軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20層・裏 死んだと思った? 残念でしたー(はーと)

「コンティニュー! 復活、俺!」

「……本当に異常だ。人間なのか疑わしい」

「うわ、ビックリした」

死にかけて、目が覚めたので飛び起きた。

別に特別な力に目覚めて復活とか、そんなものではなく、前からなんかあった【平常運転】による肉体の再生効果だろう。

そんな寝そべっていた俺を見守るように階段の壁に背を預けて座っていた人物が居た。

「こちらのセリフだ。 八百枝(やおえだ) 南(みなみ) 」

「あんたは――」

目深くフードを被り、女性のシルエットでここまで来られるほどの実力。どっかのやの字の事務所で遭遇した外国人少女の護衛だったはずだ。宗教団体の幹部の一人でもあるんだっけ?

そして声を聞いて一致した。

「俺がガキの頃に会った、エルフみたいな人」

「っ! なぜそれを……いや、あの時見られていたのか。存外、記憶力がいいのだな」

「やっぱりだ、ショタコンのエルフコスプレ痴女!」

「!!?」

走馬灯の伏線回収アツいな。

しかしこの人がどうしたここに?

「はぁ、この話の聞かなさは血筋なのか……?」

なんかブツブツ言ってる。

ま、事情がどうであれ俺には関係ないことだ。

ボロボロの装備を脱いでパンツ一丁、壊れかけの枕を持ってリベンジへ向かう。

時刻は……あ、まる二日くらい寝込んでたみたいで遅刻どころじゃねえや。よし、リベンジリベンジ。

「っし、やるか!」

「!? 待て、何を言っているんだ。さっきまで瀕死だったのだろう? 無茶をするくらいなら私が排除しておくから――」

「いやいや、俺の獲物なんすけど。……とはいえ早い者勝ちってのもあるか。よし、次俺がダメだったら譲るから。それで!」

「それで、じゃない!」

食い気味に俺を止めようとするフードエルフコスプレショタコン、略してショタコン。若干キャラ崩壊しているくらいには必死である。

「別に俺がどうなろうがあんたには関係ないのでは? はい論破!」

「――大アリだっ!」

うわ、急にでかい声。

そんで顔に唾飛んだ。……俺は真摯なのでスルーした。布で拭くのは失礼かもだし、変態的なことも思い浮かんだが、俺は真摯なジェントルマンなのでやめておいた。20層に入れば水で流されるだろう。

「5032」

「何? 素数っすか? たぶん2で割れますよ」

「私が 今(・) 回(・) を引き当てるまでの、繰り返した回数だ」

真剣な表情で、エメラルドのような瞳が、美しい視線が俺を貫いた。

「この世界は滅びを迎えている。何度も何度も。その度に私は魔法でやり直し、やり直し、やり直し、やり直し続けた。その結果が今だ。あらゆる原因を突き止め、あるはずの無い可能性を掴み取るために奔走した」

「お、おお」

「――君が 産(・) ま(・) れ(・) た(・) のは、今回が初めてなんだ」

「ほう。なるへそね」

なるほどなるほど、うん。

「君が死ねば、また 彼(・) 女(・) が闇に堕ちてしまうかもしれない。それだけは、絶対に避けねばならないんだ。分かってほしい」

「おーけーおーけー」

ぜんっぜんわかんねぇ!

でもこいつがあの半ライスさんと同じ中二病ということだけは分かった。

どうしてこうも俺の周りには変な人しか居ないのだろう。まともなのは蛇字丸さんくらいだぜ、ったく。

「こほんっ、して――。エルフ、貴様の名は?」

こういうのは半ライスさん同様、同じ土俵で付き合ってあげるのがいいだろう。まずは名前から聞いてみる。設定の調査は中二病患者との対話においては必須項目である。

「以前カレラが紹介した通り、リーフ。ただのリーフだ」

「そうか、リーフよ。先に帰っておいてくれ。少し体も痛む。それに、裸に近い姿なのは俺とて恥ずかしい」

「そ、それは失礼した。そうだな、その様子なら無理はしないか。地上に戻る。……ああ、 うちのボス(ハインスラ) からの伝言だ。“いつ行っても留守なんじゃが!? ”だそうだ」

「…………ふっ、しばはし休養が必要だし、また明日か明後日、学校終わりの夕方辺りに来るように言ってくれ」

そしてショタコンのリーフさんが立ち去り、気配が消えたのを確認。

「よし! リベンジリベンジリベンジリベンジ!」

へへへ、負けっぱなしは性にあわないんでねぇ。

あのデカクジラは俺が倒す。

ゲーマーの負けず嫌いっぷりを舐めならあかん。人生舐めずにこれ舐めてって感じで舐めたらあかん。

「まずは倒し方だ」

ゴールは討伐、できたら食したい。

ただ、今は倒すのが最優先なくらいにリベンジ心が湧き立っている。ので!

本気で、出し惜しみせずにやろう。今ある装備は枕の中にあった突っ張り棒と罠用の各種アイテム(ゴブ武器シリーズ等々)、縄とうさ耳カチューシャ、あとはポーション類。剣はあの時へし折れて、今もボス部屋にあるのだろう。

ふむふむ――やるか。

できるかなんて分からない。

無理筋だろうが筋は筋。通してみせるのが、真の漢ってやつだ。

「よいしょよいしょ」

全部のアイテムを、俺の顔面に僅かにでも触れるように配置して縄で縛る。自分を縛ることに至っては、そんじょそこらのドMより上手い自信がある。

「そい!」

そして縄からこぼれないように上から頭を枕に突っ込んだ。枕の機能である謎い空間が視界一面に広がっている。まあほとんどアイテム類で見えないんだけどね。

これでガチャガチャせず、身動きもしやすい。

言わずもがな、何も見えないが、この階段とあのボス部屋の間取りは完璧に把握している。何てったって周回で歩きまくったからな。そしてあのクソクジラは速すぎてそもそも動きを目で追えない。

つまり、今いる場所と、死にかけた時の距離感を参考に、部屋の真反対に転移すれば当たらないだろう。幸い、周回の時に腐るほどピンは刺してある。

「ふぅ……いいね、このヒリヒリ感」

前回は運良く生き延びることができたが、今度も上手くいくとは限らない。死ぬ気で、死なないように気張らなきゃな。

「ハードコア、レベル1、装備無し縛りプレイ上等だ……コラ! 首洗って長くして待ってやがれ!」

パンイチで突っ張り棒を片手に枕を被った男は、勇み足で決戦の地へ向かう。