軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

276.

「はぁはぁ、やっと着いた。ジェスは大丈夫か?」

峻耀(ジュンヤオ) は手を繋いでいる隣のジェスを見た。

「うん、大丈夫だよ! 峻耀(ジュンヤオ) こそ大丈夫? 最後まで頑張ってえらいねぇ」

「ジェスも頑張ったからな、 我(わたし) も頑張って当然なのだ」

ジェスに褒められ、嬉しさを隠しきれていない表情で胸を張る 峻耀(ジュンヤオ) 。

将軍の部下の護衛達は全員ほっこりしながら、二人のやり取りを見ている。

これまで 峻耀(ジュンヤオ) がこんな風に同年代の子供と遊ぶ姿を見た事がなかったせいだろう。

ちなみにジェスは 峻耀(ジュンヤオ) と違って、息は全く乱れていない。

これまで山道を歩いたりもしたが、ジェスは一度も疲れたと言った事がないくらい体力があるからな。

さすがドラゴンといったところだろう。

俺達が入ろうとすると、入れ替わるように官吏らしき者が数人出て来た。

ひと目でよそ者とわかる俺達に対し、蔑むような視線を向けてきたが、その視線が藍之介の顔……正確には耳に向けられた瞬間固まっていたが。

「陛下! 東宮と共に帰って参りましたぞ! 素晴らしい客人と共に!」

文官達が目に入っていないかのように、将軍はズカズカと建物の中に入って行く。

他の護衛達は入り口で待つようだが、将軍に顎で促されたので続いて俺達も入ると、突き当りの階段の上の大きな玉座に座る四十手前くらいの中年男性が見えた。

体格は大きいというわけではないが、その眼光は鋭い。

あれが 峻耀(ジュンヤオ) の父親であり、黄鱗帝国の皇帝なのだろう。

左右に一人ずつ官吏が残っている。

くすんだレッドカーペットを歩き、階段の前に到着すると、将軍が膝をついた。

それに倣い、 峻耀(ジュンヤオ) や 雪瑤(シュエヤオ) も膝をついたので、俺達もマネをする。

「父上、ただいま帰還いたしました。そして 此度(こたび) は 外(と) つ国の者に助けられ、拝謁を希望したため連れて参りました」

「立って楽にせよ。報告は受けている、無事の帰還なにより。して、エルフが同行しているというのは本当なのだな」

早々に立たせてくれてよかった。

絨毯が薄くて、長時間だと膝が痛くなるところだった。

直視しないよう皇帝を視界に入れると、藍之介を凝視している。

黄鱗帝国を発展させたというエルフの側室の存在が大きいのだろう。

「発言をしても?」

藍之介が口を開く。

「構わぬ」

「我々は 主(あるじ) であるこちらのジュスタン・ド・ヴァンディエール伯爵と共に、エルフの里を混乱させた者を追っております。その者は現在黄鱗帝国に逃亡したと思われ、その者を探すために黄鱗帝国に滞在する許可をいただきたく参上いたしました」

「主? なにゆえエルフであるそなたが人族を主と呼ぶのだ? ヴァンディエール伯爵といったか、いったいどこの国の貴族だ」

不機嫌さを隠そうともせず、皇帝はジロリと俺を睨んだ。

見た目からして、明らかにこの大陸の人間ではないからな。

「お初にお目にかかります。私はラフィオス王国の王立騎士団、第三騎士団長の任に就いております。ラフィオス王国は先日エルドラシア王国の王太子に輿入れした王女の出身国でもあります。そして邪神を討伐した国、とお耳に届いていらっしゃるのではないかと」

「邪神……。確かにエルドラシア王国からそのような情報が入ってきたな。騎士団長という事はその邪神討伐にも参加しておったのか?」

「はい。ここにいる部下も共に戦いました」

普段のシモンであれば、ここで大きな声で名乗りそうなものだが、独特の雰囲気なせいか無言で頭を下げただけだった。

もしかしたら事前に 烈陽(リエヤン) 辺りから作法を聞いていたのかもしれない。

「ほぅ、東宮を救ってくれた事も含めて、色々と話を聞いてみたいものよ。滞在を許そう」

「感謝いたします」

とりあえず国家間のゴタゴタになる事はなさそうでよかったと、胸を撫で下ろした瞬間、皇帝が予想外の事を言い出した。

「東宮とその子供が仲良くしていると聞いた。であれば東宮殿の隣の瑞鳳殿に滞在するとよい」

ちょっと待て!?

違う! 俺達は黄鱗帝国内に滞在したいのであって、城に滞在したいわけじゃないんだ!

黄龍の件があるから、色々調べたいとは思っていたが。

「ジュスタンを城に留めるのですか。いやぁ、我が家に招待しようと思っていたのですが。手合わせをする約束もしておりますので」

いいぞ将軍!

それこそ数日城に滞在してから将軍の屋敷に移動して、そのまま蘭を探しにフェードアウトできれば最高だ。

「ほぅ、将軍が手合わせを望むような相手なのか。……そうか、邪神と戦うほどの者であったな。三日ほど旅の疲れを癒やしてから、二人の手合わせに立ち会わせてもらおう。他国の騎士団長と帝国の将軍の手合わせか……さぞかし武官達が興味を持つだろう」

「おやおや、思ったより大事になりそうですな! 儂もまだジュスタンの全力を見ておらぬので楽しみですわい! わはははは!」

ダメだ、これはもう城に滞在する事が決定しているじゃないか。

仕方ない、とりあえず三日で情報を仕入れ、将軍との手合わせが終わってから蘭を探しに行くために城を出られるように皇帝に交渉するしかない。

そういえば、萌から預かっている手紙もあったな。誰に渡すのか藍之介が知っているか後で聞いてみよう。