軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

方針を転換しました

爺さんから、この世界の常識を教えて貰って無い事が判明した驚愕の誕生会の翌日、昨日あの場にいた全員で魔法の練習場、荒野にやって来ました。

『ゲート』を開いたら全員顎が外れる位口を開けてビックリしてた。

なんでここに来てるかというと、これだけ世間知らずなら爺さんから教わった魔法もどんな事になってるのか確かめたい。とばぁちゃんが言ったからで、それに賛同した皆も見たいと言うので連れて来た。

「はぁ……この魔法だけでも驚きなのに、魔法の練習をする為にわざわざこんな所まで来てる事を考えると……あぁ、あんまり考えたくないねぇ」

「そうは言うがメリダ師、これは確認しておかんとシン君がどんなトラブルに巻き込まれるか分からんのだから諦めて確認しましょう」

……何かばぁちゃんとディスおじさんが失礼な事言ってる。まぁいいか、それじゃあ皆も見てる事だし張り切っていってみましょうか。

そうして、昨日爺さんに見せた『火』の魔法だけでなく、『水』を使って鞭みたいにしたり、凍らせて氷弾を飛ばしたり、津波を起こしたり『風』を使って、突風、真空波、竜巻、気圧差を利用したダウンバーストを起こしたり、電気を起こして雷撃を使ってみたり、『光』を屈折させて光学迷彩を発動したり、太陽光を集めて天からビームを撃ってみたり、『土』を使って超硬度の壁を作ってみたり、周りの土を弾幕みたいに発射したり、突撃してくる奴へのカウンターに地面から円錐形の杭を突き出してみたりした。

こうして一通りの魔法を見せた処でみんなの方を振り返った。

みんな、何かを諦めた様な乾いた笑いを浮かべていた。

クリスねーちゃんのこんな顔も珍しいな。

なんて思っていると、メリダばぁちゃんが爺さんに掴み掛かった。

「マーリン! アンタは……アンタは……何でこの子に『自重』を教えなかったのさぁ!!」

「確かに……」

「これはちょっと酷いですな……」

えーみんなしてチョット非道くね?

「だってのぅ……教えた事はみんな吸収しよるんじゃ、ついどこまで出来るのか見たくなったんじゃもん」

「何が『じゃもん』だい! 気色悪いんだよ!!」

おぉ、メリダばぁちゃん超怒ってる。

「これはちょっとおいそれとは世間に出せなくなったな……これ程の破壊力を持った魔法……先程使用したゲートの様な移動魔法……各国がシン君を手に入れたら、世界征服に乗り出す可能性が高い」

ディスおじさんがそんな不穏な事を言い出す。

え? これってそんなにヤバイの? ってかみんな使えないの?

「ええ、加えてミッシェル様に武術の稽古も付けて頂いています。近接戦も出来て、遠距離の魔法はこの威力。これが知れたら各国がシンを取り込もうと躍起になりますね」

とクリスねーちゃんも続く。

え? そんな大事なの?

まさかそんな事になるとは、と困惑しているとディスおじさんが改めて口を開いた。

「……マーリン殿、少し話があるのですが宜しいか?」

「ふぉ……ふぉ……その前に……この婆さん……何とか……してくれんか?」

「誰のせいだい! 誰の!」

襟首を締め上げられた爺さんが息も絶え絶えに答える。

ばぁちゃん、そんなに興奮すると体に悪いよ。

「誰のせいだい! 誰の!」

やっべ矛先がこっち向いた。

そのお陰でばぁちゃんの締め上げから逃れた爺さんとディスおじさんが話を始めた。

「マーリン殿、シン君のこの力は正直言って異常です。各国の勢力分布を狂わせる程の力がある。加えてシン君はこの森以外を知らない世間知らずです。このまま社会に放り出したら各国の思惑に踊らされる事になる。それはシン君の為にも世界の為にもなりません」

「そうじゃのぅ……」

ってちょっと非道い。これでも前世では社会人やってたんだよ。誰にも言ってないから知らなくて当然だけど。

「そこで考えがあります。シン君を我が国にある高等魔法学院に入学させませんか?」

「……それは、お主の国に取り込もうという考えかの?」

爺さんの声に険が篭る……爺さんのあんな声初めて聞いたな……。

「シン君を軍事利用しない事はこの場で誓いましょう。私だってシン君を赤子の頃から見ています。いつも甥っ子の様に感じていた彼を戦時の中に放り込むなど、私の感情が許しません」

「となると、どういう事かの?」

「ご存知の通り我が国の王都には高等魔法学院があります。この学院は十五歳までの中等教育が終わった者の中で特に優秀だった者を更に鍛える為の高等教育機関です。魔法使いの中でも特に優秀な者達が集う場所です。そこならシン君の魔法がいかに規格外か、一般に優秀とされる魔法使いがどの程度のレベルなのか知ることが出来るでしょう」

……俺、規格外なの?マジで?

