軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1035 師匠の変化

「神罰……? なぜ私が、そんな! 私は罪なんか犯していない! 悪いのは竜人たちよ! 害虫を駆除しようとしただけじゃない! そもそも、あんなトカゲモドキたちを作った神々が悪いわ! あんな奴らを殺したって、罪になるのがおかしいの! 私は悪くない!」

神様にまで責任転嫁をし始めたぞ。一度死んだことで開き直っているのだろうか?

聞くに堪えない喚き声の中、草木の神はただ一言告げる。

「人の罪は人が裁けばよい。汝の罪は、深淵喰らいを利用したこと」

「だったら、ゲオルグはどうなのよ! 奴も生き返らせて罰を与えなさいよ!」

「ゲオルグは、邪神の欠片から御子の役割を与えられていた。力を借り受けることに問題はない」

「じゃあ、トリスメギストスは!」

「彼の者は、邪神の欠片と縁を結んでいる。それ故、此度のことは罪にはならない」

「はぁ? 縁? 何か繋がりがあるってことなの? 邪神が? 自分を攻撃しているトリスメギストスと?」

「そうだ。深淵喰らいに取り込まれている邪神の欠片たちは、解放を望んでいる。それ故、トリスメギストスやゲオルグのように、深淵喰らいを滅ぼすことを考えるものに力を与えることもあるのだ」

なるほど。深淵喰らいとその中に取り込まれた邪神の欠片をどこか同一視していたが、それは違うってことか。

まあ、邪神の欠片に力を与えられたら、普通は暴走するだろうが。ゲオルグの行動がおかしかったのは、それが理由なのかもしれない。

トリスメギストスはこの世界でも最高クラスの強者であるがゆえに、支配に抗えるのだろう。

何を言われても納得できないメルトリッテは、神に向かってさらに喚き立てる。

「そもそも、邪神なんでしょ! 悪い神様なんでしょ! 利用して何が悪いのよ! あんたたちだって、大昔に自分で滅ぼした相手でしょ!」

「神は神である。人が神の理を不当に侵したこと、それが罪なのだ。罪人よ、罰を受けよ」

「なんで、なんでよ! ふざけんな! 私がなんで――」

そう告げて、神は唐突に去った。高速で天に昇っていくということは、神様のいる場所は天空の先にあるのか? 月に住んでいるって言う伝承、あながち嘘じゃないのかもしれん。

皆が呆然とする中、メルトリッテも同時に消えてしまっていた。どこかへ転移で送られたのだろう。もしかして、トリスメギストスの城か?

だとしたら、あの城にはますます近寄りたくなくなったな。まあ、今は粉々だけど。

トリスメギストスが消えたってことは、その帰還先である玉座の間周辺は無事なのかもしれない。

しばらく誰も声を発さなかったが、最初に動き出したのはイザリオであった。次いで、ジェイン、メアが声を上げ始める。神剣使いは、神気への耐性が強いのかもしれない。

「いつまでもここでボーっとしてるわけにもいかんし、どう行動するか決めないとねぇ」

「城の確認は必須よね」

「怪我人の運搬もせねばならんでしょう」

その後、部隊を2つに分けて行動することになる。

1つが城周辺の確認を行う部隊。イザリオにセリアドット、ジェインら魔族に竜人の精鋭少数。そんな感じの構成だ。

残りは、負傷者の救助と介抱、運搬を行う、帰還部隊。運搬能力が高いドワーフたちはこちらだ。メアたち獣人国組、ヒルトたちデミトリス流も、護衛を兼ねて帰還組に入っていた。

俺たちは、城に行く部隊である。

本当は帰還部隊に入りたかったが、やはりトリスメギストスの状態が気になったのだ。それに、ファンナベルタが復活するのかどうかも確かめておきたい。

俺は「スペアがあるのか?」と問い、奴は「ない」と答えた。だが、スペアなど用意するまでもなく、トリスメギストスと一緒に復活するのだとしたら? 着ている衣服は、一緒に復活するのだ。ファンナベルタも復活しているかもしれない。

それを確かめておきたかった。

荒野を皆でトボトボと歩く。

勝ったはずなのに意気軒高とはいかないのは、犠牲が多かったせいだろう。それに、トリスメギストスの狂気性に、メルトリッテへの神罰と、衝撃的な出来事も多かったのだ。

誰もが無駄な口を叩かず、ただ黙々と歩いていた。いや、ジェインは部下と楽しげに話しているが。

意外と、こちらを見る視線は少ない。俺が盛大に動いたが、神剣やら巨大抗魔に比べたら、そんな道具やスキルもあるかという感じなのだろう。

(師匠、だいじょぶ? ファンナベルタも、吸収した)

