軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

269.

「それじゃあ俺は先に屋敷に行って伝言をして、それから品物を届けておくよ」

風(フォン) はそう言って立ち去った。

ヘタすると逆に俺達がエルフを探しているという情報が出回る可能性がある。

少々軽率だったかもしれない。

だが、東宮である 峻耀(ジュンヤオ) の周りと繋がっているのなら、そう問題は起こらないだろう。

「ああ、頼んだ」

「やった~! 今夜は唐揚げだ~!」

「わぁ~い! よかったねぇ、 峻耀(ジュンヤオ) 、唐揚げが食べられるよ」

「う、うむ」

真っ先に喜ぶシモンに釣られるように、ジェスが喜び、 峻耀(ジュンヤオ) も頬を緩ませている。

この後もいくつかの店を回り、食事する店を選ぶ事にした。

飲食店が数軒並んでいる通りで、シモンがいきなりスンスンと空気中の匂いを嗅ぎ始める。

「団長、オレの勘が言ってるぜ。あの店が美味いってな!!」

シモンは一軒の飯屋という見た目の店を指差した。

勘じゃなくて嗅覚が言っているんじゃないのか?

だが、結構客も入っているし、本当に美味しいのかもしれない。

「よし、シモンの勘とやらを信じて行こうではないか」

俺が返事するより早く、 峻耀(ジュンヤオ) が答えた。

この辺りの店は全て下見が済んでいるから、どの店に入っても大丈夫なはずだ。

俺も同意して店へと入る。

すると、店内に明らかに体格が一般人じゃない、おじいさんと呼ぶには少し早いくらいの男が大量の料理をテーブルに並べていた。

「遠慮する事はない、好きなだけ食え! ほれ、この店はどれでも美味いんだぞ!」

その男の向かいには、護衛のために潜入していた見覚えのある男が二人同席して、半強制的に食べさせられている。

妙に緊張しているというか、むしろ固まっていると言った方が正しいかもしれない。

俺達が入って来たのに気付いているようだが、席を立つ様子もないから問題はないのか?

「劉将軍ではないか!」

体格のいい男を視界に入れた 峻耀(ジュンヤオ) が驚きの声を上げた。

将軍という事は、普段は都の城にいる人物なのかもしれない。

だから 峻耀(ジュンヤオ) も顔を知っているのだろう。

峻耀(ジュンヤオ) の声に将軍が振り返った。

「おお! 若様! こやつらから話は聞きましたぞ! 楽しんでおられますかな!? ガハハハハ」

「うむ。この者達と共にいると、普通の子供になった気分だ」

穏やかに微笑む 峻耀(ジュンヤオ) を見て、やっと将軍は俺達に視線を向けた。

「ほぅ、他国の者を護衛として同行させていると聞きましたが、なかなかの腕前のようですな」

「!」

殺気、とまではいかないが、明らかに威圧された。

シモンもとっさに剣の柄に手をかけている。

「シモン、将軍は試しているだけだ」

柄にかけられた手を、剣を抜かないように軽く押さえた。

「ふっ、ふははは! やはり只者ではないな! ぜひとも手合わせをしてみたいものだ」

「それは願ってもない事だが、護衛達の訓練の時に可能だろうか? 我々の手合わせは、周りの者達にとっていい勉強になるだろう」

ニヤリと笑うと、将軍も白い歯を見せて笑った。

俺も人の事は言えないが、この将軍も笑うと悪役っぽいな。

将軍は立ち上がると、俺達の前に立った。

身体の厚みもそうだが、身長も俺より大きい。二メートルは確実に超えているな。

「 儂(わし) は 劉白嵐(リウバイラン) という。この帝国で将軍をやっているんだが、貴殿の自己紹介を聞かせてくれるか?」

「俺はジュスタン・ド・ヴァンディエール。ラフィオスという王国の伯爵であり、魔物退治を専門とする王立の第三騎士団で団長をしている。こっちは部下のシモンだ。よろしく頼む」

「騎士団長か! では儂と同じく戦力として頂点にいるのだろう!? これは手合わせが楽しみだ! そうそう、ここは水餃子が絶品でな、食べて行くといい」

「ッ、……そうさせてもらおう」

バシバシと背中を叩かれてむせそうになった。

豪快という言葉がよく似合う男だ。

さっきの威圧だけでも、かなり強いのがわかる。

身体強化を使っても、五分の戦いになるかもしれない。

「若様はお友達もできたようでなにより、坊やの名前は?」

「ボクはジェスだよ!」

「ふふふ、若様は面白い者達を侍らせておるようですな」

将軍の呟きにドキッとした。

烈陽(リエヤン) と 雪瑤(シュエヤオ) 以外には、ジェスの事は俺の知り合いの子供が合流したと伝えられているはず。

なのに将軍はジェスがただの子供でないと見抜いているようだ。

まさかドラゴンだとはわからないと思うが、ジェスもさっきの威圧の対象にされていたのかもしれない。

だとしたら納得がいく。

戦力として頂点、さっきの言葉が本当なら、将軍はこの国で一番強いのだろう。

そしてそんな将軍の威圧を涼しい顔で耐えた、というより、気にも留めない子供が只者と思うわけがない。

きっと屋敷に戻った時に色々聞かれるはず。

「そういえば、劉将軍はどうしてここに? 城を守る立場なのでは?」

「そりゃあ、そろそろ若様が帰って来る時期だから、お迎えに来たというわけだ」

そう言って、将軍は酒の入った盃を飲み干した。

いや、お迎えに来たのなら護衛じゃないのか。

真っ先に屋敷に向かうのが普通だろ。

それなのにここでこうして食事をし、なにより酒を飲んでいる将軍にジトリとした目を向けた。