軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

222.

どどどどど、どうなってんだコレ!?

動揺している俺に負けないくらい、蘭も狼狽していた。

「どういう事!? 魔法陣は完璧だったはずなのに!」

「おい、命が惜しいのならば答えろ。……チッ、剣はどこだ」

俺の身体は 魔法鞄(マジックバッグ) に手を突っ込んで、一瞬怪訝そうな顔をしたが、中から剣を取り出した。

「ほぅ、見覚えのない剣だが、手に馴染むいい剣だ」

その言葉に一つの仮説が浮かんだ。

ジェスの鱗で造られた剣を知らない俺、もしかして元のジュスタンか!

しかも 俺(直輝) の記憶を思い出してからの記憶すらないと見た。

さっきの蘭の言葉からして、恐らく俺の身体を乗っ取ろうとしたようだが、ジュスタンと俺の魂が記憶ごと分離したと考えればいいのか?

ジュスタンは蘭に剣の切っ先を向ける。

「おい、女。これが最後だ。ここはどこで、貴様は何者だ! 見たところ人族ではないようだが」

「ここまで一緒に来たから知ってるでしょ、黒狼の集落よ。あなた……ジュスタンよね?」

「黒狼の集落? なんだそれは。それに……俺を知っているのか?」

蘭もジュスタンも混乱しているようだが、俺の方がもっと混乱しているからな!

どうすんだよ、コレ!!

動く事はできるようだから、試しにジュスタンの身体に触れてみる。

これで元に戻ったりは……しないよなぁ。

触れたつもりだったが、幽霊よろしくスカッと手が空振ってしまった。

どうもジュスタンからも、蘭からも俺が見えていないようだ。

一応自分の姿は見えるんだけど、銀髪が視界に入るから見た目はジュスタンのままなんだよな。

これって前世を思い出したのは最近でも、ジュスタンとして生まれてるせいか?

「団長! 何かあったのか!? ジャンヌとジェスが団長との繋がりが薄れたって……て、な~んだ。何も起こってねぇじゃん」

シモンが慌てて客間の方から走ってきたが、開いたままの戸からジュスタンの姿を見て、気が抜けたように速度を落とした。

それにしても繋がりが薄れたって言っていたな。ジュスタンと俺が分離したせいか?

「シモンか。お前は現状を把握しているようだな。俺達はタレーラン辺境伯領にいたはずだが、何があった?」

「…………は?」

シモンは頭が真っ白になったと言わんばかりの顔で固まった。

まぁ、そうだろうな。

「何を間の抜けたツラをしている。さっさと答えろ」

シモンとは違い、苛立ちをあらわにするジュスタン。

「いやいやいや! 何言ってんだよ団長! タレーラン辺境伯領なんて一年以上前の話だぜ!? て事はジェス達の事や、邪神討伐した事とか、婚約した事も忘れてんの!?」

「婚約だと!? 誰とだ!」

あ、真っ先に気にするのそこなんだ。

ジュスタンが普通の青年に見えた。

でもまぁ、婚約となれば一生の問題でもあるから普通の反応なのかもしれない。

特に貴族男性としては結婚適齢期ギリギリと言える年齢だしな。

「本当に忘れてんだな。ほら、エルネスト様の婚約者のディアーヌ様……」

そこまで言った時点でジュスタンはニヤリと笑った……が。

「その侍女のアナベラ嬢だよ。アルノーから真っ赤なバラの花束持って親に挨拶しに行ったって聞いたぜ!」

続くシモンの言葉で顔から表情が抜け落ちた。

タレーラン辺境伯領にいた時には、ディアーヌと婚約できるような状態じゃなかったのはわかっているだろうに。

「シモン、主殿の様子はどうだ?」

「ジュスタン! 大丈夫!?」

シモンの後からジャンヌとジェスがやって来た。

「それがさぁ、この一年以上の記憶がない上に、性格も昔に戻ってるみたいなんだ」

「シモン、そいつらは誰だ。主というのは俺の事か? なぜその子供は俺を名前で呼んでいる」

怪訝な顔をしながらも、ジャンヌとジェスをジロジロと見るジュスタン。

「あぁ~! もぅオレもわけわかんねぇよ! いったい団長はどうしちまったんだ!?」

頭を抱えて叫ぶシモン。

『落ち着け! 普通に考えて蘭が怪しいだろ。聞けよ!』

思わずツッコむと、ジャンヌとジェスが辺りを見回し始めた。

『主殿!? そこにおるのか!?』

『ジュスタン! このジュスタンおかしいよ! どうしちゃったの!?』

どうやら念話で二人とは話せるようだ。

『念話でなら話せるようだな、よかった! さっき蘭の部屋に入った瞬間、魔法陣が発動して魂が分離したみたいなんだ。どうやら俺の身体を乗っ取るのが目的だったのに、前世を思い出す前のジュスタンが残って、思い出してからの記憶と前世の俺が身体から追い出された……と、思う。説明が難しいな』

『主殿、前世とは?』

『そういえばジャンヌには話してなかったか。ジェスには話したが、俺には別の世界で生きた記憶があるんだ。それを思い出すまでの俺はかなり歪んだ性格をしているから、ジャンヌやジェスに妙な事を言うかもしれない』

『……前世とな。あいわかった。詳しくは事が落ち着いてから聞かせてもらおう』

俺の姿は見えていないようだが、会話ができるとわかっただけでも凄い安心感だ。

このまま誰にも認識されない状態が続いていたら、泣いていたかもしれない。

「蘭よ、主殿に何をした?」

「し、知らない! ジュスタンがいきなりここはどこだって言い出して……」

「いったい何の騒ぎですか!」

そこへ藍が乱入してきて、更に面倒になる予感。

「シモン! いい加減さっさと現状を報告しろ! ここはどこだ! 黒狼の集落なんぞ聞いた事もないぞ!」

ジュスタンの怒声で、藍もこの異常事態を察したらしく、さっきのシモンと同じ頭の中が真っ白になったように固まった。