『ああ、今のところはな』

嫉妬の原罪を取り込んでしまわないか不安だったが、大丈夫だった。共食いの場合は魔石吸収と違って、相手のスキルを全部そのまま奪うようなものじゃないからだろう。

ただ、全く何も無しとはいかなかった。嫉妬の欠片というスキルを得てしまっていたのだ。これは、嫉妬心が刺激される代わりに、目利きや鑑定にボーナスが入るというパッシブスキルだった。人の物を羨むってことなのか?

ファンナベルタの感情が、あれだけ強く流れ込んできたのだ。覚悟はしていたが、やはり影響が出た。

効果は微小っぽいので、ほとんど効果はないと思う。少なくとも、今のところ自分が嫉妬深くなった気はしなかった。

『あと、十字の魔剣を食ったことで変化した部分もあるから、どれがどの共食いの結果なのか、いまいち分かりにくいんだよな』

攻撃力は、オーバーグロウスを吸収した後から、110上昇して、1612となっている。十字の魔剣と希望の運び手、ファンナベルタの力を得たにしては、あまり上昇していない。

オーバーグロウスは1振りで150も上がったのだ。いや、オーバーグロウスは強化されまくっていたし、あれが特殊だったのかね?

保有魔力は+5000、耐久値は+700くらいだろう。魔力は大幅に上昇した。これだけでもかなり有難い。もう数値の上では、開放前の神剣なら相手になるレベルだ。まあ、廃棄神剣を食らいまくったからなぁ。

残念ながら、伝導率は上昇してない。SSのままだ。で、肝心のスキルなんだが……。

『通常スキルは、嫉妬の欠片以外は、情報処理と献身っていうのが増えたな』

情報処理は複数の物事を同時に考えられるっていうスキルで、同時演算の下位互換っぽい。ただ、こっちはスキルや魔術の同時発動などにより効果を発揮するようなので、単純に戦闘力が上がったと考えておけばいいだろう。

多分、ファンナベルタから得たんじゃないかね? 嫉妬の原罪を得てしまう前は、まさに冷静沈着な性格だったと聞いているしな。ああ、でも、希望の運び手の力も含まれているかもしれない。アナウンスさんと同じような存在だって話だし。

献身はちょっと不思議だ。誰かを想っている限り、その存在の為に働く活力を得ることができる。そんな内容だった。

つまり、俺の場合はフランのために戦う時にボーナスが入るってこと? まあ、悪いスキルではなさそうだ。

あと、氷雪スキルのレベルが、1から3に上がっている。氷雪魔術の使い手である、ファンナベルタを共食いしたことで起こった変化だろう。

『で、こっちは多分、エビルイータの能力を取り込んだ結果だろうな』

金式スキルが、金色スキルへと変化していた。

対抗魔特効の力はそのままに、倒した抗魔の魔力を俺の刀身内にしばらくの間チャージしておくことができるようだ。抗魔を斬って魔力を吸収し、その力でさらに抗魔と戦う。

まさに抗魔と戦うためのスキルであった。正直、もうすぐこの大陸とはお別れのつもりだから、活躍の場面は少なそうだけどね。

『で、最後がこいつか』

邪気支配、邪気奔流が消滅し、新たに『邪気征服』というスキルが追加されていた。これは、フォールダウンを共食いしたことで起きた変化だろう。

邪気に影響を及ぼすスキルが統合されたのだ。効果は、邪気を操り、邪気を増幅し、邪気からの影響を排除したうえで、邪神との交信を可能とする。今までの邪気系スキルの上位互換と考えれば良さそうだった。

ああ、あとは名前だな。ステータスにはハッキリと人剣・師匠と表記されている。

『じんけんししょう……やっぱダサい!』

変化した時も思ったけど、もっと他にあるだろ!

(そんなことない。すごくかっこいい)

『……本当か?』

(ん! 剣でありながら人でもある師匠にピッタリ! 超カッコイイ)

『ほ、本当にそう思う?』

(ん!)

俺は俺であると同時に、フランの剣でもある。その意思も尊重せねば。

(激強超絶カッコいい剣・師匠と同じくらい、似合ってる)

『……そ、そうっすか』

(ん!)

フランがこの名前を喜んでくれているなら、いいのだ。そういうことにしておこう。