軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

317話 ゴルバス砦ふたたび

兎にも角にも俺が必要と考えた物をいかに調達するか。まずはあらゆる資源を調達して、分類、性質の調査をする必要がある。特に鉱物資源に関しては、今まで顧みられることのなかった鉱物から、有用な物質が見つかることが期待できるかもしれない。

「やはりドワーフは本格的に引き入れねばなるまいて」

その帝王陛下の発言に、皇帝陛下も反応する。

「しかしやつらは表面上協力的に振る舞ってはいるが、色々と面倒だぞ?」

鉱山や鉱物資源に関しての知識はドワーフの右に出る者はいない。レンズの制作で協力してもらっているドワーフたちは居るものの、計画の全貌は教えてはいない。

ドワーフは自らの技術を秘匿する傾向がある。ガラスの利用でも揉めたし、オリハルコンの精製方法などその最たる例だ。ドワーフ以外にオリハルコンの加工はできないし、他にどんな知識を隠し持っているか知れたものではないと皇帝陛下が言う。

それを計画を知らせずに引き出せるかというと、恐らく無理だし手間がかかりすぎる。

「面倒でもそろそろドワーフにも参加してもらいましょうか」

世界の危機なのだ。否が応でも協力はしてもらう。俺のその言葉に皇帝陛下が言った。

「しかしまずはどの程度の知識を引き出せるか、普通に試してみるべきではないか?」

「それが難しいから計画に引き入れるって話では?」

「だがこれがある」

そう基礎科学教本をトントンと叩いてみせた。魔力開発法もやろうと思えば取引材料にはなるのだが、あれはすでに神殿に貴賤、種族の区別なく公開するようにお願いしている。今からドワーフとの取引材料にしたいとは言い難い。

「これをほんの一部だけ見せて、あやつらが大人しくしていられるか。きっとドワーフどもから計画に参加させてくれと頭を下げてくるぞ!」

「それは面白そうだ。ワシも協力しよう」

帝王陛下と神国皇帝が悪い顔で笑い合っている。何かドワーフには嫌な思い出もさせられたんだろうか。

「ではそちらはお任せします。俺が必要なら仰ってください」

とりあえずはこんなところだろうか。まずは基礎科学教本を読み込んでもらって、今日の俺の話、ロケットの建造計画へ向けて何が必要か、それぞれで考えてもらうことになる。

「とりあえずこんなところか。次の会議は今日の話を踏まえてもう少し具体的なところを詰めていきたい。そうだな。帝都の研究所ができた後くらい、一週間後にしようか。何か質問があれば書状で提出を。では本日は集まってくれてどうもありがとう」

それくらいあればリシュラ王国の処遇も決まるだろうし、エルフの里での研究開発もいくらか進んでいるはずだ。

次は国王陛下との話し合いだ。別室、応接室へと移動して向かい合う。俺のほかにリリア、ウィル、フランチェスカ。国王陛下側は、王の他にはフランチェスカの父のストリンガー公爵に、内務大臣と紹介されたポールドウィン・ルクナーゼ子爵。国王の親友、懐刀だという人物。

「ヤマノス子爵。半年ぶりだな」

王都を発ってからまだその程度しか経ってないのか。

「ヒラギス戦後にごたごたが続いておりまして、挨拶が遅れて申し訳ありません、陛下」

そう言って座ったままであるが、素直に頭を下げる。だがそれに答えたのは内務大臣殿だ。その人物が俺を糾弾するかのように言う。

「転移でいつでも戻れたのだろう。何故報告に戻らなかった?」

「俺は個人の冒険者です。まだ正式に叙任したわけでもないので」

だから報告しろとか言われても意味がわからない。いや俺のやらかしたことを考えればわかるんだけどな?

