軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑章 フランとクーネ 06

クーネの案内で入り江に辿り着くと、なかなか美しい場所だった。

海側の出入り口が狭めの、直径30メートルくらいの円形の入り江である。

水の透明度は高く、砂浜は白い。入り江の崖の上からは突き出すように松っぽい樹木が生え、風光明媚とはまさにこの場所のことだろう。

道中では小型の魔獣を何体か狩っているが、成果というには物足りない。

やはり、クーネが言う大きな魔魚を獲りたいところである。

入り江の中の気配を探ると、確かに大きな魚の気配がある。体長は1メートルを優に超えるだろう。地球だったらモンスターと言われるようなサイズである。

どうやって倒そうかな? 魔術で簡単にゲットできるだろうが、クーネは何やら釣竿を取り出している。

クーネの見せ場を奪うのもあれだし、何よりも魔術でお手軽ゲットではフランの息抜きにもならない。ここはクーネのやり方に合わせておこうかな?

「これを使うニャ!」

「おー、かっこいい」

「ニャハハハ! フランは見る目があるニャ! 餌はその辺の石を適当にひっくり返して捕まえるニャ」

「わかった」

異世界でも、釣りでやることは基本変わらない。ただ、釣竿には文字のようなものが刻まれていた。

ただの装飾ではない。全体から魔力を感じるのだ。

「これは、糸と竿を強化する魔法陣ニャ。このスーパーウルトラグレート釣竿ニャら、巨大な魔魚相手でも折れないんだニャ!」

「おおー、すーぱーうるとらぐれーと!」

「フランの方はハイパーエクセレントミラクル釣竿ニャ」

「ほー!」

ネーミングセンス! でも、フランはその名前を聞いて目をキラキラさせているな。お気に召したらしい。

もしかして黒猫族ってネーミングセンスが死んでるのか? それが種族特性? いや、まさかね。

「それじゃ、釣るニャ!」

「ん」

砂浜から少し移動したところにある岩場で、フランたちは釣り糸を垂れた。フランは以前にも釣りをした経験があるので、意外と様になっているのだ。

「ほほう。中々上手いニャ!」

「ん!」

「素人相手に大人げないと思っていたんニャが、フランなら問題なさそうニャ! どっちが大物を釣るか勝負ニャ!」

「のぞむところ」

ということで釣り勝負が始まったんだが、どちらにもかなりの釣果があった。どうやらこの入り江の魚はスレていないらしい。

考えてみりゃ町からも遠いし、クーネ以外の釣り人なんてほとんど来ないのだろう。

2人とも、1時間で10匹近い魚を釣り上げている。まあ、サイズは小さいし、いわゆる雑魚に近いけど。

食べれば美味しいようなので、あとで料理してみようと思う。だが、それ以外にもある利用法を思いついたのだ。

俺はフランに指示を出して、釣ったばかりの魚の尾鰭に針を付けさせた。体が非常に小さく、尾が巨大な形状の魚だ。

いわゆる活餌ってやつである。大きな魔魚を釣るなら、これくらいやってもいいだろう。クーネは首を傾げながら、その手元をじっと見ている。

「ニャにしてんのニャ?」

「でっかい魚、これでつる」

「どういうことニャ?」

「でっかい魚釣るなら、小っちゃい餌じゃなくてこれくらいの餌が必要」

フランの説明を聞いたクーネが、雷に撃たれたかのように驚愕の表情を浮かべながら硬直してしまった。

そして、フランに詰め寄りながら絶叫する。

「て、天才かニャ! 盲点だったニャ! まさか、こんな釣り方があるだニャんてっ!」

独学で釣りをしていたクーネは、魚で魚を釣るという発想には思い至らなかったらしい。フランを褒め讃えている。

「フラン! 凄いニャ!」

「これは師匠に教えてもらった」

「ニャ? 師匠? フランのお師匠さんはどんな人ニャ?」

おや? クーネは俺のことを知らんのか? まあ、国交が再開されたとは言え、レイドスはまだまだ閉ざされた国だしな。情報も入りやすいとは言えないのだろう。

ここは自己紹介しておくか。クーネなら大丈夫だろう。信用してるっていうよりかは、こいつを疑うのが馬鹿らしいって感じだが。

『やあやあ、俺がフランの師匠だ。よろしくなクーネ』

「……? どっからか声が聞こえたニャ! ニャーの名前呼んでたニャ! ニャに者ニャ! 姿を現すニャ!」

『もう姿を現してるよ。よっ!』

俺はフランの背から浮かび上がると、クーネの前へとフヨフヨと移動する。

『俺はフランの相棒で神剣の師匠。よろしくな!』

「ニャァァァァ! け、け、剣が喋ったニャァァ!」

おー、いいリアクションだ! 芸人さんみたいに尻もちをついている。ここまで驚いてくれると、自己紹介をしたかいがあるね。

「し、しかも神剣ニャ? フランは神剣使いだったのかニャ!」

「ん」

「すっげー! すっげーニャ! 喋る剣も神剣もこんな間近で初めて見たニャ!」

興奮しまくりのクーネ。この国にも神剣チャリオットがあったが、邪神を封印するためにずっと安置されていたわけだし、しっかりと見る機会なんてなかったんだろう。

神剣の主であるカレードは今は北に身を寄せているはずだが……。

「カレードに会ったことないの?」

「王様はまだ療養中だニャ。ニャーみたいな煩いやつはお体に障るからまだ会っちゃダメって主から言われてるんだニャ!」

クーネの主って北征公だよな? よく分かってらっしゃる。それに、クーネも全然悔しそうじゃない。むしろ、「だよねー」って感じの表情だ。

自分がうるさいということは自覚しているらしい。

「ニャニャ! ちょっと触っていいかニャ?」

『おう構わんぞ。でも、装備はするなよ?』

「装備はダメニャ?」

『ああ、フラン以外が装備すると、危険なんだ。電撃がバリバリとな』

「おー、さすが神剣ニャ! セキュリティもバッチリニャ!」