軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シルバーは見た!

散歩の途中でマリアたちと出会い、ナターシャさんの心の闇を垣間見てしまった俺たちだったが、ようやく目的地である公園に辿り着いた。

「はぁ、ようやく着いた」

「ほらシルバー、ママたちはここにいますから、お友達と遊んでいらっしゃい」

「あい!」

シシリーに促されたシルバーは、元気に返事をすると友達がいるところに向けて走り出した。

「あ、シシリー、一応アタシ、シルバーに付いてようか?」

「うーん、そうだね、じゃあお願いできる? あ、別に混ざらなくていいから、側で見ているお母さんたちと一緒に見ていてあげて」

「分かった」

ミランダはそう言うと、シルバーを追いかけて行った。

シルバーが一緒に遊びだした子供たちの側で、見守っているお母さんたちに挨拶しているのが見える。

シルバーはこの公園では、俺たちの子ってことで有名だからな、変な誤解はしないだろうけど、なんかミランダがワタワタしてる。

なんだろ?

「ふふ、きっと『貴女のお子さんの予定は?』とか聞かれてるんですよ」

「そうなの?」

「ええ、多分そうだと思いますよ。ほら、ミランダの顔が赤いですもん」

え、ちょっと離れてるけど見えるもんか?

シシリーとミランダの付き合いも、もう三年になるんだもんな。

ちょとした仕草なんかでミランダの様子も分かるんだろう。

「私もシルバー様の御側についていたいのですけど……あのお母様方と単独でご一緒する勇気はまだありませんね……」

期せずして、ナターシャさんもミランダと同じく彼氏がいないことが判明したので、あれやこれやと聞かれそうなご婦人方は苦手なんだろうなと予測できた。

まあ、ミランダもナターシャさんも、美人の部類に入るし、その内いい出会いがあるだろう。

最初は彼氏がいなかったユーリにも彼氏ができたし、その筆頭と思われていたマリアにも春が訪れそうな予感がする。

……まあ、マリアがそのチャンスを逃さなかったら、だけど……。

リンは相変わらず恋愛には興味がないようで、暇さえあれば魔法学術院に行って、魔法オタクたちとワイワイやっている。

なんか、リンはずっとそうしているような気がするな。

アリスに関しては分からん。

マリアと一緒になって、彼氏が欲しいけど出来ないって騒いでたけど、先日のアリスの態度から、ちょっと怪しいんじゃないかと思っている。

けど、ホントにそうなのか分かんないんだよなあ。

ただ単に興味があっただけかもしれないし。

それにしても、こうしていると改めて思う。

「……俺たちの関係って、随分変わったなあ」

「はい? シン君、どうしたんですか?」

あ、思ったことを声に出しちゃってた。

「ああ、いや。最初はさ、俺らだけだったじゃん。俺らだけで学院で研究会作って、一緒になって魔法の研究をしてさ」

「そうですね」

「それが、今は俺とシシリーは結婚してさ、養子だけど子供がいて、今度は実の子が産まれてくる」

「ふふ。オリビアさんとエリーさんも、もうすぐお母さんですしね」

「トールとユリウスも結婚しただろ? まだ子供ができたって話は聞かないけど、そう遠くないうちにそんな報告も聞けると思う」

「トニーさんとユーリさんは、まだ先だって言ってましたね」

「そうだったな。けど、こうやって、ただの同級生だったのに、結婚して子供ができて、また新しい出会いがあって」

「ナターシャさんたちともお友達になりましたしね」

「いつの間にか、同級生から夫婦同士になって、そのうち親同士になって……なんか、最近まで学生だったのに、随分と変わったなって……」

同じ年ごろの子供たちと遊ぶシルバーと、予想以上にやんちゃな子供たちに驚いたのかオロオロしているミランダを見ながらそう言うと、シシリーがそっと俺の手を握ってきた。

「素晴らしいことですよね。皆大人になって、家族を作って、その繋がりが広がっていく。きっと私たちの両親も、シン君のお爺様やお婆様も、そうやって繋がりを広げていったんだと思います」

