軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274.

「都が見えたぞ!」

先頭にいる護衛が、前方を指差して叫んだ。

多少の起伏がある道が下りになると、全体が見渡しきれないほどの大きな町が見えた。

劉(リウ) 将軍と合流してから護衛達の、特に 烈陽(リエヤン) の態度と動きがとてもキビキビしていたおかげか、予定よりも早く到着するようだ。

「やっと都かぁ、陽が落ちる前に到着できそうだな。ジュスタン達も一旦城に入ってもらうぞ。報酬やら色々あるし」

「わかった。それと皇帝に謁見か、それが無理なら帝国の滞在と通行の許可をもらいたいのだが」

「ああ、それは 劉(リウ) 将軍が話をつけてくれるさ。なにせ皇帝が厚い信頼を寄せている方だからな! あとはあの方々が何も言わなければ……」

「あの方々? この隊列には……いないだろう?」

俺は隊列の人員を見回した。

かなり慣れてきた事もあり、 峻耀(ジュンヤオ) が乗っている馬車にはジェスが、馬車の四方は前方に将軍、右にシモンと藍之介、左に俺と 烈陽(リエヤン) 、後方は 烈陽(リエヤン) の部下が二人で囲んでいる。

最初こそ強さは認めていても、新入りの俺達が 峻耀(ジュンヤオ) の周りを固めている事はよく思われていなかったが、唐揚げを食べたあの日から手のひらを返したように好意的になった。

「あの方々っていうのは、 丞相(じょうしょう) と 楊蒼嶺(ヤン・ツァンリン) という 刑部(司法) の文官だ。……ちなみに丞相は 雪瑤(シュエヤオ) の父親でな、恐らく東宮と 雪瑤(シュエヤオ) を結婚させようとしている」

後半はヒソヒソと俺以外には聞こえないように声を落として言った。

丞相というのは、確か宰相と同じ役割だったはず。

どうやら 雪瑤(シュエヤオ) の父親は仕事のできる野心家のようだ。

「 楊蒼嶺(ヤン・ツァンリン) というのは丞相の腰巾着か何かなのか?」

「いや、それがよくわからないんだよなぁ。なぜか将軍も 楊蒼嶺(ヤン・ツァンリン) には一目置いているけど、いつもうさんくさい笑顔を浮かべてて、何となく信用できない。それにみんなが皇帝の顔色を気にしているのに、この二人は関係ないと言わんばかりに真っ向から意見するんだ」

本当に国のために意見しているのであれば、その二人は皇帝にとってかけがえのない忠臣だろう。

もしもそれが私欲のためなら、頭の痛い問題に変わるが。

「 楊蒼嶺(ヤン・ツァンリン) は別に兵部というわけでもないのに、どうして将軍に認められているのかが理解できないんだよな……」

烈陽(リエヤン) は将軍に聞こえないようにボソボソと愚痴を言っている。

「その 楊蒼嶺(ヤン・ツァンリン) とやらは皇帝相手にもハッキリものを言うのだろう? だとしたらそういうところが気に入っているんじゃないか? 陰で愚痴を言っている誰かさんと違ってな」

「なっ! 誰の事だ!?」

眉を吊り上げている 烈陽(リエヤン) の顔は、見る見る赤くなっていく。

「何を怒っている? どうして、と言っていたから予測を伝えただけだぞ? 俺ならそう思うというだけだ。怒るという事は、自分の事だと思っているからか?」

少々意地悪を言いすぎたかな。

烈陽(リエヤン) は悔しそうにギリギリと奥歯を噛み締めている。

「いいさ、俺は武力で将軍に認めてもらえばいいだけだからな。ジュスタン、次の休憩で手合わせを頼む。いつもシモンとばかりしているだろう? たまには流派の違う者ともやるといい刺激になるぞ」

実際、 烈陽(リエヤン) は護衛の中では抜きん出た実力を持っている。

護衛をしている部下達の誰かだと、弱い者をいたぶっているようにしか見えないだろう。

本当ならシモンの方が実力が拮抗しているから、見せるならそっちの方がいいとは思ったが、俺も 烈陽(リエヤン) と手合わせしてみたい。

むしろ将軍とも手合わせしたいところだ。

「わかった。いつも指導係で全力で手合わせできないのは、鬱憤が溜まるだろうからな」

「感謝する!」

そう言って 烈陽(リエヤン) は手綱を持ったままの右手の拳を左の手のひらに合わせた。

一時間後、川のある開けた場所で休憩する事になり、馬達に水を飲ませている間、俺と 烈陽(リエヤン) が約束の手合わせを始める。

副隊長に指揮を任せて、人のいない場所へと移動し、向かい合う。

「お? 何だ? 団長、 烈陽(リエヤン) と手合わせすんのか!?」

シモンの声に、他の者達も見物に集まって来た。

その中には将軍の姿もある。

将軍が見ている事を確認した 烈陽(リエヤン) は、ニヤリと不敵に笑った。

はいはい、いいところを見せたいもんな。だが、いいところを見せられるかな?

大きな人の輪の中で向かい合う俺達は、お互いに集中した。

「先手はもらうぞ!」

フェンシングとは動きの違いはあるが、身を低くし、片手剣での突き攻撃が襲う。

「思い切りはいいな」

スピードだけなら身体強化を使っていない俺と同等かもしれない。

咄嗟に横に弾くと、独特の動きでクルリと剣を回転させて猛攻を繰り出してくる。

合間に蹴りも繰り出され、手数の多さはカシアスといい勝負かもしれない。

これはシモンが相手をしていたら、かなり苦戦を強いられただろう。

「くっ、やるな!」

攻撃が当たらないせいで、ジリジリと苛立ちを募らせる 烈陽(リエヤン) 。

お互い動きだけは、訓練している時に見ていたから対応はできている。

木剣が何度もガツガツと音を立て、野次を飛ばしていた奴らもいつの間にか息を飲んで見入っていた。

目が動きに慣れてきて、 烈陽(リエヤン) の親指を叩く。

「ぐあっ!」

痛みに声を上げ、木剣を取り落とす 烈陽(リエヤン) 。

同時に周りから歓声が上がった。

「痛いだろう。手を出せ。『 治癒(ヒール) 』……どうだ?」

「痛くない……」

治癒魔法をかけられたのは初めてだったのか、ポカンとしている。

「凄かったぜ! 烈陽(リエヤン) 、オレとも手合わせしようぜ!」

「こらこら、シモン。もう休憩は終わるぞ。今日中に都に着けなくなるだろう。続きは城に着いてからだな! なぁ、ジュスタンよ」

ニヤリと笑う 劉(リウ) 将軍。

どうやら、城に着いてから手合わせをしようと誘われたらしい。

となれば早く出発したいところだ。