軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大変な事に気付きました

今日も爺さんとお出掛けです。

と言っても買い出しに出てるとかピクニックに来てるとかそういう訳ではありません。

今日の目的は俺が魔法をどれだけ使える様になったのかを見るための、言わば試験の様なものです。なので今いるのはいつもの森ではなく、木も草も生えていない荒野です。

爺さんにこの場所を教えて貰って以来、魔法の練習はここでするようになりました。

「ふむ? ここ、こんな地形じゃったかの?」

爺さんが何か呟いてる。

「しばらく来てないから勘違いしてるんじゃない? まぁそんな事より早く始めようよ」

ちょっと冷や汗を流しつつ早く始めようと爺さんを促す。

「そうじゃの。それでは、シンがどれだけ魔法を使える様になったか見せて貰おうかの」

そうして所謂『卒業試験』が始まった。

俺は早速魔力を集中させる。さて、どんな魔法から始めようかな?まずは基本の『火』からかな?

まずイメージするのは燃焼。空気中の酸素に着火し火種を生み出す。更に周囲の酸素を取り込んで燃焼を促す。そうして生まれた炎は十分な酸素を取り込みどんどん温度を上げる。

「青白い炎なんぞ初めて見たのぅ……」

そしてその炎を周囲に幾つも生み出す。

「こんなに沢山の炎も初めて見たのぅ……」

そうして炎を生み出すまでほぼ一瞬。そしてその炎を少し離れた地面に向けて打ち出す。

ドグッ!!!

と、少しくぐもった音を出して着弾した。

超高温の炎を打ち出したとはいえ爆発する様なものでは無いので特に爆散はしない。しかし超高温の炎が着弾した地面は融解しマグマの様になっている。一部ガラス化してる所もあるな。

「……」

あれ? 爺さんの感想は?

ま、いいか。次だ次。

次は先程の炎をもう一度創り出し、今度はその炎を細長い形にし更に回転を加える。イメージは弾丸だ。

打ち出した炎の弾丸は、先程の炎の玉とは桁違いのスピードで同じ所に着弾した。

ドンッ!!!

スピードという要素が加わった為、熱による融解だけでなく加速の勢いを持って周囲を吹き飛ばした。

「……」

あれ? また?

じゃあ次だ次。

今度は先程の炎の周囲に酸素と水素を混ぜた混合気を纏わせ、決して触れさせない様に気を付ける。そして今度は大分離れた場所に向けて打ち出す。

ドガアァァン!!!!!

凄まじい大爆発を起こした。

あ、でっかいクレーターが出来た。まぁそんな事が起きても大丈夫な様にこの荒野を選んだので問題無いか。

「……」

あっれぇ? なんで何も言ってくれないの?

仕方ない、また別の魔法で……。

「……ハッ! これ! 待たんか! もうよい、もう十分じゃ」

お。爺さんからやっと声が掛かった。

「どうだった? じいちゃん」

「まさかこれ程とは思わなんだのぅ……一人でここに通う様になってからここまで成長しとるとは……」

「て事は?」

「文句無しに合格じゃよ」

お、おぉ!

「ヨッシャアァァ!!」

両手を突き上げてガッツポーズ。いやぁ爺さんに認められたいが為に頑張ってきた甲斐があったよ。

「ホンに立派になって……明日で十五歳、成人になる事じゃし、これで独り立ちかのぅ……」

「……あ」

……そう、俺は明日で十五歳になる。この世界の成人は十五歳。一部の例外を除いて十五歳になると社会に出る。そしてここは深い森の中だ。社会に出る為にはこの家を出なければならない。

今ここで生活する分には何の支障もない。なら家を出なくてもいいのではないかと思ったが、それは爺さんやばぁちゃん、その他の大人達も許してくれなかった。

そんな訳で十五歳になったらこの家と森を離れて生きていく事が決まっていた。

ちなみに、服やその他の生活必需品は家に来る大人達の中に商売をやっているおじさんがいたので、その人が持ってきてくれていた。なので、俺は一度もこの森を離れた事はなかった。

なので、この森を離れ新しい生活が始まる事に対しては楽しみにしている部分もあるのだが、爺さんと離れる事が寂しいと感じる事もあり非常に複雑な心境だった。

そんな複雑な心境のまま、家に帰る為に『ゲート』を開いた。

この『ゲート』の魔法は俺のオリジナルだ。元々異空間を創り出しその中へ物品を納める魔法は存在する。爺さんも使えるし教えて貰ったのも爺さんからだ。これは割とメジャーな魔法らしい。

そうやって異空間に干渉出来るならと考えた魔法が『ゲート』だ。

これは、今いる場所と行きたい場所を『線』ではなく『点』で結ぶ事をイメージしている。

……分かりにくいかな。例えば紙に二つの点を描き、それを最短距離で結ぶのは、一直線に線を引く事ではない。紙を折り曲げて点と点を直接結ぶのが最短距離だ。

そうイメージするとあっさりゲートが開いた。

直接転移しないのは、転移するという事は一旦体を分解し転移先で再構築するという事だ。なんか上手く再構築出来なかった時の事を想像すると恐くて試す気になれなかったのだ。

そうやってゲートを開いて帰ろうとすると。

「はぁ……これも大概じゃのう……まぁこの魔法を使えばいつでも帰ってこれるし、そう気を落とさんでもええじゃろうに」

あ、そうか! これがあるんだからいつでも帰ってこれるじゃん!

