軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第83話 夏祭りが近づく

「プライベートダンジョンの神様、お 納(おさ) めください」

じゃら、じゃら、じゃら……。

――プライベートダンジョン2階層・夏祭り前の神社エリア。

俺は、メタルリザードのうろこなど、最近手に入れた金属製のドロップアイテムを 賽銭箱(さいせんばこ) に納めた。

賽銭箱からは小さな光の玉がいくつも浮かび上がり、神社の石段の下へと飛んでいく。

光は 参道(さんどう) に 連(つら) なる 提灯(ちょうちん) に吸い込まれていった。

「よし……」

ひとつ、またひとつと提灯に光が 灯(とも) り、反対に空は暗くなっていく。

一番星も見えた。

ダンジョン内の時間帯を想像するに、夕方5時くらいにはなったであろう。

「……うん、祭りに近づいたな」

あと何回かお 賽銭(さいせん) を納めれば、このダンジョンも真の姿を取り戻せそうだ。

また一般ダンジョンに 潜(もぐ) って、金属製のアイテムをゲットしないといけないけれど。

「まあ、今日のところはこんなものか。さてと……」

虫取りでもしながら、2階層を探索しよう。

俺は魔生物捕獲ネットを呼び寄せ、手始めに近くにいたトンボを捕まえた。

ボワン!

図鑑No.7/251

名前:ホソトンボ

レア度:0

捕獲スキル:速さ+1(初回ボーナス)

捕獲経験値:3

ドロップアイテム:魔石(微小)、鑑定メガネ

「うん、いいね」

メガネはドロップしなかったので、小さい魔石だけを拾う。

プライベートダンジョン2階層には、1階層とは違った虫がいるようだ。

神社の後ろに回ってみると、さっそく捕まえたことのない蝶がいた。

そっと近づき、虫取りアミを振り下ろす。

ボワン!

図鑑No.87/251

名前:ダンジョンマダラ

レア度:0

捕獲スキル:賢さ+1(初回ボーナス)

捕獲経験値:8

ドロップアイテム:魔石(微小)

「よし」

順調である。

てか、これだけ捕まえても図鑑にはまだまだ空きがある。

ぜんぶで251匹分のページがあるが、現在捕まえているのは60種類程度。

まだまだ先は長い。

「もしかしたら、ほかのダンジョンにも行かないと捕まえられない虫とかがいるのかな……」

例えば、太田ダンジョンや新宿ダンジョンにいたクモを、プライベートダンジョンでは見たことがない。

それに、このダンジョンの季節は 常夏(とこなつ) 。

春や秋の虫まではカバーしきれていない可能性がある。

「ぜんぶ集めるのは大変だな……。場合によっては他のダンジョンや外国にもいかないとダメなのかもな」

そう言いながらも、つい笑みが漏れてしまう。

先は長い――それを言い換えると、まだまだ俺には成長の余地があると言うことだからだ。

これまで得たスキルだけでも、しーちゃんいわく、俺には世界トップクラスのサポート能力があるらしい。

さらに成長を重ねていけば、トップ探索者への道も夢ではない。

「……はは」

神社の石段をおりながら、思う。

中学生のときに泣いて諦めた夢が、努力の先に見える。

こんな嬉しいことはない。

そうして、石段の下――参道のわきに屋台が立ち並ぶエリアへ移る。

「お……!」

前に来たときは、屋台は骨組みだけしかなかったけれども、ちらほらと 暖簾(のれん) が降りているところがある。

りんご 飴(あめ) 、ベビーカステラ、ボールすくい……。

商品は出ていなし店員もいないが、着々と準備は整っているようだ。

祭りの前は、気分がわくわくするな。

このまま無事に始まってくれればいいけど。

ダンジョン・ホーテの例もあるし、お店も普通に営業してほしいな。

そして。

「秘密基地のみんなと遊んでみたいな……」

浴衣(ゆかた) 姿のみんなを思い浮かべ、少し胸が 高鳴(たかな) る。

きっと、まなみんは当たりが入っているのかわからないクジを引いて、けっこうな金額を 散財(さんざい) するのだろう。

しーちゃんには、小さいりんご飴が似合いそうだ。

おタマちゃんは、ベタに、金魚すくいで 袖(そで) を 濡(ぬ) らすのだろう。

――存在しない思い出。

もしかしたら、俺に勇気や才能があったのなら手に入っていたのかもしれない過去。

だから、思う。

「――後悔のないように行動しないと」

参道から外れ、森の方へと歩いていく。

次第に 提灯(ちょうちん) の 灯(あか) りが届かなくなり、薄暗くなっていく。

そこで。

「あ……!!」

見たことのない、大きなカブトムシを見つけた。

黒光りするツノは先端が矢印のような形になっており、まるで 穂先(ほさき) に刃のついた 槍(やり) のようである。

「かっこよすぎだろ……!」

以前捕まえたロンギヌスオオカブトと同じように、ヘラクレスやコーカサスなどの海外のカブトムシと同じ印象を受ける。

小さいころに、図鑑で見て憧れた記憶がよみがえる。

何歳になっても、カブトムシへの思いは変わらないものだ。

「さて、捕まえるか。今回も頼むぞ……」

ゆっくりと手を伸ばし、背中をつかんで力を入れる。

すると。

ボワン!

図鑑No.48/251

名前:グングニルオオカブト

レア度:★★★★

捕獲スキル:|虫相撲(カブトムシに必中の神槍を付与)、攻撃+10(初回ボーナス)

捕獲経験値:2000

ドロップアイテム:魔石(大)

解説:神槍の名を冠するカブトムシ。狙ったものを必ず貫く力を持つと言われる。【童心】及び【神】にちなんだスキルを持った者のみ捕獲可能。※ 必中の神槍(グングニル) 発動後、対象を攻撃し使用者の手元に戻ってくるまでカブトムシは無敵状態になる。

「やった!」

解説にある【神】にちなんだスキルについては、【神速】もそうだし、《よみがえりの蝶》もそうなんだろう。

場合によっては、カブトムシの 聖槍一閃(ロンギヌス) もそうなのかもしれない。

いずれにせよ、余裕で条件クリアだ。

「……これでまた、強くなれたな」

聖槍一閃(ロンギヌス) は、俺の手持ちの技の中でもっとも攻撃力が高かった。

必中の神槍(グングニル) も、同格以上の性能がありそうだ。

「パーティのみんなと一般ダンジョンへ行きたいな。さっそく試してみたい……!」

俺もそれなりに強くなったとは思うけれど、ソロでダンジョンに潜れるほどの自信はない。

おタマちゃん 遭難(そうなん) 事件のように、ダンジョン内では何があるかわからないからな。

「みんなでダンジョンへ行こう。そして、お 賽銭(さいせん) になりそうなドロップアイテムをゲットしなくちゃな」

自分の成長と、近づく夏祭りの気配に、俺は期待を 膨(ふくら) らませた。