軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章二 海中ダンジョン 04

名前だけしか知らないランクS冒険者が、実は神剣使いであると知ってしまった。

だって、静かなる海が普通に教えてくるんだもん。

フランがランクS冒険者になったことで、他のランクSたちの情報が解禁されていた。ギルドで、種族や外見、異名などを教えてもらっているのだ。

ランクS冒険者同士が潰し合わないように、注意喚起の意味があるらしい。まあ、深い個人情報まで知ることはできなかったけどね。

『獣王』リグディス・ナラシンハ 獣人 男

火炎と槍を使う、獣人国の王

『紅蓮刃』イザリオ 人間 男

炎剣・イグニスの使い手

『同士討ち』アースラース 鬼人 男

地剣・ガイアの使い手

『不動』デミトリス 人間 男

デミトリス流武術の開祖

『万里鵬翼』ローズベリル ハーフリング 女

超長距離狙撃を得意とする、世界一の弓士

『首狩り』ラー・サクール 鳥人 女

鳥人のみが住む山脈国家タイレル王国の守護者

『蒼海嘯』シーラ 魚人 女

魚人の国の将軍職も務める斧使い

『賢鱗』エルバリンシュラッド 蜥蜴人 男

世界を放浪する全属性の魔術師

『黒雷姫』フラン 獣人 女

人剣・師匠の使い手

現在のランクSはこんな感じだ。万里鵬翼はまだしっかりと現役である。

出会ったことがない4人に関しては、違う大陸で活動しているらしい。意外と、世界に上手くばらけているみたいだな。

弓士としか分かっていなかった万里鵬翼が、神剣使いだったとは!

え? 万里鵬翼さん、絶対隠してたよね? 思わぬところで知っちゃったんだけど!

『その情報、俺たちに教えちゃってよかったのか?』

「む? まずかったか?」

『多分、本人は隠してると思うぞ?』

「そうか? では、この情報は他で語らぬように」

軽い! 軽いよ!

『お、俺たちの情報も、他で誰かに教えないようにしてもらえるか?』

「うむ! それも分かった」

よかった! これ、釘刺してなかったら、俺たちの情報普通に拡散されてたかも! まあ、神剣であることはバレちゃってるから、今更って感じはあるけどさ。

これから依頼をこなす中で、まだ世間に隠し通せてる情報が色々と知られるかもしれん。それは隠したままにしておきたいのだ。

「ふむ……」

「どうしたの?」

「うむ。さっき教えたエルバリンシュラッドだが、そやつは神剣ウィズダムの使い手だったはずだが……それも言わぬほうがいいのかのう?」

言わぬほうがいいでーす!

『とりあえず、神剣の情報はあまり言いふらさない方が喜ばれると思うぞ?』

「そういうものか? 人間社会は複雑なのだな」

静かなる海は話が通じる神使だが、やはり基本は獣。人間とは思考や倫理観が違っているんだろう。

もしかしたら、神から授けられた力を隠すような行為が、理解できないのかもしれない。

「ふーむ? では、残りの神剣の情報も、語らぬ方がいいか?」

『あー、いや。できれば、神剣の情報は知りたいんだが……』

あれ? これ、全部の情報を聞いてから口止めしたほうが良かったか?

「神剣のことしりたい」

「では語るか。まあ、残りの神剣に関しては、今代の使い手の情報は含まぬゆえ、問題なかろう」

ということで、お話し続行だ。次に名前が挙がった神剣は、ヨルムンガンドであった。

「蛇帝剣・ヨルムンガンドは、その名の通り巨大な海蛇を召喚する神剣である。大昔、海を荒らしまわった巨大な魔獣を、神級鍛冶師ファーゴが封じて生み出された剣であるな。その製作には我らも関わっておるのだ」

「そうなの?」

「うむ」

ヨルムンガンドはダンジョンコアを食らうことで異常な力を手に入れた海蛇の魔獣で、リヴァイアサンから逃げ切ることが可能なほどの特異な成長を遂げていた。

その時期、偶然ファーゴと知り合った海神龍の眷属が彼にヨルムンガンドの情報を教え、その力を封じて神剣と成す計画が立てられたらしい。

「海蛇と言うておるが、陸も空も往けるぞ。まあ、海が得意なことは間違いないがな。今回のような外部の者の力を借りねばならぬ時、歴代のヨルムンガンドの使い手がよく協力してくれたものだ」

武勇伝を語りながら、懐かしそうに遠い目をする静かなる海。現在はどこにあるのか分からないらしいが、彼らからすると親しみのある神剣であるようだ。

ヨルムンガンドは、普段は海蛇が巻き付いたような意匠の三又の槍であるらしい。

「水霊剣・クリスタロスも、それなりに詳しいぞ。あの剣は水中での活動も可能とするので、歴代の使用者は海中での冒険を主とする者も多かったのだ」

クリスタロスは神剣を開放せずとも、水中呼吸や水圧耐性を得ることができ、海の中でも陸と変わらず――むしろ、海中の方が強い可能性さえあるという。

そこで、多くの使用者が海中のダンジョンや、魔獣の狩猟をメインに活動していたそうだ。それ故、海神龍の眷属とも接する機会が多く、共闘することも頻繁にあった。

クリスタロスの能力は、イグニスの水版という感じだった。水を自在に操り、水中、海中での行動に補正が入る。代償がレベルという点も同じだ。

同じ神級鍛冶師が作った同系統の神剣は、やはり似るのだろう。

「最後が、レイジングロア?」

『これは、完全に初耳だな』

「獣心剣・レイジングロア。敵としてまみえたことが一度あるというだけなので、詳しいことは分かっていない」

やっぱり、持ち主によっては神獣相手でも敵対することがあるよな。何百年か前、その剣の持ち主は突如として海神龍の眷属が眠る神殿に姿を現した。

眷属たちは休眠と活動を交代で繰り返しており、普段から活動しているのは半数程度であるらしい。その休眠期に体を休める場所が、世界中の海に存在していた。

当時、静かなる海は休眠期であったが、侵入者を感知して目覚めたという。

そして、侵入者の男の手に握られていた長剣こそ、神剣であった。

翡翠を削り出して作ったかのような美しい長剣であり、表面には文字のような文様が彫り込まれていたそうだ。

「開放後は、同じような文様の彫り込まれた、翡翠の篭手であった。その神剣には、魔獣を従わせ、従魔とする能力があったらしい。そして、我ら海神龍の眷属を従魔とするために狙ってきたのだ」

男は神剣の力で脅威度Bクラスのシーサーペントを従え、海の底までやってきたようだった。

ただ、その神剣が力を発揮することはなかった。静かなる海たちに一斉に攻撃を加えられ、這う這うの体で逃げていったのだ。

レイジングロアは、直接戦闘力が低いタイプの神剣だったのだろう。それに、静かなる海たちは、神獣の眷属。つまり、準神獣級といえる。

そんな準神獣たちに一斉に襲い掛かられては、さすがの神剣使いでも無事では済まないらしい。

「とまあ、我が知っている神剣の情報はこのくらいだが、満足してもらえたか?」

「ん!」

『ためになったよ。ありがとう』