「それでもリシュラ王国の臣下だ」

「マサルは誰かの部下ではないし、王国が何かの依頼をしたというわけでもなかろう」

そうリリアが反論する。

「叙任は決まっておるのだ。貴族としての責務を考えるべきではないか?」

「もちろんフランチェスカ殿の帰還に合わせて挨拶には伺うつもりではありました」

貴族の責務とか言われても、なったことないからわからんわ。

「しかし実際はこうして我らを呼びつけた。たとえ勇者だとしても無礼ではないか?」

「フランチェスカの去就が決まるのを待っての、これが一番早いタイミングだったんですよ」

もし正式に王都に赴くなら、どこかで一日確保する必要がある。あるいは半日なら……いやでも、結構面倒な話になりそうだしなあ。それに帝王と皇帝との顔合わせもできる。

「なればこそだ。帝国との婚姻のような重大事、なぜもっと早く知らせなかった?」

「それはフランチェスカ殿が望まなかったので」

ちらりと見るが目を逸らされた。説明してなかったのかよ。

「帝都での剣闘士大会出場に向けて集中したかったのと、心を落ち着けて考える時間がほしかったのです……」

帝国との婚姻ともなれば、様々な思惑が絡むことになる。要は自身でも迷っていたところを、国王陛下や両親に引っかき回されたくなかったのだ。

「そのことは良いではないか、ポールよ。慶事であるし、事が決まってからすぐに報告に戻ってくれたのだ」

「ではそのように。しかし帝国での勝手な活動はどう説明するのだ?」

「あれはウィルフレッド王子の送り迎えをしただけで、俺が何かしようとしたわけじゃ……」

「その後のこともか?」

帝国でのことはしっかりと説明を受けているようだ。いやアンは来なくて正解だったな。ティリカに関しては真偽官がいるとどうしても相手方に対して圧力がかかると遠慮したのだが、アンは王様との直接会談なんて恐れ多いし話すこともないと来なかったのだ。エリーとかは王国とは関係が薄いし、エルフ王も今回は計画と俺の処遇に関する話なので不参加である。

「帝国とのトラブルはエルフの問題じゃな。我らもそろそろ帝国との関係改善を考えねばという時に、少々のトラブルをいい機会だと捉えただけのこと。我らの外交問題をリシュラ王国が掣肘する謂れもあるまい?」

「エルフのそのような態度が、ひいては貴族共の増長を許すのだ!」

「それこそリシュラ王国内部の問題であろう、大臣殿」

「エルフもまたリシュラの民だ」

「それもどうかの?」

「貴様っ!」

「エルフの王国独立に対しての多大なる貢献、そしてその後は辺境の一角を守り通し、毎年軽くない税を収めてきたのだ。かつての我らは帝国との争いで疲弊しておった。王国の庇護は必要であったし、有り難くもあったのであろう。しかしあれから三〇〇年。そろそろ関係を見直す時期が来たのやもしれぬ」

「それがエルフ族の総意、エルフ王の意思であるのか、リリアーネ殿?」

そう国王陛下がリリアに問いかける。

「妾の意思が父上の意思、エルフ族の総意である。リシュラ王よ」

エルフがリシュラ王国から独立する話。王様に認めさせたのか。リリアと大臣殿が睨み合う。国王陛下は疲れたような表情をして、まるで傍観者のような雰囲気だ。

「まあまあ双方落ち着いて。リリアも、今はそんな話をする場面じゃないだろう?」

「そうじゃったな。王国は千年計画への参画に関してどう考えておるのじゃ?」

リリアの言葉に国王陛下と大臣殿が顔を見合わせる。俺の王国での立場も、エルフの独立問題もものすごく重要ではあるが、今は計画のことだ。

「私では判断はできかねます、王よ」

「ストリンガー公爵はどうか?」

「月へ行くなどと、荒唐無稽に聞こえますな。この本も見せてはもらいましたが……」

「どの程度説明したんだ、ウィル?」

「時間があまり取れなくて、概要くらいしか」

勇者と帝国の王子だけでも一大事で、しかもその帝国とのトラブルがあって、なぜか神国も絡んでいる。ちょっと急ぎすぎた気もするが、しかし時間を無駄にもできない。

「月へ行くという話は一旦、脇へと置いてください。要は新しい技術の開発なのです。望遠レンズは見ましたね? それとエルフ式城壁のこともすでに伝わっていることと思います。これは魔物に対抗するための技術なんです」

それには各国が連携しての研究体制に、人員も資金もたくさん必要となる。この部分は今日の会議での議題で話した。

「しかしそのために優秀な人材に資源と資金の拠出に加えて秘密厳守だと? 無茶振りにもほどがある」

「確かに負担は大きいとは思いますが、見返りは十分あると思いますよ?」

そもそもが計画が失敗すれば人族の破滅なのだ。無茶だとか言っている場合じゃないはずだ。

「その見返りもすぐにではないのだろう?」

「まあそうですね。一年か二年は最低でも待ってもらわないと」

そもそも投資もしないで見返りを貰おうなどと、そっちのほうが無理筋がすぎる。今作れるのはレンズだけど、レンズは神国と帝国で大々的にやる予定だし、石油はまだまだ試験段階。他も商用以前の問題で、開発資金はかなり必要となるだろう。

