軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九話  パーティーの準備

メーティエの協力を取り付けたソラは音楽鑑賞もそこそこに屋敷へ帰って来た。

「サニア、リュリュ、ラゼット、コルもだな。一緒に来てくれ」

出迎えに出てくれた面々に声をかけ、ソラは執務室へ向かう。

「手紙の相手は特定できた?」

リュリュがソラの右隣に並び、問いかける。

ソラは首を振った。

「メーティエ嬢の下に手紙が届くようになったのはおおよそ一年前だそうだ。毎回、手紙の届け人が変わる上、メイドのアロイリーが後をつけても無意味だったらしい」

「無意味って撒かれたの?」

左隣に並んだサニアの質問にも、ソラは首を振った。

「手紙を届けるためだけに雇われた者だったらしい。毎回、適当な商会の勤め人が手紙を届けていた。届け人も手紙の差出人の事はわからないらしい」

「徹底してるね。なんでそんなことするんだろう」

「本人に聞けばわかるさ。ただ、それなりに金を持っていることは間違いないな」

紙自体の値段もさることながら、一年間で二十通以上の手紙をわざわざ人を雇ってまで届けさせている。

手紙の差出人が仮に平民だったとしても、大手商会の商会長くらいでなければ難しい。

「手紙の文面は?」

「貴族らしさ溢れる言葉選びだったよ。俺が書いた恋文より甘ったるかった」

甘いと言いつつ苦い物を噛んだような顔で、ソラは肩をすくめる。

メーティエの協力を取り付けたことで新たに分かったことは少ない。

手紙は一年前から届けられており、富裕層ないしは貴族が差出人である可能性が高いという事だけだ。

「特に、メーティエ嬢が王都で開かれたパーティーに出るようになってから手紙が届き始めたらしい」

まだ断言はできないものの、手紙の差出人は貴族の可能性が高いとみて特定に乗り出す、とソラは方向性を定める。

先行していたラゼットが執務室の扉を開き、ソラ達は中へ入る。

ソラは執務机に腰掛けて必要な書類を引っ張り出した。

「とにかく時間がない。一気に手紙の差出人に王手を掛ける」

ソラは引っ張り出した紙の一枚に銀食器やガラス食器の数を記入してコルに渡す。

「今日中に発注して、明後日までに納入させてくれ。納入されたらコルが直々に磨き上げ、誰にも触らせるな」

「こ、この数を僕が一人でやるんですか?」

「日頃の調理の方は人を頼って構わない。食器を他の誰かに触らせるなら、最大二人までは人を使っても構わないが、同じ食器を二人以上が触る事のないよう気を付けてくれ」

ソラは念を押す。

必要なことだと分かっているのか、コルは難しい顔をした後ソラをちらりと窺う。

「調理の方はどうしましょうか……?」

「明後日は一日食事の準備をしなくていい。みんなでどこかの料亭にでも行こう」

珍しく外食を決定するソラにコルがおびえたような顔をする。

「この食器磨きはそんなに重要な仕事なんですか?」

「あぁ、作戦の成否はそれに掛かっているといっても過言ではない」

青い顔をしているコルを送り出して、ソラは今日一日ずっと護衛を務めてくれているゴージュを見る。

「一日仕事の後で悪いんだが、火炎隊を使ってこの植物を探し出してくれ。王都周辺でも森や山の日陰に生えているはずだ」

ソラはコルとの会話中も動かしていた手で描き上げた植物の絵をゴージュに渡す。

リュリュが植物の絵を覗き込み、得心が入ったように頷いた。

「シダ植物だね。子爵領の頃にクロスポートの男の人が持ってきた花の中にもあったよ」

「……あの頃か」

花祭りの発端となった事件を思い出してソラが呟くと、ラゼットとサニアがうんざりした顔になった。

ソラは気を取り直してゴージュを見る。

「その植物の胞子が大量に欲しい。探し出してきてくれ」

「ウチも行こうか?」

リュリュが同行を申し出る。

実物を見たことがあるリュリュは適任だが、別の仕事を任せたかったソラは引き留めた。

「リュリュには明日、ヨウ素を持ってメーティエ嬢を訪ねてもらいたい」

「ヨウ素なら在庫を持ってきてるけど、何に使うの?」

「操作手順は少ないが一度やって見せた方が良いな。実験室でやって見せるから、ヨウ素とアルコールランプの準備をしておいてくれ」

「分かった。早く来てね」

実験、実験、と鼻歌交じりに執務室を出ていくリュリュを苦笑しながら見送って、ソラはラゼットとサニアを見る。

「各種準備が整い次第、パーティーを開催する。最終的にはすべての貴族を呼ぶことになるかもしれないが、まずは南部の貴族をすべて招待したパーティーを開催する」

「招待客に手紙の差出人が居ればよし、居なければ次は西部の貴族を招待したパーティーを開くの?」

サニアがソラの意図を汲んで訊ねる。

ソラはサニアの予想を肯定して、ラゼットを見た。

「会場の手配を任せる。目くらましに殿下も呼ぶから、相応の会場を用意してくれ。見積もりは明日の夜までだ」

「すぐに取り掛かりますね」

珍しく文句も言わずに必要な書類を取りに行くラゼットの背中を、サニアが驚いたように見つめている。

積極的に協力するというラゼットの宣言は嘘ではなかったらしい。

さて、とソラはため息を吐いてサニアを見る。

「サニア、悪いが貴族連中を呼ぶパーティーだから――」

「分かってる。今後はパーティーの間は魔窟にでも行って隠れているよ」

「……すまない」

悔しさに歯噛みするソラに微笑んで、サニアは執務室を出て行った。