軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十二話 対ジーラ商会連合会議

翌早朝、会議室に集められた家臣団は、ソラから改めて聞かされた状況に渋い顔をした。

「つまり、王家に言い訳できる方法でジーラ商会連合を解散に追い込むって事か?」

無理だろ、とゼズが腕を組んだ。

コルが厨房の方向を気にしながら、口を開く。

「商業権の剥奪はもとより、特定の商会を狙い撃ちした政策も不可という事ですよね。……そろそろ朝食の調理を始め──」

「特定の商会ではなく、特定の商品なら大丈夫だよね?」

コルの言葉を塗り潰す形で、サニアが確認する。

領内にある商会が揃って割を食う結果となるが、ジーラ商会連合ひいては王家に対しての敵対行為ではなく経済政策だと言い訳が立つ。

むろん、遠回しな苦情が殺到すると予想できるが、遠回しな表現を使われる内は気付かない振りで押し通すしかない。

矢面に立つソラは憂鬱そうだ。

とは言え、ジーラ商会連合を潰すと決めた以上、苦情処理に追われる事は避けられないため、覚悟は決めてあったらしい。

ソラはサニアの言葉に頷いた。

「輸出の監視強化に加え、銀の持ち出しに制限を加える」

銀の持ち出し制限は、王家の資金難解消にジーラ商会連合が介入する事態を阻止するためだ。

監視強化は銀の密輸出に対する防波堤の意味が強い。

王家がジーラ商会連合に肩入れする理由の一つは資金難の解消である。

銀の流れを止めるだけで、利害関係に変化が起こる。

効果的だが、弊害もあった。

いち早く気付いたラゼットが発言を求め、ソラが許可する。

「いくつか問題がありますけど、ジーラ商会連合は河川の優先航行権を持っていますから、監視強化で船の流れが滞っても影響を受けませんよ」

子爵領時代に起きた廉売騒動に端を発する失業者対策で、ジーラ商会連合は河川の優先航行権を手に入れている。

監視強化の名目でジーラ商会連合の船を止めると、優先航行権を盾に他の商会の船が先に行く事に異を唱えるだろう。

また、監査の順番も繰り上げを要求してくると予想できた。

他の商会の船が渋滞を起こす中、ジーラ商会連合は悠々と船を進められる。

不満が噴出するだろう事は、火を見るより明らかだ。

「それと、銀の輸出に制限を加えるとして、銀貨の扱いはどうしますか?」

銀貨にまで制限を加えた場合、貿易どころではなくなってしまう。

かといって、銀貨として輸出した後、他領で鋳潰されては本末転倒だ。

さじ加減が難しい問題である。

「銀貨に関しては含有する銀の量で制限を掛ける」

「では、あまり長くは続けられませんね」

領内経済への悪影響を考えれば、早期決着が望ましい。

しかし、監査強化も銀輸出の制限も、時間稼ぎの域を出ていない。

目的はジーラ商会連合の妨害ではなく、解散だ。

ソラはリュリュに目を向ける。

「新型船が使えるまで、後どれくらいかかる?」

リュリュはサニアと二言三言交わし、ソラに報告する。

「完成間近だけど、進水式を飛ばしても検査その他で半年は欲しい」

「……半年か」

発展の証ともなる新型船で大々的な進水式を行えば、領内の活気を後押しできる。

リュリュとサニアにとっては初の大仕事でもあり、達成感を与えるためにも進水式を行いたいのがソラの本音だった。

「……ラゼット、頼めるか?」

「今から準備すればなんとか。初航行でいくつかの町を回る事になりますから、官吏に言う事を聞かせる権限が欲しいです」

「くれてやる。人手が足りなくなれば言え」

あっさり進水式とその後のお披露目を行う事を決定する。

リュリュとサニアが心配そうな顔をした。

ソラは安心させるように優しい声をかける。

「考えがあっての事だ。武力行使に踏み切らせないために、あの船を見せつける。船足の早さはお前達が一番よく分かっているだろ」

ソラの言葉に、リュリュとサニアが真剣な顔で頷いた。

そこへ割って入るように、チャフが声をかける。

「まて、ソラ卿はジーラ商会連合を武力制圧するつもりか?」

「あくまでも、向こうから仕掛けてこないように脅すだけだ。準備はしておくけどな」

チャフが難しい顔をする。

「陛下から何か言われないか? あまり刺激して、もし陛下が公式にジーラ商会連合との繋がりを口にしたら、手が出せなくなるだろう?」

「その公式発言も、迂闊にできないようにするのさ」

チャフが不思議そうな顔をする。

「それ程までに強力な船なのか?」

「速度だけなら、今存在するどんな船とも比較にならない。見る者が見れば、好奇心より恐怖が勝るくらいに圧倒的な差だ」

「ソラ卿が言うと冗談に聞こえないな」

ソラは肩を竦めてはぐらかした。

新型船は確かに強力だが、今はまだ一隻しかない。

建造費も馬鹿にならないため、しばらく数が増える事はないだろう。

もっとも、ジーラ商会連合には知る由もない。

ここまでの手は全てジーラ商会連合の選択肢を潰すものだ。

ソラは本丸であるジーラ商会連合そのものを潰す計画の準備指示に移る。

「銀輸出の制限に併せて、ジーラ商会連合の商圏における食料品を買い占める」

他領からの輸入に頼る食料品を、持ち出しに制限を掛けた銀で購入する。

つまり、兵糧攻めだ。

ソラは仮面の下でニヤリと笑い、リュリュに最後の指示を飛ばす。

「シドルバー伯爵領から、銀を輸入する」

「──例の銀で良いんだね?」

ソラの真意を察して、リュリュが的を射た質問を返した。

ソラは静かに頷く。

「もしもに備えておかないと、な」