軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章 フランとクーネ 07

クーネの興奮が落ち着くと、再び釣りを開始する。

ただ、先程とは違って釣果は全く上がらなくなってしまった。餌を生きた魚に替えたせいで、普通のサイズの魚が釣れなくなっちゃったからね。仕方がない。

ただ、そのかいあってか海中の大きな気配がこちらへと寄ってくるのが分かる。しっかりと活餌に興味を示しているんだろう。

それから息を潜めて待つこと30分。最初にアタリがあったのはフランの竿であった。

「きた」

フランの竿が一気にしなり、かつてないほど曲がっている。

これだけ引かれて、糸が切れないのが不思議なほどだ。強化魔法がしっかりと仕事をしているのだろう。

「おー! フラン! 頑張るニャ!」

「オンオン!」

クーネとウルシの声援を受け、フランがさらに踏ん張る。

「ん!」

リールなど付いていないので、腕力で引き寄せるしかない。魔力を流すことで糸が倍近くまで伸縮する機能もあるが、それだけで魔魚を釣り上げることはできないのだ。

普通なら時間をかけて弱らせるか、海中に引きずり込まれるコースなのだろう。だが、フランは普通ではない。

「むん」

フランは全身に力を籠めると、釣り竿を一気に引き上げた。その勢いで、海中にいた巨大な魔魚が海面に飛び出してくる。

それは、ローニンアジと呼ばれる魚によく似た黒い巨大魚だった。フランからすれば、大して重い獲物でもなかったんだろう。

高々と跳んだ魔魚が、フランに引かれて落ちてくる。それを念動で受けとめて、釣り上げ完了だ。ビチビチと跳ねて活きがいいね!

「おー! いいサイズニャ! これは美味そうだニャ!」

「オン!」

「ふふん」

褒められてドヤ顔のフランだったが、クーネがすぐに自分の竿に向き直った。

「こっちもきたニャー!」

「おー。クーネ、がんば」

「オンオン!」

「任せとけニャ!」

ただ、クーネはフラン程うまくはいかなかった。ステータス的に速度特化で、腕力はさほど高くはないのだろう。

さらに、かかっている魚がフランよりも大分大きい。もしかしたら違う種類の巨大魚なのかもしれない。

フランが釣り上げた魚が120センチくらいなのに対し、2メートルを超えるサイズなのだ。

クーネは左右に走りつつ糸を引き、時間をかけて魚を弱らせていった。これが本来の釣り方なんだろう。

「ウニャニャニャニャニャニャー!」

「クーネ、あとちょっと」

「オンオン!」

「ニャニャー!」

15分後。

クーネに振り回され続け、魚の動きが鈍ってきた。対するクーネはまだまだ元気である。これは、もうそろそろ勝負がつきそうだ。

2メートルを超える化け物魚が、ついに釣り上げられるぞ!

「ウニャニャ――ニャ?」

「!」

「オ、オン!」

クーネがさらに釣り竿を持つ手に力を込めた、その時であった。

強い魔力を持った何かが、凄まじい速度で入り江内に侵入してくるのが分かった。背びれしか見えないが、巨大な魚か?

俺たちが巨大魚と呼んでいたメーターオーバーの魚が小魚に思えるほどのサイズだ。以前釣り上げた艦砕マグロよりも大きいんじゃないか?

あいつは沖合の深い海に潜んでいたが、まさかこんな浅い入り江にこのサイズの魔魚が現れるだなんて……。

その魚は速度を落とさず、一気にこちらに向かってくる。狙いはフランたち――ではなく、クーネの竿の先にかかっている魚か!

「ギニャァァァ!」

「クーネ!」

出現した超巨大魚が、クーネの竿の先で暴れている黒い魚に食らいついた。クーネの体がガクンと揺れ、ズリズリと海の方へと引きずられ始める。

これは、助けなきゃマズいか?

「竿離した方がいい!」

「ニャハハハ! 何言ってるニャ! 最終的にはこいつを狩る予定だったんだから、むしろラッキーニャ!」

『はぁ? え、入り江の主って、こいつのことだったのか?』

「当たり前ニャ! ニャーたちよりもちょっとデカい程度の魚を主だなんて呼ばんニャ!」

クーネの予定では、メーターオーバーの魚はあくまでも前哨戦で、あいつらを捌いてその巨大な身を餌にしてこの超巨大魔魚を狙うつもりであったらしい。

「今日こそ、釣り上げてみせるニャ!」

クーネはすでに何度もこの魚と対決しているらしいが、釣り上げたことはないという。そりゃそうだろう。

「……? 魔術でやっつければ?」

「ニャに言ってるニャ! これは釣りニャ! 己の力で釣らなきゃ意味ニャいニャ!」

何か釣り人としての拘りがあるらしい。だが、2メートルの魚であれだけ苦労していたんだぞ? こいつを釣り上げるのは……。

案の定、クーネはドンドンと海へと引きずられ、片足が波に晒され始める。

「ぬぉぉぉ! 本気中の本気ニャー!」

攻撃魔術はいかんのに、強化はありらしい。全身に魔力を漲らせて、足を踏ん張る。だが、それでも魔魚を釣り上げられそうには思えなかった。

少しずつ、クーネにも疲労の色が見え始める。以前フランが艦砕マグロを釣った時だって、糸を通して電撃を叩き込んだりしたのだ。

すると、クーネがこっちを見て叫ぶ。

「フラン手伝うニャ!」

「わかった。どうすればいい?」

「ニャーの腰を持って、引っ張るニャ!」

「ん!」

2人で釣ろうというらしい。魔術は駄目でも、協力プレイは良いのか? 釣り人の拘り、よく分らんな!

「引くニャー!」

「おー」