作品タイトル不明
285話 ドワーフ長老会議
帝都治療大会四日目。まずは俺が先行して治療を始めることになった。今日も何かと用事が多そうなので、午前中のうちに俺の魔力を多めに消費。アンたちに少しでも朝をゆっくりさせようという段取りである。
それで早朝も早朝、夜明けを待ってサティたち護衛だけを連れて会場に乗り込んだわけだが、そこはすでに人でぎっしり。会場である神殿の外にも人が群がり、神官や神殿騎士が列の整理や病状による振り分けに大わらわだった。
「深夜からすでに並んでいたようです」
ここ数日で顔見知りになった神官さんが俺に気がついてやってきてそう教えてくれる。混乱の原因は列が詰まって動かないのに、夜明けで治療が始まると更に人が一斉に押し寄せたからのようだ。
さっさと始めないとまた人が増えると、入り口のほうから回復魔法をかけて手早く処理していく。
「これ、六日でちゃんと終わると思うか?」
嫌なことを思いついてそう神官さんに聞いてみるが、返答に困った様子だ。
「帝都郊外では聖女様の治療が無料で受けられるという部分だけが広まってしまっておりまして」
聞いて回って確かめたわけではないが、どうも帝都に居る者ならともかく、郊外から来る治療希望者に日程や場所があまり伝わってないようなのだと神官さんが言う。
情報伝達の問題か。噂レベルの話をさらに伝言ゲームするからどうしても情報の正確さに欠ける。それが遠方なら尚更だ。その上この治療自体が準備期間もなく始めてしまったから、情報の周知が徹底できなかったのもある。
それで確実な情報が得られなかった者が夜明け前から押しかけた。
「帝都の各城門に立て札でも立てて日程が確実に伝わるようにしておいてくれ」
了解しましたと立ち去ろうとする神官さんを引き止める。
「一日延長しよう。聖女様に相談してからになるけど、七日目の会場を選定しておいてくれ」
これだけ需要があるんだから多少は仕方あるまい。勝手に決めたがどうせ終わった後に人がやってきたとなると、アンはじゃあやりますとなるだろう。それなら最初から延長を決めて準備をしておいたほうがいい。
「必要がなければそれに越したことはないが……」
俺の言葉に神官さんも苦笑いをする。
「ただし七日目で絶対に終了させる。俺たちにも予定があるからな」
それで八日目以降にやってくるのはさすがに面倒をみきれないし、やってきてもすでに延長分も城門で終了していると分かれば諦めもつくだろう。
そうして小一時間ほど治療を続けているとアンたちがやってきた。
「もっとゆっくりしてても良かったのに」
そう言って治療の一日の延長のことをアンに確認を取る。
「しばらく帝都にいるんだし、私だけでも治療は続けてもいいかもね。もちろんずっとじゃないけど」
「それもなあ。帝都ばっかりってわけにもいかないだろうし、アンはもっと休んだほうがいい」
ヒラギスもまだまだ落ち着かないのだ。あまり治療で消耗してもらっても困る。
「でもお手伝いも増えたし私はだいぶ楽ね。もっと休まないとダメなのはマサルのほうでしょ?」
「忙しいことは忙しいけど、修行とかヒラギスで戦ってた時と比べると全然楽だぞ」
師匠が突発的に持ち込んでくる修行を除けば、基本魔法は時々でいいし、後は座って自分のペースで物書きをするだけ。千年計画は平和的で緊急性もない。こうやってのんびりと雑談する余裕がいくらでもある。そもそも仕事を無計画に増やしてるのって俺自身だしな……
「だけどそうだな。今日は早めにあがるか」
治療が始まってから本当に忙しかったし、無理矢理にでも休みを作らないと、どこかで絶対にトラブルが起こって休みたいとか言っていられなくなるんだ。
治療は午前で抜けて、午後からもう千年計画のほうにかかれば夕食後はゆっくりできる。もしティリカの師匠が早めに捕まれば真偽院との話し合いがあるかもしれないし、その時間の確保も必要になるが、こちらはこじれる要素はないはずだ。
そう予定の変更を相談して一旦治療を交代する。
「じゃあすぐに戻るから治療は抑えめでいいぞ」
エルフのほうでレンズ製作用の人員の準備がもうできているので、エルフの里へと転移、弟君も含めて回収して神国へと転移した。今日はレンズと鏡の進捗の確認とエルフを送り込むだけなので、エルフの数は多いが俺のほうはいつもの護衛のみでイオンもそのまま治療の手伝いだ。
そのはずだったのだが何やら様子がおかしい。工房の庭に転移すると、人がたくさん探知にかかった。それは工房で人を増やす話があったのでいいのだが、目の前に居たのは職人じゃなくて武装した兵士?
