軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交渉開始

不良役人の襲撃を撃退した俺たちは、早速その縛り上げた役人と兵士を飛行艇に乗せ、二週間お世話になった村をあとにした。

別れ際に挨拶をしたんだけど……。

国の兵士たちをあっという間に制圧してしまった俺たちに恐怖を感じたのか、皆遠巻きに見ているだけで俺たちに近寄ってこなかった。

俺はまあ、時々周りからドン引かれることがままあるので、こういう対応には慣れっこだけど、女性陣はダメージが大きかった。

「はあ……見た? あの化け物を見るような目……」

特に落ち込んでいるのがマリアだ。

マリアは、常々彼氏が欲しいと言ってる。

今回滞在した村にも若い男性がいたのだが、一切見向きもしていなかった。

それなのに、なぜこんなにダメージを受けているのか。

それは、世間一般の男性が自分に抱いているイメージを村の男たちが体現して見せたからだ。

恐怖の対象。

確かに、俺たちをアールスハイドやその他周辺国では英雄と呼んで親しんでくれている。

だがそれは、あくまで俺たちの功績しか見ていないのだ。

アイドルと同じである。

だがマリアが求めているのは、自分を愛してくれる男性だ。

アイドルとして崇拝してくれる男性じゃない。

で、その崇拝してくれている男性でも、マリアの戦闘力を見たらどうなるか。

……相当凹んでる様子だな、こりゃ。

ちょっと強くなり過ぎたかも。

こうして凹んでいるマリアをシシリーがなんとか宥めながら、俺たちはクワンロン国内の上空を、我が物顔で横断していった。

そして、シャオリンさんの道案内? に従って進むこと数時間。

「見えてきました。あれがクワンロンの首都、イーロンです」

地平線の先から、アールスハイド王都とほぼ同じくらいの規模の都市が見えてきたのだった。

さて、ここからが本番だ。

と言っても、交渉に関しては俺にやることはないんだけどね。

オーグとナバルさんにお任せだ。

イーロンに着いたと思ったが、なぜか飛行艇は着陸しない。

魔物から都市を守るためのものと思われる外壁のすぐ外くらいの上空でずっと待機している。

高度はかなり下げており、外壁と同じ高さくらいまで下がっている。

つまり、当然人の目にもさらされる訳で、皆あんぐりと口を開けている様子まで分かる距離だ。

そのまましばらく待っていると、門から武装している兵士と、武装していない人間が沢山出てきた。

どうやら、これを待っていたらしい。

その姿を確認すると、飛行艇はゆっくりと降りて行った。

一応警戒するが、兵士たちは武器を構えることなく、規則正しく並んでいる。

どうやら、敵対する意思はないらしい。

ここでも敵対する意思を見せられたら、さすがに言い訳の余地なく外交問題だから国交の樹立など不可能。

交易も無理だからシャオリンさんの願いは、全てご破算になってしまう。

そのことがよく分かっているのだろう、シャオリンさんは自国の兵士たちの対応に、露骨にホッとした顔を見せていた。

やがて飛行艇が地面に着陸し、ドアを開けナバルさんを筆頭とするエルス使節団。

そしてオーグを先頭とするアルティメット・マジシャンズ……今はアールスハイドの使節団だな。

そして、最後にシャオリンさんとリーファンさんが砂漠との境界の村で捕縛した役人と兵士を引き連れて降り立った。

ズラリと並んでいる役人、兵士たちの中から特に豪華な服を着ている人物が前へと歩み出した。

恐らくこの人が、今回の交渉担当の人なんだろう。

早速なにか喋っている。

「クワンロンへようこそ、私は交渉担当のハオです。と言っています」

シャオリンさんの通訳を聞いて、ナバルさんは笑顔で言った。

「こちらこそ、大層な歓迎をしてもろて、感激しとります」

うわあ。

大層なってとこを殊更に強調したよナバルさん。

まあ、シャオリンさんの通訳も入るし、その辺のニュアンスは伝わらないとは思うけど……。

ナバルさんの言葉を聞いたハオさんは笑顔になると、俺たちの後ろで縛り上げられている役人と兵士たちを見た。

そして、またなにかを言った。

「そちらは伝令の使者なのですが、なぜ縛られているのかと聞いています」

「使者? この国では、外交使節団に突然攻撃をしかけ、我々の乗ってきた飛行艇を奪おうとする者を使者と呼ぶんですか?」

ナバルさん、いきなり攻撃的過ぎません?