「……誰も最初から親じゃないってことか」

「そうですね。私たちも、シルバーやこの子たちが誇れるような親にならないといけませんね。パパ」

シシリーはお腹を摩りながらそう言うと、ニッコリと微笑んだ。

慈愛に満ちたその表情を見て、俺も思わず微笑んだ。

「そうだな、ママ」

そうして俺たちは、見つめ合って微笑み合った。

「うう……素晴らしいです、聖女様、御使い様」

すると俺たちの後ろにいたナターシャさんが、なぜか泣いていた。

「……なんで泣いてんですか?」

さめざめと涙を流すナターシャさんを見て、俺はドン引きしながら理由を聞いた。

「だって、今の聖女様と御使い様のご関係が、あまりにも素晴らしくてっ! これを見て涙を流さない人間なんているはずがありません!」

「いや……沢山いるでしょ」

「あはは……」

なんで俺らを見て泣くんだよ、意味分かんねえよ。

まあ、ナターシャさんはシシリーや俺のことを若干神聖視してる節があるからなあ。

なにを見ても感動するんだろう。

なんだか水を差された気分になって、シシリーと苦笑し合ってシルバーたちを見守ることに専念しようとした。

だが……。

「あれ? シルバーは?」

「そういえば……いませんね……」

子供たちの中にシルバーがいないことに気が付いた俺たちは、背筋に冷たいものが走る感覚に陥った。

「ミ、ミランダは!?」

そう思ってお母さん方がいる方を見てみると、お母さん方からの質問攻めに遭っていた。

ヤバイ!

シルバーたちを見てない!

もしかして、ちょっと目を離した隙にどこかに足を運んでしまったのだろうか?

今いるこの公園は、子供が遊べる遊具の他に広い芝生などがあり敷地面積は広い。

フラフラとどこかに行ってしまうと、迷子になってしまうこともある。

「さ、探さないと!」

シシリーが慌ててベンチから立ち上がろうとするので、俺はそれを押しとどめた。

「シシリーはここで待ってて! 俺が探してくる!」

「そんな! シン君私も……あれ?」

「え? ん?」

シルバーを探しに行こうとしたところで、シシリーが首を傾げた。

その視線の先を追うと……。

「シルバー!」

そこには、シルバーがトコトコとこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。

良かった! 迷子になってたんじゃなかった!

シルバーの姿を見て安堵した俺は、すぐにシルバーのもとに走って行った。

「どこに行ってたんだシルバー!」

俺たちの姿が見えない場所に行ってはいけないとあれほど言っていたのに。

これは叱らないといけないなと思っていると、シルバーは真っすぐ俺のほうに歩いてくると、ギュッと俺の手を握った。

「ぱぱ! ありちゃ! あっち!」

「え? 蟻さん?」

「ちあう! ママッ!!」

「え? ああ、はい。なんですかシルバー?」

俺の手を握ってなにかを訴えてくるシルバーだったが、今一なにを伝えたいのかが分からない。

首を傾げていると、焦れたのか今度はシシリーを呼んだ。

呼ばれたシシリーは、ベンチから立ち上がり俺たちのところへやってくる。

「ありちゃ! あっち!」

「蟻さん?」

「んーっ!」

一向に話が伝わらないことに苛立ったシルバーが、足をダンダンと踏み鳴らす。

え? なに?

「あっち!」

どうしても理解しない俺たちに痺れを切らしたシルバーは、俺とシシリーの手を取り、引っ張るように歩き始めた。

「どうした? なにかあったのか?」

「シルバー?」

どうしたのかと問い掛けるが、答えてくれない。

な、なんで返事してくれないの?

……これが反抗期か……。

そう思って絶望していたが、一緒についてきたナターシャさんは冷静だった。

「恐らく、話が通じないと思って、言葉で言うより見せた方が早いと思ったのではないですか?」

……そ、そうだな!

分かってましたよ?

ともかく、シルバーはなにか俺たちに見せたいものがあるらしく、大人しく手を引かれて行った。

そして、連れて行かれた先には……。

「にゃっ、にゃあっ!? なんで連れてくるのシルバー!? シーッて言ったじゃん!!」

「ん?」

とても聞きなれた声が聞こえた。

「ぱぱ、まま、ありちゃ」

そう言って示す先には……アリスがいた。

ありちゃって、アリスちゃんって言いたかったのか。

アリスは、芝生の上に敷物を敷いて座り、その上にはお弁当が広げられている。

そして、その敷物の上にはもう一人の人物がいた。

それは……。

「お、お兄様!?」

「やあ、シシリー。奇遇だね」

シシリーの実の兄、ロイスさんだった。

ええ!?

マジで!?