「それに高等魔法学院の入学は十五歳からです。今まで同年代と付き合った事の無いシン君にとって友人を得る丁度良い機会だと思いませんか?歳の近いクリスとジークはその……こんなですし……」

あ、クリスねーちゃんとジークにーちゃんが目を逸らした……先で目が合ってメンチ切り始めた。

……そりゃ『こんな』扱いされるわ……。

「成る程のぅ……」

「確かマーリン殿は王都に家をお持ちでしたでしょう。そちらに住めばお金の使い方など世間一般の常識も学べると思うのですが」

「ふむ……のう、シン」

「ん? なに?」

「ワシはディセウムの言う事は尤もじゃと思うし、それが一番良いと思うのじゃが、どうかの?」

ディセウム? 誰そ……ああ! ディスおじさんの本名か!

「俺もそれで良いよ。学校って通ってみたいし、同い年の友達が出来るかもしれないんだろ? 何かスッゲェ楽しみなんですけど」

確かにみんなが気に掛けてくれるからね、寂しくは無いんだけど、やっぱり同い年の友達と馬鹿騒ぎってのも経験したいよね。

「そうか、なら学院には私から言っておこう。ただ、私としてはこのまま入学させてもいいのだが形式上入学試験を受けて貰う事になる、いいか?」

「別にいいよ」

「スマンな。入学後のクラス分けは入学試験の結果を元にしておるから試験を行わん訳にはいかんのだ。我が国の高等魔法学院は貴族の権威を一切受け付けない完全実力主義でね。私が便宜を図る事も出来んのだ」

「貴族の権威を振りかざした場合どうなるの?」

「厳罰に処する」

「恐っ!」

「優秀な魔法使いの芽を刈り取る行為だからな、国家への反逆とみなされる場合もある。シン君も気を付けろよ?」

とニヤニヤしながら言われた。

「そんなじいちゃんに迷惑が掛かりそうな事する訳無いじゃん。それよりさ、さっきから『我が国』とか権威があるっぽい話とか、ディスおじさんって何者なの?」

この機会に前から気になってた事を聞いてみた。

「おお、そういえば言って無かったな。私の本名は『ディセウム=フォン=アールスハイド』アールスハイド王国の『国王』だ」

……まさかの王様でした。

「じゃあ……クリスねーちゃんとジークにーちゃんは……」

「私は近衛騎士団所属の騎士で陛下の護衛としてここにいるの」

「俺は宮廷魔法師団所属の魔法使いさ。俺も陛下の護衛だよ」

まさかの王様の護衛でした。

「えー! クリスねーちゃんはともかくジークにーちゃんは嘘だぁ!」

「待てコラ、嘘ってなんだ! それよりもクリスは兎も角ってなんだ!」

「フフ、やはりシンは見る目が有りますね」

「何だとコラ」

「何ですか? あぁん?」

またメンチ切り始めた。

「まぁあの二人は置いといて「「おい!」」じゃあミッシェルさんは?」

何か後ろで騒いでるけど放っとこう。

「私はもう騎士団は何年か前に引退したな。引退する前は騎士団総長をしていたよ」

何? この王国の重鎮勢揃いな状況は?