「エルフ? 何者だお前ら!」
「俺たちはウルケルに用があって来たんだ」
三人居たドワーフの兵士は突然現れた俺たちを警戒はするものの、手にした武器を構える様子もないのでとりあえずは対話だ。
「ウルケルは貴様らとは会わない」
そう言ってしっしっと追い払う仕草をされる。その間にもかすかだが屋内でドタバタと誰かが暴れ物が壊れる音がする。
「ウルケル!」
そう叫ぶ俺の声に反応し、ウルケルの助けを求める声が聴覚探知を使うまでもなくかすかに聞こえた。
まずいな。今のところウルケルは唯一レンズを作れる貴重な存在だ。捕まったり暴行される程度ならいいが、殺されでもしてはとても困るのだ。
「やるぞ」
ぼそっとした俺の呟きにサティとミリアムが即座に動いた。三人のドワーフがほとんど瞬時に崩れ落ちる。そのまま工房内に突入したサティたちに俺も続く。
中に居たドワーフも何の抵抗もできずに倒れていく。幸い職人とは間違いようのない格好だし、間違えたところで峰打ちで気絶しているだけのことだ。
そうしてすぐに暴行を受けて床に座り込んでいるウルケルの姿を見つけることができた。
「マサル! あいつらにレンズを持っていかれた!」
そう工房の裏口のほうを指差すウルケル。
「サティ」
俺の言葉にサティが飛び出していく。工房の外の敵はまだ俺たちに気がついてないし、レンズの回収はすぐにできるだろう。
「な、なんだお前らは!?」
突然の闖入者に事態の責任者っぽい身なりの高級そうなドワーフが声を荒げる。兵士じゃないからサティとミリアムの攻撃対象から運良く外れたらしい。
「ウルケルの客だよ。ウルケル、こいつらはなんだ?」
「長老会議だ。レンズを奪おうとしている」
大体の事情は把握したが、後から来たエルフの護衛に倒れたドワーフたちを抑えていてもらい、ウルケルの治療をして詳しく聞いた。
「最初は珍しい物を作ってると使いをよこして様子を見に来た程度だったんだが、レンズの価値に気がついたらしくてな」
特に情報制限はしてなかったとはいえ、人を集めたことで情報が漏れたか。最初は話し合いだったようだが、レンズは 顧客(俺) にすべて渡すから引き渡せない。その上エルフに製作技術を伝授する予定とまで聞かされたところで長老会議側が強硬手段に出た。俺が来る直前くらいに兵士を連れて工房を制圧、レンズを奪ったと。
しまったな。こんなことならイオンを連れてくるんだった。
「ウルケル貴様! 長老会議を裏切るのか!」
「でもなあ、こいつあ神託の巫女様の依頼だぜ? それにレンズはこのマサルの持っていた技術だ。俺は言われるままに作っただけなんだぜ」
「レンズの技術がほしければ普通にウルケルに教えてもらえば良かったんだ。別に秘匿しようとか思ってないし」
別に事を荒らげる気もないので、そう言ってみるが長老会議は別の意見があるようだ。
「ガラスの制作術は我らドワーフの物だ。たとえ神託の巫女様のご依頼とて、それをエルフに引き渡すなどと断じて許可はできぬ」
やはり著作権や特許の導入は急務だな。ガラスの制作は長年ドワーフの独占技術でそれがこの世界では当然のことなのだろう。だがガラスみたいな古い枯れた技術に特許は認めらないし、独占も許されない。それでは技術が進歩しないし、レンズみたいなものは何年経っても出てこない。
そうこうしているうちにレンズや望遠レンズを回収したサティが戻ってきた。
「奪われたのはこれで全部か?」
「そいつも何個か隠しとる」
油断も隙もないと身体検査をしてすべて回収する。
「聞いてのとおりこの依頼は神託の巫女様からのものであり、レンズは俺の技術だ。そして俺はそれを公開しようと思っている。今日はエルフを連れてきたし、明日以降は帝国からも人材を連れてくる予定だ。この件は神託の巫女様だけなく、ガレイ帝王陛下その人と帝国大神殿からの支援も受けているんだ」
