、気になっちゃうねぇ! 鮫の眷属とか、絶対にかっこいいもんな!