「でも何でそんな王様がウチのじいちゃんを訪ねてくるのさ?」

「ふむ、私が王と分かっても態度は変えないのだな?」

「だって昔から知ってるおじさんだもの。それこそ親戚の叔父さんだと思ってたよ。だから今更態度を変えろって言われても出来ないよ」

「はっはっは、良い良い、ウチの本物の甥っ子姪っ子、それに実の息子に娘まで私には敬語だからな。こんな砕けた会話が出来るのはお前だけなんだ。くれぐれも変わらないでくれよ?」

随分気さくな王様だな。

「それは分かったけどさ、ここに来る理由は?」

「おっと、そうだったな。シン君、君のお祖父さん、マーリン殿が昔魔物化した人間つまり魔人を討伐した話は知っているか?」

「うん、じいちゃんから聞いた事あるよ。その時に幾つかの町や村が無くなって国が一つ滅び掛けたって」

「その滅び掛けた国の名前は知っているか?」

「いや、それは聞いて無い……けど……」

この話の流れはまさか……。

「そう、お察しの通り我が国だ」

「そうだったんだ……」

「私がまだ高等魔法学院の生徒だった頃だ。我が国に魔人が現れて村を一つ破壊してな、私の父上……当時の国王だな、父上や国の上層部は蜂の巣をつついた様な大騒ぎだった。何度も討伐部隊を送っては返り討ちに合うという事を繰り返していてな、ついに町まで破壊されてしまいとうとう魔法学院の若い魔法使いにまで討伐の要請が下って、私も討伐隊に名を連ねた」

王子様ってそんな危ない事していいの?

「それって反対されなかったの?」

「勿論大反対されたさ。当時既に立太子の儀は終わって王太子になってたからな。だが実力主義の魔法学院で成績優秀者だった私のプライドが許さなかった。私の友人達が死地に赴こうとしているのに私だけ安全な場所にいられるかと」

カッケー、ディスおじさんマジカッケー

「おぉ……」

「だが……やはり恐いものは恐くてな。出立の日が近付くにつれ友人達も眠れない日々を過ごした。そしてとうとう出立してな、実際に魔人と相対したのだ。あの時の絶望は今でも覚えてるよ」

「で?どうなったの?」

「私達魔法学院の生徒だけでなく、熟練の戦士や魔法使いまでその魔人に圧倒されてな、もはやここまでか? と思った時に現れたのが……」

「じいちゃん」

「それとメリダ師だな」

え? ばぁちゃんもその場にいたの?

「アタシは付与魔法使いさね。サポート位しかしとらんよ」

「それでも凄いよ」

「そ、そうかい?」

ばぁちゃんが照れてる。ちょっと可愛いかも。

「そうして颯爽と現れた二人は苦戦しつつも、とうとう魔人を討伐してな。猛烈な勢いで敵と相対するマーリン殿と妖艶とも言える容姿で魔道具を繰るメリダ師のその姿に震えが来る程の憧れを持ったものだ」

猛烈? 妖艶?

「じいちゃん……ばぁちゃん……」

「何も言うてくれるな……若気の至りじゃ……」

「なんだい?アタシはまだまだ捨てたもんじゃないだろ?」

ばぁちゃん……

「ま、まぁともかく、そうして魔人を討伐したのだ。尚且つその場に私が居たものだから国難を救い王太子まで救った者として国から英雄として取り上げられてな、それ以来マーリン殿とは立場を越えた友人となって貰ったのだ。それは即位した後も続いていて今もちょくちょく政治の愚痴を聞いて貰いに来ているのだ」

そうか……って

「愚痴かよ!」

「そりゃそうだろ、国の政治は私の仕事であり責任だ。マーリン殿とはいえその責任を押し付ける訳にはいかんだろ」

カッケー、やっぱディスおじさんマジカッケー。

「そういう訳でな、大恩ある人物の孫なんだ、政治利用したり軍事利用したりはするつもりは無いから安心して来い」

「うん、分かった。で、いつ行けばいいの?」

「あぁ、来月年が明けたら試験があるから、それまでに王都に引っ越してくれたらありがたい」

という事で王都に引っ越すことになりました。社会常識も学ばなければいけないので爺さんも一緒です。

爺さん離れ出来ないのは情けないけどちょっと嬉しくもある。王都ではどんな暮らしが待っているのか楽しみだ。

そして最後にちょっと気になった事を聞いてみる。

「それよりさ、じいちゃんとメリダばぁちゃんって昔一緒にパーティー組んでたんだね」

そう言うと、何だか微妙な空気になった。

え?なに?

「一緒のパーティーというか……お二人は元夫婦ですよ?」

クリスねーちゃんが特大の爆弾を落とした。

「え、えぇぇぇ!!!」

「……ほっほ」

「……若気の至りさね」

マジでか?