そうして昨晩帝王陛下とエルフ王に望遠レンズを献上し、たいそうお喜びだったとウルケルに教えてやる。
「こ、ここは神国だ。帝国が何を言おうと関係ない!」
「帝国だけじゃない。このレンズがドワーフが独占していい技術じゃないことくらい理解できるだろう? それが嫌だと言うならドワーフから手を引いて他に頼むしかない」
「俺は手を引かんぞ! 必要ならば帝国でもエルフのところへでもどこへでも行く!」
「そんなことは許さんぞ、ウルケル! レンズは我らドワーフが作るのだ!」
そうドワーフたちが無駄にでかい声で怒鳴り合う。うるさいなあ。
「そうなったら神国でのレンズ作りは禁止だぞ」
「そんなことができるものか!」
帝国から圧力でもかけてもらうか。それか交渉決裂ならウルケルと弟子を引き抜けばいい。真似くらいはできるだろうが、それは別に困らないし。
「そっちもガラスの技術は秘匿するんだろ? でも必要ならガラスぐらいこっちでも作れるんだ」
「全てのドワーフを敵に回すことになるぞ」
「果たして帝国のドワーフも同じ意見かな?」
それからヒラギスのドワーフもだな。あとで帝国とヒラギスの長老会議を探してもらって接触するか。
「帝王陛下はレンズの生産にに本腰を入れるご意向だし、客観的に見ればどちらに理があるか明らかだ」
ほんとなんで会うやつ会うやつ俺の邪魔をしてくるのか。だが考えようによってはここでドワーフを味方にしてしまえば、人族四種族コンプリート。計画への障害はほぼなくなるはず。
「ところで鏡のことは言ってないのか?」
「気がついてないみたいだな」とウルケル。
「鏡? 何のことだ」
「ウルケルに教えた技術はレンズだけじゃないってことだよ」
そう言うと奪い返したレンズをぽんと放って与える。
「レンズがほしいなら持っていくといい。神国のドワーフが敵に回るならそれも仕方ない。だがその場合、今後すべての新しい技術から神国ドワーフを締め出すことになる」
「そ、そんなに新しい技術がほいほい出てくるものか」
「エルフ式城壁強化法、コイル式バネ、避雷槍。それから今回のレンズに新型の鏡。全部俺から出した技術だ」
「コイル式バネは知り合いが最近作り始めたから見たことがある。城壁強化と避雷槍というのは?」
そうウルケルが興味を持ったのか聞いてきた。
「すでにエルフと帝国では導入が始まっている、城壁の強度を三倍にする技術だよ。知りたいなら直接見に来るかエルフたちに聞くといい。それとこれを見ろ」
思いついて日本酒の一升瓶を取り出し、ウルケルに見せてやる。
「これは人間が作ったものだ」
一応嘘ではない。
「ほう。これはかなりの出来だな」
同じものをもう一本取り出す。
「これは……」
寸分違わぬガラスの形状に美しいラベル。口を封じる金属製の栓ですら、見るものが見ればその繊細で完璧な出来具合はわかるはずだ。一升瓶を唸りながら見ていたウルケルが言う。
「これだけのものが作れるなら俺らはいらねーんじゃないか?」
「そんなことはない。腕のいいガラス職人はいくらいても困らないんだ」
「モルガットさん、こりゃあダメだわ。勝ち目なんぞ最初からどこにもないぜ?」
「だがガラス制作術の流出に、他の地域の長老の同意が簡単に得られると思うか? ガラスはずっとドワーフだけが扱ってきたのだぞ」
「だがこいつあは流出以前の問題だぜ?」
そう言って一升瓶を丁寧に机の上に戻す。すでに高度なガラス制作術が他に存在するのに、流出も何もないということだ。詐欺みたいなものだが難癖をつけてきたのはあちらだし。