……はい……今まで気付きませんでした。

そんな懸念が払拭された為、大分気が楽になり家に帰った。

そして翌日。俺の十五歳になった祝いのパーティーが催されていた。参加者は、爺さん、メリダばぁちゃん、ミッシェルさん、ディスおじさん、クリスねーちゃん、ジークにーちゃん、トムおじさんだ。

今まで名前しか出てなかった人や名前自体初めて出た人もいるな。

ディスおじさんは黄土色っぽい金髪をして口髭を生やしている翠色の目をしたナイスミドルなおじさんだ。いつも凄く上質な服を着ていて風格? カリスマ? があってなんか遣り手の社長さんみたいな雰囲気がある。

中身はすごく気さくなおじさんだけどね。爺さんとはよく難しい話しをしてるし、その内容は教えてくれないので何をしてる人かは知らない。

クリスねーちゃんは、赤い髪をポニーテールにして茶色い目をしてる二十代前半のおねーさんだ。いつも動きを阻害しない程度の鎧を着ていて引き締まったスレンダーな体型をした人だ。

すごく真面目で固い人なのであまり笑った所を見た事がない。優しい人ではあるんだけどね。如何せん無愛想というか……目も大きいし可愛い顔してると思うんだけど、色々と損をしてそう。

ジークにーちゃんは銀髪に青い目をしたイケメンのにーちゃんだ。動きやすい服とローブを着ている所から魔法使いだとは思うが、イケメンで性格も軽いので、ヒモ生活を送ってると言われても違和感はない。

クリスねーちゃんとは水と油って感じで……会えばよく喧嘩になる。

俺の前で喧嘩すんなとよくメリダばぁちゃんとミッシェルおじさんに怒られてる。

トムおじさんはさっき言った家に来る商人さんだ。結構大きな商店の代表らしいが、爺さんに恩があるらしく今でも自分で家まで商品を持ってきてくれる。茶色の髪と目をした小太りのおじさんで、その恰幅の良さが商人としての貫禄を出している。非常に優しいおじさんで本やら何やら持ってきてくれる。

クリスねーちゃんとジークにーちゃんは最近になってディスおじさんと一緒に来る様になった人で、メリダばぁちゃん、ミッシェルおじさん、ディスおじさん、トムおじさんは昔からよく来てくれていた。

そんな爺さんの客達も俺の誕生日に来てくれた。

ちなみに、正確な誕生日は分からないので俺を拾った日を一歳の誕生日としている。拾われた時、一歳前後だったらしいから。

そして、俺の十五歳の誕生日のお祝いが始まった。仕切ってるのはディスおじさんだ。

「さて、我らが英雄マーリン殿のお孫さんがこの度目出度く十五歳になり成人した。これを祝って乾杯したいと思う。それでは皆、杯を持て。それでは、シン君の十五歳と成人を祝って、乾杯!」

「「「「「「乾杯!」」」」」」

「皆さん、ありがとうございます」

こうして宴が始まった。

「あの小っこい赤ん坊だったシンが成人するとはねぇ……」

しばらくは爺さんやばぁちゃんの孫自慢が続き、何ともこそばゆい思いをしていたが、やがて話題は俺のこれからの事に及んだ。

「そう言えばシン君、これからどうするのかね」

とディスおじさんが聞いてきた。

「そうですね。とりあえず近くの町へ行ってみます」

「そうか、それから?」

「それから?」

そういえば、町に着いてから何をするのか考えて無かったな。

すると、場が静寂に包まれた。

「え? 何かあるだろう? 町や都に行けばシンなら魔物ハンターにでもなれるだろうし、付与魔法で魔道具屋だって出来るだろうし、そんだけ男前なら女の子と仲良くなって養って貰えるかもしれないし」

「そんな考えを持ってるのはアナタだけですね」

とジークにーちゃんとクリスねーちゃんがメンチ切り合ってる。

「ハンター? 魔道具屋ってすぐ出来るの?」

何? 魔物って討伐したらお金貰えるの? 魔道具屋は分かるけど店なんてすぐに持てないでしょ?

「まさかとは思いますが……シンさん、今まで買い物とかした事ありますか?」

「あぁそういえば、今まで買い物はトムさんからしかした事無いですね。お金のやり取りはじいちゃんがしてたからやった事無いです」

トムおじさんの質問に答えるとまた静寂に包まれた。

「マーリン……アンタ……」

「マーリン殿、これは……」

メリダばぁちゃんとミッシェルおじさんが爺さんを見る。

すると爺さんは……。

「あ、常識教えるの忘れとった」

「「「「「「何ぃーーーーー!!!」」」」」」

そういえば、魔法ばっかでその辺何にも教わって無いわ。