作品タイトル不明
1036 獣王に並んだ?
『変わったのは俺だけじゃないぞ? フランとウルシも、レベルが1つアップしている』
(おおー!)
(オン!)
あれだけの激戦、あれだけの強敵だ。1つしか上がらないのかと思ってしまうが、大勢で戦って、70レベル超えのフランのレベルが上がったのだ。
むしろ、普通の下級、中級抗魔に換算したら数万――いや、数十万を超える経験値を奴1体が持っていたのだろう。
実際、周囲の冒険者たちの話を盗み聞くと、10以上レベルアップしたという者が相当数いた。
今後、フランがレベルアップするには、恐ろしいほどの経験値が必要となりそうだ。それに、敵の質も重要かもしれん。
もうゴブリンくらいじゃ、どれだけ倒さねばならないのか分からない。下手したら経験値が入らない可能性すらある。
今後はレベルよりも、スキルに磨きをかけることの方が重要かもしれなかった。実際、今回フランが得たのはレベルだけじゃない。
獣蟲の神の加護は言うに及ばず、恐怖耐性や忍耐、睡眠耐性に再生、不屈など、異常な状況に身を置かねば短期間に得ることが難しいスキルを、複数得てしまっている。
無論、この大陸での戦いだけが理由ではないだろう。俺と出会ってからの様々な激闘の数々が、フランにこれらのスキルを身に着けさせたのだ。
あと、遠視や蹴脚術や士気高揚、平衡感覚なども、今までの経験が生きたスキルだ。瞬発スキルはレベルマックスに達し、新たに瞬歩という上位スキルが生えていた。敏捷力に磨きがかかるね。
ステータスの伸びは、69から70に上がった時ほど、膨大ではない。あれは神獣化の影響や、キリの良いレベルでのボーナスなどが重なった結果だったのだろう。
それでも、HPやMPは100以上伸びたし、敏捷は70くらい上昇しただろう。おかげで数値は1000を超えたのだ。
他のステータスも、全て30~40ほど伸びている。
やはり、70レベルからはステータスの伸びが途轍もなく上昇し、急激に強くなれるようだ。その分、レベルを上げるのは相当苦労しそうだが。
さらに称号も得ている。その名も『神獣の末裔』だ。
自身の体に流れる神獣の血を感じ取ることができたものに与えられる称号だという。獣蟲の神の加護の力を借りて、神属性を操ったことで発現したのだろうか?
効果は、神獣としての本能が強くなるという、アバウトな内容だった。いまいち理解できんが、神獣化の切っ掛けになるかもしれないな。
でも、この称号って獣王は絶対に持っているよな? なのに、以前見た時には鑑定できなかった。やはり、上位のスキルや称号は、見れていなかったのだろう。
そうなると、過去に見た様々な人物たちも、実はいくつかの重要なスキルや称号が把握できていないかもしれん。今なら、視れるのかね?
ウルシも71レベルとなり、各ステータスはフラン以上に伸びている。ここは魔獣としての特性なのだろう。HPなどは250も上がったのだ。
そんなステータスに比べると、スキルの伸びはさほどでもない。人と違って、スキルの覚えが悪いのだろう。
スキルもステータスも魔獣に負けていたら、人間なんかあっという間に滅ぶしな。
ただ、運搬と不屈というスキルをゲットしている。運搬は、いろんな人を乗せて運んだからか? 不屈はフランと同じで、厳しい戦いを経験したからだろう。
『それにしても、2人とも71レベルか』
これは、出会った頃に鑑定した獣王と同じレベルだ。フランの場合、ステータスも互角と言っていいだろう。それどころか、アマンダのステータスは完全に上回った。種族の差なのだろうか?
いや、称号が見えていなかったことを考えても、あのレベルやステータスがどこまで信用できるか分からんけど。
それでも、フランが強者たちの世界へまた一歩近づいたことは間違いない。
短期間でここまで上り詰めることができたのは、フランの努力があってこそだ。そりゃあ、俺の力だって大きいことは認める。でも、俺がどれだけ強かろうとも、それを振るうのはフランなのだ。
今の結果は、フランが頑張ったからこそ得られたものだった。
とは言え、懸念もある。それは、スキルだ。
獣王リグディス(仮)に肉体面では並んだとは言え、それはあくまでも数値上のことでしかない。
問題は、スキル面で劣っていることと、経験面では完全に負けていることだ。
リグディスは槍王であり、熟達の魔術師であり、経験豊富な英雄だった。フランも俺もまだ、そこに遠く及んでいない。正面から戦えば、あっさりと負けるだろう。
今ここで、獣王に並んだと褒めた方がいいのか、まだまだだと戒めた方がフランのためになるのか……。
(師匠?)
『ああ、その、フランたちのレベルが獣王に並んだなーと思ってさ』
(む?)
俺がそう言うと、フランが顔をしかめた。
『どうした?』
(レベルが一緒でも、全然負けてる。喜んじゃダメなやつ)
(オン)
『いやいや、ステータスじゃ互角だぞ?』
(それでもダメ。師匠がいてくれたら戦える。でも、私だけじゃ絶対に勝てない。スキルも経験も、負けてる)
フランも俺と同じ考えに至ったらしい。悔し気な表情だ。
(レベルだけ上がっても、スキルが育ってない。パワーレベリングしてる貴族と一緒)
『いやいや! さすがにそれはないって! 貴族どもよりはマシだ! 獣王は何十年も戦い続けてるんだから、負けてるのは仕方ない。いつか、追いつける日がくるって』
(ん。がんばる)
(オン!)
(超がんばる!)
(オンオン!)
フランたちがちょっと強くなったくらいで、天狗になるわけがなかったな。むしろ向上心が強すぎて、無理をしないかの心配をする方が先だったわ。