軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

手荒な歓迎

「皆さん、前方に集落が見えます! 着きましたよ、クワンロンに!」

皆で遺跡を眺めていると、操縦士さんが大きな声をあげた。

今度は急いで前方を見てみると、徐々に砂漠地帯が終わり、草原地帯になっていき、そして木製と思われる家が点在しているのが見えてきた。

「ああ! あれは砂漠地帯との境にある村です! 着いた! 着きましたよ! 凄い、たった二日で着くなんて!」

村を見たシャオリンさんは、さっきまで俺たちの顔色を伺いながらビクビクしていたとは思えないほどテンション高く叫んでいた。

そりゃあ、行きは一年かかったのに帰りは二日とか、テンション上がるわな。

今はまだ遠くに見えていた村だったが、徐々に大きくなっていく、そしてそこでシャオリンさんから指示があった。

「すみません、あの村の入口で飛行艇を下ろして頂いていいですか?」

「はい、了解です」

操縦士さんは、シャオリンさんの指示通り、村の入口に飛行艇を着陸させた。

なんでこんなところで着陸するのか。

それは、言うなればクワンロンに無駄な混乱を起こさせないためだ。

今回の目的は、侵攻ではなく親睦。

国交を樹立するための訪問だ。

突然空飛ぶ乗り物が現れたら、首都は大混乱に陥るだろう。

なのでこの村から使者を送ってもらい、飛行艇で乗り付ける許可を貰おうとしたのだ。

ただまあ……。

この村には事前の連絡など行っていないので……。

窓から見える光景はまあ、一言で言うならパニックだな。

そりゃあそうだろう。

突如空飛ぶ船が現れたんだから、これで冷静な奴がいたら逆に凄いわ。

というわけで、まず初めにシャオリンさんとリーファンさんが飛行艇を降りて村の人と話をし始めた。

中にはかなり剣呑な雰囲気を醸し出している人もいたのだけど、約二年前にシャオリンさんがこの村を訪れていたのを覚えていたようですぐに気軽に話し始めた。

時折こちらを指さしているので「あれはなんだ?」とか言ってるんだろうな、多分。

そうしてしばらく話をしていたシャオリンさんが、飛行艇に戻ってきた。

「村の代表者と話が付きましたので、殿下、ナバルさん、ついてきて頂いていいですか?」

「ああ、分かった」

「ほな行きましょか」

「はい。よろしくお願いします」

村の方で話しを聞いてもらえる準備が整ったとの事で、オーグとナバルさん、そして護衛を伴って村へと赴いて言った。

その間、俺たちは飛行艇の中で待機している。

一応、万が一に備えて索敵魔法を展開しているが、特にこちらに害意を向けている人はいない。

オーグとナバルさんの言葉をシャオリンさんが通訳して村の代表者と話している。

しばらく話したあと、オーグたちがこちらへ戻ってきた。

「お疲れ、もう行けるの?」

「いや、まだだ。これからクワンロンの首都に使いを出すらしい。その返事が返ってきてからだと言われた」

「え? それっていつになんの?」

俺はオーグに聞いたのだが、横で聞いていたシャオリンさんが答えた。

「行きで一週間、帰りで一週間とみて、大体二週間くらいですかね」

「結構遠いんだな」

「そうですね。クワンロンは小さな国を統合していって出来た国ですので、国土はかなり広いです」

へえ、国を統合してできたって、いわゆる帝国か。

なんだろうな、どうしてこう帝国っていうと悪者ってイメージで見てしまうんだろう。

でも実際、ブルースフィア帝国は超悪い国だったしな。

あの国が無ければ魔人なんて現れなかったかもしれないくらいに。

それはともかく、二週間か……。

「どうするオーグ?」

「そうだな、とりあえず、ここの住民と交流でも図ってみるか。言葉を覚えるのには時間が足りないが、文化の一端くらいは知れるだろう」

「それもそうだな」

ということで、俺たちは二週間この村に滞在することにした。

とはいえ、こんな最果ての村に宿屋なんてあるわけもなく、村の端っこで野営をする許可を得てテントを張るくらいだ。

当然、飛行艇と野営地には見張りと防御用の魔道具の設置を忘れない。

一応、シャオリンさんが外国の使節団だという風に説明はしているが、いかんせん使節団はおっさんばかりなのだが、俺たちの方には若い女性が六人もいる。

しかも外国の美少女ばっかりなので、不埒なことを考える輩が出ないとも限らないからだ。

俺たちは女性陣はシャオリンさんに、男性陣はリーファンさんに引率されながら村の人たちとの交流を図った。

目的としては、クワンロンの食生活に慣れたり、風習などを知るためだ。

村との交流に勤しんでいる間、村の男たちの視線はずっと女性陣に釘付けだったし、何度かテントに近付こうとした奴もいたが、結局大きな問題にはならずに過ぎて行った。

いや、近付こうとしてること自体がおかしいんだけどね。

どうも外国の使節団というものを理解していないっぽいんだよね。

そして二週間と少し経ったある日、村人の一人が息を切らせながら走ってきた。

シャオリンさん曰く、ようやく首都から政府の役人が到着したらしい。

まあ、連絡してすぐ首都を出発するわけでもないし、協議をしてから役人を送り出したんだろう。

しかし、やってきたのは役人だけでなく、武装した兵士も一緒にやってきた。

『ーーーーーーーーーーー!!』

クワンロンの言葉で、なにか声高に叫んでいる。

俺たちにはなにを言っているのか分からなかったけど、シャオリンさんが唖然とした顔をして必死に役人に向かってなにかを喋っている。

その役人は、シャオリンさんを見てなにかを呟くと、後ろに控えていた兵士たちに声をかけた。

すると、兵士たちは一斉にこちらに向かって矢を放ってきた。

「シン殿! 逃げて下さい!!」

シャオリンさんが必死にそう叫んでるけど……。

おいおい、マジか。

こちとら外国の使節団だぜ?