「それにそういうことを納得させるのが長老会議の役目だろうが。レンズって手土産もあるんだ」
俺をそっちのけでドワーフ二人が議論を始める。うむ。これは勝ったな。ドワーフが落ちるのももはや時間の問題。俺にかかれば使徒や神の名を持ち出すまでもない。
「マサル様、マサル様」
そう弟君から声がかかる。
「対価として魔力開発法の話をすればいいのではないですか?」
それもそうだな。ドワーフも魔法使いが増やせるとなれば有り難いだろう。最後のダメ押しだ。
「マサル様」
お? 今度はサティ……いやこれは。探知に人の集団。それもかなりの数で訓練された動きで接近してくる。ドワーフの増援だろうか。面倒な。
「師匠、外を見てきてもらえますか?」
サティだと倒してしまいそうだし、師匠ならうまいこと交渉をして必要なら足止めもしてくれるだろう。
ウルケルと長老との話し合いはさほど進展はない。長老のモルガットは議論には応じてはいるが、ドワーフでの技術独占はどうしても譲りたくはないようだ。
で、俺も議論に加わろうとしたところで外の訪問者が判明した。
「皇帝陛下の御成りである。道を開けよ!」
その声は工房内にも届き、ドワーフの議論もぴたりと止まる。皇帝陛下? 神国皇帝がなんで、って考えるまでもないな。イオン関連だ。
「ほう。ならばこちらも名乗ろう。剣聖バルナバーシュ・ヘイダである。皇帝陛下がこのような工房に何用かな?」
「剣聖……我が妹がこの工房に仕事を頼んだと聞いて様子を見に来たのだ」
昨日はイオンもお泊りだった。それでたぶん家に連絡もしなかった? そして情報を集めていたところにドワーフの長老会議の動きにでも気がついたのだろうか。それでわざわざ直接出向いてきたと。
「イオン殿なら今朝も帝都で聖女殿の手伝いをしておる」
「そうか。昨日は戻らなくてとても心配していたのだ」
「昨夜はエルフの里だな。話が深夜まで長引いたのでそのまま泊まったのだよ」
「エルフの里で話? どういうことだ?」
「聞いておらんのか……」
「ともかく妹の顔が見たい。そちらは転移術師を抱えておるのだろう?」
それで師匠は皇帝陛下と護衛の一団を伴って工房に戻ってきた。皇帝陛下は二〇代、いっても後半くらいだろうか。すらりと背が高く、イオンのように浅黒いがエルフでも通りそうなくらいその顔は整い、目つきは鋭い。今はとても不機嫌そうな表情で周囲に余計に威圧感を与えていた。
イケメンでドS系の王族か。豪奢な服装も相まってそのまま少女漫画に王子様役で出しても違和感がなさそうだ。
「ドーモ、転移術師の者です。妹様をお連れすれば宜しいので?」
不機嫌さを隠さずに工房内を睥睨する皇帝陛下に仕方なくそう声をかける。
「できるのか?」
「ハイ。先ほどもお姿を拝見して場所は存じております。さほど時間はかからないかと」
「では頼む。帝国の転移術師よ」
「しばしお待ち下さい。ちょっと行ってくるから待っててくれ」
そうサティたちに声をかけすぐに転移を発動させる。治療会場の転移地点から俺たち用の控室へ足早に移動する。イオンは居ないか。手近に居た神官に使いを頼むとすぐにイオンたちが戻ってきたので、端的に事情を話す。
「やばい。ドワーフの工房にイオンのお兄さんが来た。とにかく顔を見せろって」
俺の言葉にイオンがびくっとし、護衛の二人もさーっと顔を青くする。
「あ、会いたくありません。特に会う必要もないような気もします……」
震える声でイオンが言う。無断外泊は失敗だったか。しかしお泊りするって連絡するのもなんでだって話だし、転移で連絡を入れるくらいなら送っていけば良かったんだし。
そもそもイオンは若いことは若いがこの世界の基準では成人女性なのだ。仕事もしてるし、今回もその仕事の一環。保護者に確認を取るようなことでもない。