「しかもそれが一九年間?」

「しかしポールドウィン様、これは神託による計画なのです」

「神託であろうが、持ってもいない金貨は使うこともできぬ」

「国庫の状況はひどいものなのだ、フランチェスカ」

「そんなにですか、父上?」

「マサル殿。リシュラ王国には金がないのだ。二年の飢饉とゴルバスへの遠征失敗で国庫は底をつき、借金を重ねている有様だ」

そう公爵殿が言う。それでよくヒラギスに出兵したな。いやでもあれは小さな部隊だけだったか。

その魔境への遠征はエリーが言うにはあれは計画の見通しが甘すぎた、用意した戦力が少なすぎたのだそうだ。それでも王国が用意できる精一杯だったのだろう。

しかし戦力の壊滅に、その後のゴルバス砦の防衛と砦の強化は国庫にさらなる負担を強いた。

「王国には金が必要だ。新しい技術があるならなぜ王国に持ち帰らん?」

「これは神の使徒としての事業なんです。お金儲けなんかしてたら神罰が下りますよ?」

神罰という言葉に内務大臣殿もさすがに怯んだ様子だ。

「じゃあ資金はこっちでどうにかするとして、人だけでも出せませんか?」

「今のような状況で、訳の分からぬ計画に人を出すなど、またぞろ貴族共が騒ぎだそう」

次に何か失敗したら王権すらゆらぎかねない。今はどんな隙でも政敵に見せられない。脆弱な王権では計画の支援はできない、とそんなことをオブラートに包んで説明された。

「ふうむ。我らが資金を貸せば多少は状況がマシとなるじゃろうが、根本的な解決にならぬだろうし」

それにエルフもヒラギスで資金を大量に投じたこともあって、しかも今度は王国というそこそこ大きい国家の予算が相手だ。そこに帰ってくる宛もない資金を投じるというのは簡単な決断ではない。

「政敵の公爵は先代の王の弟で野心的な人物だ」

そう内務大臣殿が言う。先代の王は堅実な人物だったという。過不足なく王国を運営し、息子に継がせた。無能ではないが凡庸。長子というだけで王位を継いだ、そんな兄を恨む優秀で野心家の弟という構図だろうか。そしてアルブレヒト王も父親似の真面目だけが取り柄の人物だった。

内務大臣殿が話す王国の苦境はどこでも見られるものだ。年々大きくなる魔物の被害に出費は嵩み、民は疲弊していく。アルブレヒト王は弱る国力を復活させる手立てを他に見出だせず、ゴルバス遠征という博打を打って失敗した。

「この状況でエルフの離脱は王国に危機を招く」

「独立しても王家への支援を打ち出せば良いだけのことじゃ」

「しかしエルフからの税がなくなれば同じことだ。王国が荒れるのはエルフとて困るであろう?」

「当面は援助金として拠出すれば良い」

「それはいつまでだ?」

どこかで経済を好転させないと、エルフからの資金が打ち切られた瞬間、王国の財政はさらに悪化してしまう。

「妾に妙案がある。ゴルバスの地は広大で農業に適した肥沃な土地なのじゃ。前哨基地が完成した暁には、我らも兵を出して領域制圧の手伝いをする予定であったと聞いておる」

農地に適した場所、楽に開拓できるような土地はすでに利用されている。ビースト領も周辺に水源がなかったから捨て置かれていた土地だ。個別でみれば農地はまだまだ増やせるにしても、まとまった規模でとなると使える土地はそう多くはない。

俺やエルフなら運河でも引けばいいと簡単に言ってしまえるが、普通はそう簡単ではないし、そもそも領地をまたぐ場合、うちに農地を作りたいからそちらの川の水をくれとは難しい。現状でも雨が少なくなれば飢饉が起こるのだ。

「ゴルバスの地、我らで制圧してやろう」

「俺たちにそんな余裕はないだろ?」

戦争に統治。それがどれだけ手間がかかるか。実際にやってみるとよくよくわかる。

「制圧後の領地運営や入植に送り込む民に関してはもう計画がある。そうじゃな、大臣殿?」

「足りないのは戦力と資金だけだ」

それって戦争するのに必要なほぼ全部じゃねーか。しかし、それなら俺たちにはたっぷりすぎるほどある。

「それにマサルがおれば農地はすぐに広げられるであろう? 上手くいけば王国内の食料の三割をゴルバスの地で賄えるようになるという話じゃ」

じゃあお米を作ればもっといけそうだな。

「鉱山もいくつか候補地が見つかっている」

そう内務大臣殿が補足する。ほうほう。それはいいな。どのみち帝国でエリーの貰う領地も含めて、農地作りはやるつもりはあったのだ。とにかくこの世界は食料が足りないせいでの餓死者が多い。