通訳してるシャオリンさんもちょっと顔色が悪くなってますよ。

その通訳を聞いたハオさんは、顔を顰め、メッチャ怒りだし、なにか怒鳴っている。

「あの……このような輩を使者に選んだのは誰だと……え?」

ハオさんはなにかを怒鳴ったあと、もう一度シャオリンさんになにか言った。

「えっと、その不埒ものはこちらで厳正に処分するので、どうかお引渡しいただきたいとのことです」

「そうでっか。それでは、引き渡しますわ」

ナバルさんはそう言うと、縛られている役人たちをハオさんたちの前に連れ出した。

「それでは、厳重な処罰を……」

ハオさんに向かってそう言おうとしたとき。

『------!!』

ハオさんは突然腰に下げていた剣を抜き、役人の首を切り飛ばした。

残りの兵士たちも、ハオさんの近くに控えていた兵士たちが次々と斬り捨てていく。

その、あまりにも苛烈な処罰に、俺たちは思わず唖然とし、魔物はともかく人死ににあまり耐性のない使節団の人たちの顔色が悪くなった。

あー、これが目的か?

最初に強烈な暴力を見せて、恐怖を植え付けようって魂胆なのかも。

実際、使節団の人たちは、若干顔色が悪い。

けど。

「随分と苛烈でんな。この国では裁判もなしに死刑を執行するんでっか?」

極めて平然とナバルさんはそう言った。

俺たちは、あの魔人王戦役の際、散々魔人と戦ったからな。

中身は魔人とはいえ、人には違いない。

それを散々手にかけたから、女性陣も含めて目の前で人が斬り殺されても恐怖など感じていない。

ちょっと眉を顰めただけだ。

まあ……そういう慣れもどうかと思うけど……。

でもナバルさんは戦闘職の人じゃない。

なのに、なんでこんなに平然としてられるなんて、エルスでは商人の交渉でも結構人死にが出るんだろうか。

……あ、違うわ。

よく見ると、小刻みに足が震えてる。

けど、幸いにもハオさんにそれは伝わらなかったようで、シャオリンさんの通訳を聞いてちょっと驚いている。

「お目汚しをして申し訳ないと、お詫びにもてなしをさせて頂くと言っています」

「そうでっか。それでは、今日のところは休ませてもろて、明日お話合いをしましょか」

シャオリンさんがハオさんに通訳すると、ハオさんはにっこりと笑ってなにか言ったあと、馬車に乗りこんだ。

「馬車を用意してあるので、それに乗ってほしいそうです。行政府に案内すると」

よく見ると、馬車はハオさんの乗り込んだ一台ではない。

何台か用意されているので、こちらの人数は伝わっているのだろう。

首都は結構広そうなので助かった。

ハオさんの言葉通りに馬車に向かおうとすると、シャオリンさんが話しかけてきた。

「あの……飛行艇はどうしますか?」

「ああ、シン」

「ん?」

「お前の異空間収納に、これ入るか?」

「入るよ」

「では、収納しておいてくれ」

「分かった」

オーグに要請されたので、俺は異空間収納を飛行艇の下に開いた。

すると、飛行艇はまるで地面に吸い込まれるように異空間収納に収まった。

「それじゃ、行きましょうか?」

「な……な……」

ん?

シャオリンさんが、なんかワナワナしてる。

「シャオリンさん? どうしました?」

「どうしましたって! なんですか!? あのデッカイ異空間収納の収納口は!」

「え?」

なんですかって……。

「飛行艇を収納するんだから、デカくないと入らないじゃないですか」

「そりゃそうですけど! そうですけど!!」

シャオリンさんが、なんか頭を掻きむしっている。

ホント、どうした?

シャオリンさんの不可解な行動を見ていると、オーグがその肩にポンと手を置いた。

「こんなのは序の口だ。シンの非常識は本当に非道いぞ」

なんだよ、これくらい皆出来るだろうが。

なんで俺だけそんなこと言われなくちゃいけないんだよ?

オーグの理不尽な言い分に憤慨していると、シャオリンさんは疲れた表情を見せた。

「そうなんですね……」

なんでそんなにアッサリ信じるんだよ。

そう思っていたのだが、シャオリンさんがなぜすぐに信じたのか、それはすぐに分かった。

「本当に……前文明人の生まれ変わりなのかもしれませんね」

あ、これ、本当に信じちゃったな。

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『まさか、あのような返しをされるとは思いもしなかったな』

シンたちの前から、馬車に乗りこんだハオは、一緒に乗っている補佐官にそう呟いた。

『そうですね。特に、あの若い連中が顔色一つ変えないとは思いもしませんでした』

『歳を食った者の方が顔を青ざめさせていたからな』

『何者でしょう? 見た限りそれほどの経験を積むような年齢には見えないのですが』

『分からん。だが、周りの小国のように、強めに言えばなんでも言うことを聞く連中とは違うみたいだな』

『厄介ですね』

『そうか?』

ハオはそう言うと、ニヤリと口を歪めた。

『その方が面白いではないか』

その後、シンたちも馬車に乗りこんだため、ハオを乗せた馬車もゆっくりと動き出した。

移動先は、行政府。

クワンロンの皇帝がいる場所である。