軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1083 フリーダムな援軍

砂塵舞い上がる荒野。木立はおろか下草さえ碌に生えず、乾燥して赤茶けた地面が続いている。

クランゼル王国とシャルス王国の間に横たわるこの荒れた土地は、利用価値がないがゆえに両国とも領有を無理には主張せず、中央を国境として分割されていた。

その荒野を、物言わぬ軍勢が沈黙と共に進む。

響くのは行進によって生み出される妙に硬質な音と、鎧が擦れて発せられる不快な音だけだ。無駄口はおろか、呼吸の音も聞こえてこない。

それも当然だ。

進軍しているのは、人ではなかった。

最も多いのは、アンデッドたちであろう。鎧を着こみ、槍を担いだまま同じ速度で延々と歩き続ける、ゾンビの兵隊である。

アンデッド本体、装備、共に質が悪く、戦力としては微妙な感じだ。ただ、数は多いので、占領や陽動には使えるのかもしれない。その数は優に5000を超えているだろう。

そんなアンデッドたちを率いて軍勢の先頭を進むのは、宝石のように輝くゴーレムたちだ。

それは、宝石ではなく、魔石でできたゴーレムであった。100体を超える異形のゴーレムが列をなして進む姿は、壮観ですらある。

この人外の軍勢からかなり遅れて、シャルス王国軍と思われる人の軍隊が追従していた。アンデッドたちを怖れているのか、露払いに使うつもりなのか、1キロくらい距離があるんじゃないか?

(魔石兵)

『ああ。間違いなく、レイドス王国の軍勢だ』

ゼライセなのか、その弟子のアンセルなのかは分からないが、この侵攻に関わっていることは間違いないだろう。

「ありゃぁ、どっかで……」

「ゼライセの魔石兵」

「そうかっ! あの時の!」

ガムドが、手を打って叫ぶ。バルボラでの騒ぎの際、ゼライセが操っていた魔石兵を思い出したんだろう。あの時は、数体の魔石兵相手に、冒険者の集団が大混乱に陥った。

ガムドも、反射能力持ちの魔石兵相手に苦戦をしていたはずだ。しかも今回の魔石兵は、今までになく強いだろう。以前戦った物に比べて、動きがスムーズなのだ。

最新型ってことか? ともかく、過去最強の魔石兵に違いなかった。

『まあ、強くなっていようが、俺にとってはあまり関係ないが』

(ん! 全部師匠のごはん!)

『ははは! その通り! 美味しく頂いてやるぜ!』

とは言いつつ、防御はしっかり固めよう。なんせ、どんな攻撃が飛んでくるかは分からないからね。

「ガムド。魔石兵は私がやる」

「そういえば、嬢ちゃんはアレを一発で倒すスキル持ってるんだったな」

「ん」

「よっしゃ! それじゃあ、うしろのアンデッドと人間どもは俺たちに任せな」

「ん。ガムドとウルシでお願い」

「オン!」

ウルシが頷くが、ガムドは首を横に振った。

「そうじゃねぇよ」

「どゆこと?」

「感じねぇか?」

「? あ、何かくる……」

フランと同時に俺も気づく。高速で近づいてくる飛行物体があった。少し待っていると、茶色いワイバーンのようなものが近づいてくるではないか。

一部が腐り落ちて、内部の骨や内臓が露出している。間違いなく、アンデッドだ。だが、レイドスの仲間ではなかった。

「ディアス、フェルムス、エイワース」

『最強爺さん揃い踏みかよ!』

アンデッドワイバーンの背には、3人の老人が搭乗していたのだ。

「よく来てくれたな! みんな!」

「久しぶりじゃのう。ガムド。相変わらず暑苦しい」

「お前も相変わらずなよっちいなエイワース」

王都での共闘経験があるエイワースが、ワイバーンの手綱を握っている。死霊魔術のレベルは低いが、それでこんなワイバーンを使役できるのかね? まあ、エイワースならなにをできてもおかしくはないだろう。

「この男は不健康というんだよ」

「お前は相変わらず口が悪いままだなディアス」

ウルムットのギルドマスターにして、現役のランクA冒険者ディアス。この爺さんとは武闘大会で激戦を演じたこともある。俺の正体を知る、数少ない相手だ。

「戦場でいがみ合うのは止めなさい」

「はっはっは! フェルムスに迷惑を掛けんなよ2人とも!」

「ちっ」

「ふん」

竜料理が目玉の料理店『竜膳屋』の店主にして、糸使いのフェルムス。相変わらずイケオジだぜ。他のやつらと同世代とは思えん若作りだ。

竜墜のガムド、竜縛りのエイワース、竜転のディアス、竜狩りのフェルムスといえば、全員がランクA冒険者で構成された竜専門の伝説的パーティのメンバーだった。

「バルボラ防衛のために、呼んでおったのよ!」

「町の防衛なんぞつまらぬと思っておったが、面白いことになってきたではないか!」

「シャルス王国には武闘大会で迷惑かけられたからねぇ。少し肝を冷やしてもらうとしようか?」

「あまりはしゃぎ過ぎないように」

爺さんたちがやる気だ。それにしても、個性的なパーティだよな。まとめ役っぽいフェルムスの苦労が偲ばれるぜ。

「魔石のゴーレム共はフランに任せて、俺たちはアンデッドと、その後ろのシャルス王国軍を叩く。いいな」

「任せておけ!」

「了解だ」

「分かりました」

ディアスもフェルムスも、フランを心配するような声は上げない。その力を十分理解しているからだろう。

しかし疑問が一つある。

『ディアスって、こっちきちゃっていいのか? アレッサとか、王都で招集かかってるんじゃ?』

(はっはっは。王都は騎士だけで何とかなるさ。アレッサは……、大丈夫だよ)

『……そう言えば、クリムトを怖がってたな?』

(そ、そんなことないよ! 決してクリムト殿と一緒に戦うのが怖くて、こっちにきたわけじゃないから! 昔の仲間を見捨てられなかっただけさ!)

この爺さん、相変わらずフリーダムだぜ。いや、ここにいる全員がフリーダムだけどさ。

「では、いくぞ!」

「ん」

「「「おう!」」」