「それだけの功績があれば伯爵か、あるいは侯爵にも値するであろう?」

「爵位とか領地はさすがにもういらんぞ?」

「しかし我らが戦い、マサルが開拓する農地を他にくれてやるのか?」

それはそうなんだけどなあ。

「そこはほら、王家の直轄地にするとか、フランチェスカにあげるとか……」

「それは戦った者が手にすべきだ」

そう言ってフランチェスカももちろんいらないと首を振って言う。

「そしてどうか頼む。リシュラ王国を助けてほしい」

お金も食料もなければどうするか。戦争をして略奪するのが手っ取り早い。しかし王国と国境を接しているのは帝国のみ。ならば内戦か。それとも民に重税を課すか。エルフは無理だ。強いし領地が辺境すぎる。エルフを倒せるほどの戦力を長期間動かす。それで王都に何が起こるかわからない。何が起こるにせよ、真っ先に被害を受けるのは平民たちだ。

「しかしそんなに上手くいくのか?」

「行くぞ」「行きますね」「マサルなら間違いなくできます」

リリア、ウィル、フランチェスカの三者が即座にそう断言する。

「新たなる税収に、王国民の腹を満たすに十分な農地じゃ。それにこれもエルフの功績の一つとなろう」

「もし上手く行けば、もうあやつらに下げたくもない頭を下げる必要もなくなりますな、王よ」

最悪失敗しても自分たちの懐は傷まない。

「もしゴルバスの地が得られるなら土地の領有は認めるし、侯爵位も約束する。計画への人員も用立てよう」

むう。いっそ王国は諦めるという手もあるが、簡単に見捨てられるようなら今の状況にはなってはいない。

「魔物は殲滅できても、その後の防衛はどうするんだ?」

「ヒラギスと似ておるのじゃ。二カ所ほど砦を建てて魔境との境にすれば、領内の安全は十分確保できよう」

さらにゴルバス砦は安全地帯となるからそこからの戦力も動かせる。

「そうそう。ゴルバスの地には海もあるぞ」

それで海に面した分、防衛も楽になると。それに領地で海産物……いやいや。海の幸が食べたいから領地を増やすとかダメだろう。しかし海があるのは実際にいい。港、船。塩も得られる。今の海は魔物と危険な水棲生物のせいであまり利用はされていないが、大型の動力船なら安全に運用できるはずだ。

「帝国との新たな婚姻関係は追い風となろうが、それだけでは不足であろう。そこにゴルバスの地を開拓し、勇者マサルが侯爵として王を支え、エルフは心置きなく独立を果たす。完璧なプランではないか?」

予想外というか、少し考えればわかる話というか、エルフのすべてに千年計画が受け入れられた訳ではなかった。もちろん反対しているとかそんな意味ではない。

エルフは全員に教育が行き届いていて、読み書き算数程度は当然習得しているのだが、計画は難解だし、研究など性に合わないという者は当然ながら多い。職人ならそのまま手伝える道もあったが、二〇〇歳や三〇〇歳にもなって、まったく新しい概念を受け入れられる者はそう多くはないし、ましてや軍人や狩人として生きてきていれば尚更である。

しかもエルフは過酷な三二〇〇年間を過ごしてきた、勉強ができない者は居ても、戦えない者は皆無というほど戦闘に長けた種族だ。魔法が使えなくても強制的に習得させる方法まで開発してしまったほど。