国がそんな態度取っていいのかよ?

そうは思ったが、やってきた兵士たちの雰囲気から、歓迎されていないことがありありと分かっていたしシャオリンさんの件があってから常に警戒は怠っていなかったので、すぐに対処することができた。

俺は、飛んできた矢に対して、物理と魔力の両方の障壁を展開させた。

なぜか?

兵士たちが番えてた矢に、シャオリンさんに見せてもらったのと同じような呪符が巻き付けてあったんだよ。

あ、これは刺さると同時になにかあるやつだと思い、二重障壁を展開した。

結果は大正解。

障壁に阻まれた矢は、その場で爆発。

辺りがその煙に覆われてしまった。

視界が無くなったので索敵魔法を展開したのだけど……。

兵士たちは一向に動く素振りを見せない。

あれ?

今が絶好の攻め時じゃないの?

なにしてんのかと思ったが、煙が晴れてきて分かった。

兵士たち、あれで俺たちが死んだと思ってたみたい。

最初に見たのは薄ら笑いを浮かべる兵士と絶望を顔に張り付けるシャオリンさん。

そして、無事な俺たちを見て驚愕の顔に変わる兵士と、嬉しそうな顔に変わるシャオリンさん。

本当に、なんだこいつら?

「なあナバルさん」

「はいな」

「これって、どう対処すればいいですかね?」

「そんなん決まってますわ」

ナバルさんは俺の問いかけに対し、悪そうな顔でこう言った。

「あくまで友好的に対話しにきた我々に対してこの仕打ち。そしたら、自衛のためにコイツら制圧しても問題ありませんわ。むしろ交渉時のええカード手に入れましたで」

あーあ、エルス商人に弱み見せちゃったな。

というか、使節団の長の許可が下りたし、反撃しますか。

「行くぞ! 無礼な輩に礼儀というものを教えてやれ!」

『はい!』

オーグの号令で、アルティメット・マジシャンズ全員がまだ唖然としている兵士たちに襲い掛かった。

正直言って、戦闘にならなかったわ。

あっという間に制圧し、死者も出さずに全員を拘束。

その上でシャオリンさんを呼んだ。

「も、申し訳ありません! まさかこのような暴挙に出るとは夢にも思わず……!!」

俺たちのもとに来るなり、真っ青な顔をしながら頭を下げた。

今回は土下座はなしだった。

そして、シャオリンさんは最初に役人が叫んでいた内容について教えてくれた。

曰く。

『この空飛ぶ船は、私が徴収する! 反論は許さん!』

と叫び、兵士をけしかけたのだという。

は? マジかこの国。

正気か?

そんな疑問を感じて縛られている役人たちを見下ろしていると、シャオリンさんが役人の服をごそごそ漁りだした。

暫くすると。

「あ! ありました!」

なにかの書類を見つけ、それを読み始めた。

その内容は……。

「殿下、ナバルさん、どうやらこの襲撃は、この役人の独断だったようです」

書類というか手紙の内容も教えてくれた。

その内容は『長くなかった他国との新しい国交の樹立の申し出をありがたく思う。ついてはその空飛ぶ船というものも見てみたいので首都へと乗り付けてもらって構わない。到着を待っている』という内容の手紙だった。

おいおい、それが本当なら、この役人って本当の馬鹿なのか?

政府が飛行艇に乗ってこいって言ってるのに、それを自分のものにしようとか。

ありえないだろ。

と、そう思っていたのだけど……。

「相変わらず、最低なやり口です」

俺たちより、シャオリンさんの方が怒りに燃えていた。

俺ら?

怒りより、呆れの方が強くて、この手紙は偽物なんじゃないかってことまで考えたよ。もしくは罠な。

だけど、シャオリンさんはこの事態を正確に把握しているようだった。

「昔からこの国がよくやる手口です。とりあえず、役人にはちゃんとした交渉用の手紙を渡しておくんです。ただ……」

そこでシャオリンさんは役人をまるで汚物かのような目で見た。

「役人がその場の判断ですることに、特に制限を設けていないんです。例えば今回の場合、役人の独断で飛行艇が奪え、証拠となるものを全て隠滅……つまり皆殺しにすれば上出来です」

「……そして、もしそれが失敗しても、ちゃんと手紙は渡している、こうなったのは現場の役人の独断だから我々に責任はないと?」

「そういうことです」

あ、オーグの顔もシャオリンさんと同じように、汚物を見る目に変わった。

やれやれ、初っ端からこれとは……本当にこの国と国交なんで樹立できんのか?

そう思ってオーグとナバルさんを見ると……。

「ふん、上等ではないか」

「これはまた、エライ舐められたもんですな。これは久々に血が騒ぎますなあ」

二人とも、メッチャ悪そうな顔してた。