軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20層・裏 ノチホ/影雷魚VSミナーミ、最終R

ボス部屋に入った瞬間、水没しているので環境が変わったのを感じ取った。そしてこちらに気付いたのか、殺気を感じた。部屋の反対側へ転移。

直後、遠くの方で轟音が響いた。水中なので音は通りにくいはずなのだが、威力がとんでもないのだろう。

アイテムを縛り付け、その上から四次元枕を被って固定しているので何も見えないが、きっと今後、ヤツは俺を殺せたと満足しているのだろう。

初撃を浴びせたからか、ちゃんと敵認定されていたらしく初っ端から先制攻撃だからな。しかしこれで警戒は一時的とはいえ解けたはず。

「【罠作成】っと」

今のうちに罠を仕掛けていく。今回は落とし穴系は使わない。たぶんだけどデカすぎて俺の【罠作成】じゃ入れきれない。

なので顔を出すタイプの罠を中心に仕掛けている。

十数個ほど仕掛けて、天井もあらかた配置完了といったタイミング、 奴(やっこ) さんがこちらの生存に気付いたようだ。折れた“ 塵舞(じんぶ) ”も回収できたのは大きい。

「――――――――!!」

「うっるせぇ、あれか、ハスキートーンとかモ〇バーガーみたいな、えーと……あ、モスキート音だ!!」

枕もボロボロで外の音が聞こえるのがいい方向になっている。通常のピカピカ状態だったら外の音が聞こえないはずだったからな。いち早く気付けたのはなにより。

サクッと最後の罠を仕掛け、挑発した。

「さぁこいよ! こんな羽虫一匹食い殺せねぇのか? その無駄にでかい胃袋はスカスカなんだろうな! ハリボテの刺身野郎!」

「――――!」

【 割り込み(イン) 】を発動。

一度大きく移動し、かっこよく指を鳴らす。ここからスペアのスマホで動画を回している。

罠が作動した。天井に仕掛けた縄とゴブリン類の武器の数々、地面に設置した四方八方から飛ぶようにした矢。単体の火力自体は心もとないが、それなりの軍隊の支援を受けているようで意外と面白い。

――なぜ見えてるかって?

“枕”を罠にしたからだ。

「捕食者がどっちか、教えてやるよ」

枕が口となり、鯨野郎に噛みついた。

四次元の収納容量の口。ぶっつけ本番ではあるものの、思いつきは上手くいったようで巨大な鯨の尾の部分を消し飛ばすことには成功したようだ。

あとは巨大系モンスター定番の、体内から――

「え、空洞じゃない? どうなってんだあれ」

遠目でも分かるはずの空洞は無く、むしろ中身があった。ハリボテなどではなく、本物と言わんばかりに、ヤツは吠えて暴れる。

「――――!」

「チッ、時間稼ぎも限界か。まあいいや、座標は指定してる。外が固くて電気ビリビリなのは分かってんだよ」

中身があろうと無かろうと、やることに変わりはない。俺よりでかい相手なら、内部からの攻撃が有効なのは一緒、特にあれだけデカければ胃袋もビルが入るくらいには容量もあるだろう。

「【 割り込み(イン) 】!」

胃袋がありそうな位置に転移した。

そして目の前に広がるのは――朽ちた戦場。

消化途中の骨、無機物などなど。数え切れないほどの戦いの跡が、町ごと、大地ごとここにあった。

一応スペアのスペアのスマホで撮影しておく。

「問題は、これが ど(・) こ(・) の(・) 町(・) なのか。ま、そういうのは暇な人に任せよう。俺は最高に忙しいんでね」

しばらく探索していると、光が見えた。

パチパチと何かが弾ける音もそこから聞こえてくる。

そこには、手のひらに収まるほど小さな雷の魚が佇んでいた。

「『――汝、希望を抱く者』」

「お、低音イケボ」

軽口を叩きつつも、半ばで折れた“ 塵舞(じんぶ) と突っ張り棒を構える。こういうのは、こいつがクソクジラの本体でしたー、なパターンに違いない。

「『――汝、永遠を求めし者』」

「らあ!」

突っ張り棒で突きを放つも、その先に雷の魚は居なくなっていた。

「『――汝、未来へ歩む者』」

「ぁ……こへっ」

吐血。

下を見ると、腹部に風穴が空いていた。

「『この海こそ、貴様ら英雄の墓場である』【赫雷海】」

背後から声がした。突進で貫通してきたのだろう。そして赤い雷を纏った波が迫る。

ここらで転がってる骨の生前は、きっと食われた後に、この速度の突進と痺れる波に動きを縛られて穴だらけにされたのだろう。

「ナメんな」

転移で空中へ回避、波と同時に来るであろう突進を読んで俺が元いた場所に突っ張り棒を突く。

腹が物理的に無いので腹筋に力が入らないものの、そこは気合いと根性でカバー。血を吐きながら歯を食いしばって喋る愉快な魚野郎を棒で捉えた。

「無駄なことを。【嵐雷】」

棒が砕ける。

だが、それだけだ。

「言ったろ? ナメんな!」

嵐を纏った、触れるもの全てを切りつける魚を、素手で掴んだ。

「愚かなり【夜雨】」

雨――いや、これは針だ。漆黒の針が大量に降り注ぐ。

これくらいならトドメをさせるが、さっきの言動からこいつの捻くれ度合いは掴めてきていた。まだ何かある。

あるとしたら――

「下か!」

上に転移、足元の魚の影から、というより魚の影自体が突進していた。転移の回避は成功、針が後ろ半身に刺さりまくったり風穴の空いた腹を通り過ぎたりしつつも、俺は影の魚を折れた剣で刺して捕まえた。

「馬鹿な……ありえぬ。このような人間ごときに――!」

「いただきまーす」

パクリと手のひらサイズの魚を頭から食べた。処理無しの生魚というのもあって中々に不思議な食感だが、幸い突き刺さった針がツボでも押しているのか美味しく感じる。雷でビリビリしてある種辛味を感じるのも面白い。

完食し、骨を吐き出していると、空いた腹部から噛んだ後の魚肉やら血液が落ちてきた。血に関しては俺のでドバドバなのでほとんどわかんないけど。

「あ、 いつもの(薄黒い霧) 」

討伐判定になったのか、骨やこぼれ落ちた魚肉が霧散してしまった。そして本体の居なくなった無人ロボである鯨も消えていく。ドロップは相変わらず無し――いや、一つだけあった。

俺はボロボロのまま、自前の折れた棒と剣、そして戦利品とともに落下する。そして綺麗に着地するも、その衝撃で内臓がポロリ。

イヤン。

「……いや、ほんとに嫌だなこれ」

てか痛いもんは痛い。泣いちゃう。長男だったからよかったが、もし三男とかだったら泣いてたね。次男なら泣きべそ、長女だったら逆ギレ、次女ならお清楚でしたな。

「あー、無理、寝よ。内臓が、マジで無いぞう…………」

寝れば治ってると信じて、裏ボス用に用意された水が排出されていく中、自身の血の水溜まりの中眠るように意識を手放した。