「今後のことも考えたらそんなわけにはいかないでしょう?」
そう一緒に戻ってきたアンが至極まっとうなことを言う。
「俺たちのことは全然話してないんだな?」
お泊りはともかく問題はそこだな。
「聖女様のお手伝いをすることだけを伝えて、その、機会を見て話そうとは思ってはいたのですよ?」
忙しかったし、会ってまだ二、三日だもんな。イオンを責めるのは酷というものだろう。
「マサル様、お願いいたします。ご一緒に説明を!」
「それはもちろんいいけど……ちょっと厳しそうな人だね?」
「とても」
そうかあ。だが説明はいつか必要だった。
「じゃあ行くか」
「ここに残っててもいいですか?」
気持ちはわかるが忠誠心が疑われるぞ、トニエラ。おそらく事情を知ればなぜ皇帝陛下に知らせなかったという話になるのだろう。
「実際どうなんだ? 俺の仲間になるって話、どうにか説得できそうなのか?」
「事情をすべて話せばさすがに協力はしてくれるとは思うのですが……」
「マサル様の事を知れば絶対に反対されますよ!」とトニエラ。
「俺の話って伝わってないんだ?」
聖女様の話が出て、勇者(仮)の話がないというのも不自然だ。神国神殿には情報が行くって話だったが。
「お兄様もお忙しいですし、神国とはあまり関わりのない話でしたので」
皇帝陛下にもっとも近い神殿代表といえばイオンである。イオンが伝えないなら、他の者がわざわざ伝える理由もない。そうなると事情を知る者はイオンと護衛の二人だけ。手伝いの神官たちは俺とイオンが親密にしている様子くらいは見ているはずだが、それも表面上は本当に聖女様の治療の手伝いをしているだけなのだ。もし必要以上に仲良くしているように感じても、それを皇帝に伝えるような者は居なかったと。
「ヒラギスの戦況くらいは把握しておられるでしょうが……」
出兵もしてないし帝国を挟んだ遠国だ。積極的に情報収集をしていたイオンが黙っていれば伝わる情報は多くはない。
「つまり一から全部か」
「お手数をおかけします」
「いや、必要なことだしな」
ドワーフの長老会議と神国皇帝の説得。使徒としての仕事、神託の遂行を手伝ってもらうのだ。なんら後ろ暗いことでもないし、さほど手間取ることはないはずだ。
「あら? 深刻な顔をして集まって何かあったの?」
しかしそれじゃあ行こうかというタイミングでエリーがエルフたちを連れてやってきた。
「イオンのお兄さんがドワーフの工房に来てて……あー、お久しぶりです」
エルフに混じって一緒に転移してきただろうティリカの師匠、オーグレン氏に頭を下げる。いきなり連れてきちゃったのか。
「ティリカが帝都だって言ったら他国に行く滅多にない機会だからって」と、エリーが説明してくれた。
「私に何か話があるとか?」
そうなんだけど、皇帝陛下をあまり待たすこともできんぞ。
「今から神国の皇帝陛下とお会いして話をすることになってましてね」
「ほう。帝都で治療活動をやっていると聞いていたのだが、君は相変わらず面白そうなことをやっているんだな」
「そういうことなんで、しばらくお待ちいただけますか?」
「神国皇帝。もし邪魔にならないようならだが、是非ともお顔を拝見したいな」
別にいいんだけど。どうせオーグレン氏にも事情は色々話すことになるんだ。
「しばらく滞在するなら帝王陛下にもたぶん会えますよ。それでこちらが神国の神託の巫女、イオニティース様で、今から会う皇帝陛下がその義兄で……」
そう簡単な事情説明をし、転移の準備に入る。他に誰か来ない? 誰も来ないか。じゃあ俺一人で頑張ってくるよ。何を頑張ればいいのかよくわからなくなってきたけど。