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時間は少し遡る。

いつものように、皆とボール遊びをしていたシルバーは両親の言いつけを守り、必ず二人が見える場所で遊んでいた。

近くによその子の親がいるけれども、シルバーが信頼しているのはシンとシシリーの両親のみ。

二人が言うことは絶対に守らないといけないと、言いつけをちゃんと守っていた。

だが、何事にもイレギュラーは存在する。

友達の一人が投げたボールが、シルバーの頭上を越えて行ってしまったのだ。

「ごめーん!」

「だいじょーぶ!」

謝る友達に対し、シルバーは問題ないとボールを追いかけていく。

このときのシルバーの目にはボールしか見えておらず、両親の姿が見えなくなっていることに気付いていなかった。

ボールが転がっていってしまったのでしょうがないのである。

やがてボールに追いついたシルバーは、元の場所に戻ろうとしたが、ある光景が目に入った。

それは、知っている人がご飯を食べている様子だった。

そういえば、シルバーはまだご飯を食べていない。

公園から帰ったらお昼ごはんになるからだ。

知ってる人がご飯を食べていたので、ついシルバーはフラフラとそちらの方へと吸い寄せられるように歩いて行ってしまう。

そして、その人物の元に辿り着いた。

「ありちゃ!」

「え? わあっ! シ、シルバー!?」

「あれ? 本当だ、こんにちはシルバー」

「おーたん! こんちゃ!」

そこにいたのは、両親の友人で時折遊び相手になってくれるアリスおねえちゃんと、母であるシシリーの兄であるロイス叔父さんだった。

「おーたん、ありちゃ、ごあん?」

「え? うん、そうだよ。シルバーは遊びに来てるの?」

「うん。ぱぱとままといっしょ!」

「二人もいるのか……そりゃ当然か」

そう言ってアリスは天を見上げた。

ここはどうしてもシルバーに引き下がってもらうしかない。

しかし、シルバーの視線は、アリスたちの食べているごはん……お弁当に釘付けである。

さてどうしようとアリスが思案していると、叔父であるロイスがシルバーの頭を撫でながら言った。

「シルバー、お昼ごはんはなんだろうね?」

「う? わかんない」

「お昼はママが作ってくれるの?」

「えっと、こえうとかままとか」

「こえう?」

シルバーがなにを言っているのか分からなかったロイスは首を傾げるが、心当たりのあったアリスが補足した。

「コレルさんのことだと思うよ。ウォルフォード家の料理長」

「ああ。シルバー、ここでご飯を食べて、おうちでもご飯を食べられるかい?」

「たべれる!」

「本当に?」

「いっぱいたべる!」

「そっか。でもね、もしたべきれなかったら?」

「う?」

「ママが、折角シルバーのために作ってくれたご飯を残しちゃったら、ママ悲しむと思うな」

「……まま、ないちゃう?」

「そうだねえ。泣いちゃうかもしれないなあ」

ロイスがそう言うと、シルバーは少し悲しい顔をしたあとロイスに言った。

「かえってたべゆ!」

「そうだね。偉いぞシルバー」

「えへへ」

なんとか視線をお弁当から引きはがすことに成功したロイスは、シルバーの頭を偉い偉いと言いながら撫でる。

褒められてご機嫌なシルバーはニコニコしている。

「じゃあ、ママたちが心配してるだろうから、そろそろ戻りなさい」

「あ! ぱぱ、まま、みえない!」

言いつけを破ってしまったことをようやく自覚したシルバーは、慌ててボールを持って元の場所に戻ろうとした。

「ありちゃ! おーたん! ばいばい!」

そう言って駆け出したシルバーの背に向かって、アリスが声をかけた。

「あ! シルバー! パパとママにはシーッ! だよっ!」

「あい!」

走りながらもハッキリとそう返事したシルバーを見て、アリスはホッと息を吐いた。

こんなところ、あの二人に見られたら、きっと只じゃすまない。

シルバーは頭のいい子だから、きっと大丈夫だろう。

そう油断していた。

アリスは忘れていたのである。

どんなにお利口で頭がよくても、シルバーは所詮二歳児であることを。

一方のシルバーは、トテトテと皆の元に戻ってきた。

「おそーい!」

「なにしてんだよ」

「ごめーん」

シルバーはそう言ってボールを離れたところから投げ、自分は歩いて皆と合流しようと思った。

そうしてトテトテと歩いていると、父がこちらに向かって来ているのが目に入った。

シルバーは咄嗟に思った。

パパとママが見えないところに行ったから怒られる!

そう思ったシルバーは、アリスに弁解してもらおうと考えた。

このときすでに、内緒にしてというアリスの言葉は綺麗さっぱり忘れている。

パパとママのお友達であるアリスの言うことならきっと納得してもらえると考えたシルバーは、一生懸命それを伝えようとするが、中々伝わらない。

しょうがないので、両親の手を引っ張って、アリスたちの元へと向かったのである。

まさか、シルバーがお願いを無視してシンとシシリーを連れてくるとは夢にも思っていなかったアリスは、奇妙な叫び声をあげてしまったのだった。