軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

268.

「よし、 我(わたし) はこれとこれにしよう! ジェスはどれにする!?」

数分悩んでいたが、 峻耀(ジュンヤオ) は黄龍と魔熊を選んで手に取った。

「えっとね、これとこれにしようかな」

ジェスが選んだのは角兎と翼を広げたロック鳥だ。

「ひとつ銅貨三枚だよ」

店主が作業しながらボソボソと言った。

安すぎないか!?

「店主、そんなに安くていいのか?」

「これ以上高くすると売れなくなるからな」

なるほど。

乗車賃といい、黄鱗帝国の物価は低めのようだ。

結構な高クオリティと思うが、これが普通なのだろうか。

自腹であれば多めに出していいが、今回は預かっている分から出すのでピッタリ渡す。

「ジェスはそんな弱そうなのでいいのか?」

「うん、両方美味しいからね! こうやってロック鳥が角兎を捕まえたところで、ロック鳥を狩れば両方のお肉が食べられるよ! ボクはまだ角兎しか食べた事ないけど、ロック鳥の唐揚げが一番美味しいってシモンが言ってた!」

峻耀(ジュンヤオ) の問いに、ジェスはおもちゃを使って実演しながら説明した。

「ほぅ、という事はシモンはロック鳥を食べた事があるのだな! その唐揚げとやらはそんなに美味なのか!?」

「そうだなぁ……ロック鳥自体も美味いけど、唐揚げにするともっと美味いんだよなぁ。あ~、食いたくなってきた。団長、東……じゃねぇ、坊っちゃん達も食べたいだろうから作ってくれねぇ?」

峻耀(ジュンヤオ) の質問を受けて答えるシモンが、最後にこちらに振ってきた。

三人が期待に満ちたキラキラした眼差しを向けてくる。

何気に 風(フォン) も混ざろうとするんじゃない。

「ロック鳥がいなければ作れんぞ。鶏でもいいが」

「大丈夫だって! こうして木彫りになってるくらいなんだから、細工師のおっちゃんが目にする機会があるって事だろ!?」

シモンめ、こういう時は頭が回る奴だ。

三人分作るのは問題ないが、一度作ったら三人分だけで済まないのは目に見えている。

それにせっかくエルフの里で手に入れた醤油を使うのは……いや、待てよ。

「…… 風(フォン) 、お前の商隊でこれに似た物を扱っていないか?」

俺は 魔法鞄(マジックバッグ) から醤油を取り出して、匂いを嗅がせた。

醤油や味噌は中国から伝わった物だから、もしかしたらあるかもしれないと思ったのだ。

風(フォン) は壺に入った醤油の匂いを嗅ぎ、目線を空に向ける。

「ん~、全く同じとは言わないが、 醤(ジャン) だな。ウチでも取り扱ってるし、団長さん達が泊まっている屋敷にもあるはずだよ」

よし! 俺の醤油を消費せずに済む!

「ロック鳥はこの辺りだと手に入る食材なのか? 鶏でもいいが」

「山の方へ行けばいるから、手に入らない事はないけど、それなりにお高いよ? 鶏なら鶏肉屋で売ってるけど」

「じゃあ作れるよなっ!?」

俺と 風(フォン) の会話を聞いて、シモンが口を挟んできた。

これまでの食事で唐揚げは出てきてないが、もうすでにある料理だったらどうしよう、という考えが頭の片隅にある。

だが、 風(フォン) も 峻耀(ジュンヤオ) も唐揚げを知らないようだ。

「先に 雪瑤(シュエヤオ) 達に聞いてからな。食事の準備や段取りがあるだろうから、いきなり俺が厨房を使いたいと言っても迷惑になるだろう」

「え~、このまま材料買って帰ればよくねぇ?」

どうやら普段食べる専門なせいで、準備する側の苦労を全く考えていないようだ。

「食事をするのは俺達だけじゃないんだぞ。他の護……同行者の分も必要なんだから、雇われている俺達が勝手に行動していいと思うな。 従騎士(スクワイア) の頃に食事の準備をしていたら、正騎士達が勝手に狩った魔物で調理を始めた事はなかったか?」

「……あった」

「その時どう思った? 手順が狂って他の騎士達から文句を言われただろう」

「う……。確かに遅くなって怒られた……」

「だろう? その迷惑な騎士のような事を俺にやれとお前は言っているんだぞ」

ジロリと睨むと、シモンは気まずそうに視線を逸らした。

「あはは、それじゃあ、俺が屋敷に連絡して、夜までに必要な物を届けようか? 昼の準備はもうしてあるかもしれないけど、夜なら変更できるんじゃないかな? 厨房を使う事も伝えておくよ」

「 風(フォン) 、お前は彼らとかなり太い繋がりを持っているようだな」

「あはは~、そりゃあ、黄鱗帝国が誇る竜門商旅団の所属だから~」

ただの一団員が皇族に近しい者達と顔見知りというのは、少々無理がないか?

考えられるのは、実は商旅団の跡取りで大物と繋がっているとか、それとも別口で繋がりを持っているかだな。

本人が言うくらい顔が広いなら、知り合っておいて損はないだろう。

蘭を探すのに軽く情報を流しておくか。

「連絡が取れるなら頼もう。許可が出るなら、という条件付きでな。できればロック鳥のもも肉、または胸肉。なければ鶏で」

「はいはい、お任せを」

「そして……俺達と同行していた藍之介以外のエルフの話を耳にしたら教えてくれ」

そう言った途端、 風(フォン) の目がスゥッと細められた。

やはりこいつは情報屋の類もやっているのだろう、俺の予測はきっと正しい。