森の賢者ですみたいな顔をしてエルフは案外脳筋で、計画参加者は想定よりずっと少なかった。エルフの戦力は使う予定もないし、俺たちも俺とエリー以外は案外余裕がある。

「いいだろう。指揮はフランチェスカだ。リリアと内務大臣殿と話し合って侵攻計画を作ってくれ」

俺の言葉にフランチェスカがしっかりと頷いた。戦うのは俺たちとエルフであるが、名目上のトップをフランチェスカにしておけば王国側も不安は少ないだろう。

「前哨基地よりも砦を先に作って、魔物が反応する間もなくゴルバスを一気に制圧するんだ。時間はあまりかけたくない」

先手を打てば俺たちの戦力は圧倒的なはずだ。さっと行って戻ってくれば、エルフの里の防衛に穴が空くこともない。

「しかしゴルバスというのは語感が良くないのう」

魔境に付けた地名だからだろうとフランチェスカが言う。

「我らの新たな領地になるのじゃ。マサル、名前を付けてくれ」

えー。名付けはあんまりセンスがないんだけどなあ。海があって水が豊富か。水穂、ミズホ。ミズホの地。

「ミズホなんてどうだ? 俺の生まれた国の言葉で、水と麦の穂を意味する言葉だ」

「良いの。これよりゴルバスの地はミズホと呼ぶことにする。異論はないな?」

「そなたらの領地になるのだ。呼び名など好きにするがいい。それよりも税の話だ。開拓地は五年間の無税が通例だが、五年も待ってはおれんぞ」

そう内務大臣殿が言う。それほど余裕がないのだろう。

「生産が始まれば納税するのもやぶさかではないが、それならば王国側も多少は貢献してもらわぬとな?」

「戦力以外の人員はこちらが出して領地の運営を受け持つのだ。その間の税は運営費用も加えて考慮してもらわねば」

どうする、という風にリリアが俺を見る。無税と言っても開拓民は農作物が育てば、普通に税を払うことになる。領主は開拓にかかった費用を回収する必要があるからだ。

「農業生産の税に関してはそちらのいい分を飲みましょう。重要なのはいかに短期間で食料を増産できるかです。最初のうちは利益は二の次で結構」

もし言うほどの食糧生産ができるなら、利益など後からいくらでもついてくる。

「俺たちは鉱山で利益を得ればいい。重要なのは王国が安定し、民に食料が行き渡ることだ」

俺の言葉に一同が頷く。それで五年間は王国側が領地の運営を受け持ち、その後は俺たちで運営を引き継ぐことに決まった。その頃ならエリーの領地も落ち着いているだろう。そうだ。デランダルさんにこっちも見てもらおう。オブザーバー的な立ち位置で来てもらって、領地作りに関してはある程度俺たちの意見も通して貰わないとな。

「しかしほんとうにそれほど上手くいくのか? ヒラギスでの戦果は聞いてはいるが……」

内務大臣殿の何度目かの疑問だ。もし今回の遠征が失敗すれば、王国に実際のダメージはなくとも政敵は確実に攻撃材料としてくるだろう。

「信じ難いという顔じゃな。良かろう。見せてやろう。リシュラ王一行をビーストの町へとご案内じゃ」

たぶん開拓も進んでいるだろうし、ついでに農地も増やしておくか。どうせ今日は王国との交渉で仕事は終えるつもりだったし、それはなんとか上手くいきそうだ。

「手すきの部隊を招集せよ。二〇〇名で良い。行先はビーストの町じゃ。戦闘はないから軽装で良い」

そうして国王陛下たちに説明をする。

「部隊は転移で送り込み、不要となればすぐに送り返す。日帰りも可能じゃ」

「それならば軍の維持費用は最低限で済むな」

「民の移送、物資の投入もどこからでもいくらでも可能じゃ」

「しかし物資は転移でするとなると難しいのではないか?」

転移は重量で魔力消費が変わってくる。重い荷物を持ったまま転移しようとすると、普通の魔法使いは魔力切れでぶっ倒れてしまう。

「一〇〇人以上を一度に転移できるのじゃぞ? 同じ重さの物資ならなんら問題はない。それよりも開拓民はどこから連れてくる?」

まあ恐らく重量無視のアイテムボックス持ちの俺が担当するんだろうけどな。

「王が移民を大々的に呼びかける。広大な農地が手に入るのだ。希望者は多かろう。それから王都の貧民窟からも人を送り込む」

しかしまたこんな仕事を増やしてしまって、エリーは怒るだろうか。それとも呆れるだろうか。エルフの部隊が集まるのを待つ間にこっそりとリリアに話しかける。

「こんなこと勝手に決めてエリーに怒られないかな?」

「因縁の精算となるじゃ。喜ぶのではないか?」

そうかなあ。

「それに手に負えぬとなったら、それこそ手放せば良いのじゃ。別に未練も必要もなかろう?」

それもそうか。戦闘とか農地作成はともかく、他はできる限り王国にぶん投げて乗り切ろう。